不適切だったブレーキシリンダーの管理…JR北海道が保線作業用機械逸走の根本原因を明らかに

保線作業用機械(ミニホキ)を牽引する軌道モーターカー。
保線作業用機械(ミニホキ)を牽引する軌道モーターカー。全 4 枚

JR北海道は11月25日、函館本線七飯(ななえ)~大沼間で6月27日に保線作業用機械が逸走したトラブルについて、新たに判明した発生原因と再発防止策を明らかにした。

このトラブルでは、軌道モーターカー1両と「砕石」と呼ばれる軌道の砂利を散布する保線作業用機械(ミニホキ)2両が、七飯(ななえ)~大沼間のうち、仁山(にやま)駅手前(大沼方の峠下道路踏切手前)から、七飯駅手前(中須田道路踏切手前)までの約7kmの間を、社員が乗車したまま速度50~80km/hほどで逸走した。同区間のうち峠下道路踏切の手前から新函館北斗駅の手前までがおよそ1000分の20(20‰)の下り勾配となっており、JR北海道では逸走の原因を編成全体にブレーキが機能しなかったためと発表していた。

ミニホキのブレーキシステム概要。ブレーキ用の圧縮空気を送り込む軌道モーターカーはもちろん自車の制動が可能だが、ミニホキも制動できないと完全に止めることはできない。ミニホキのブレーキシステム概要。ブレーキ用の圧縮空気を送り込む軌道モーターカーはもちろん自車の制動が可能だが、ミニホキも制動できないと完全に止めることはできない。

問題の軌道モータカーとミニホキは、圧縮空気で制輪子を作用させ、車輪の動きを止める「踏面(とうめん)式」と呼ばれるブレーキ方式が採用されていたが、調査によると制輪子を動かすシリンダーのピストンが伸びきり、その移動量を示す「ストローク量」が最大になっていたことで車輪への圧着力が低下し、ミニホキのブレーキが機能しない状態に陥っていたことが判明。ミニホキの積載量も最大だったため、逸走を止めることは余計に困難な状況だった。

ミニホキのブレーキ構造概要。基本的には踏面ブレーキを採用する一般の鉄道車両と同じ仕組みだが、電車の付随車のように車軸に作用するディスクブレーキのようなものはないため、最も単純なブレーキシステムといえる。シリンダー内のピストン移動量(ストローク量)に余裕を持たせずにピストンが伸び切ると、制輪子を車輪に圧着することができない。ミニホキのブレーキ構造概要。基本的には踏面ブレーキを採用する一般の鉄道車両と同じ仕組みだが、電車の付随車のように車軸に作用するディスクブレーキのようなものはないため、最も単純なブレーキシステムといえる。シリンダー内のピストン移動量(ストローク量)に余裕を持たせずにピストンが伸び切ると、制輪子を車輪に圧着することができない。

今回はこのようなことが発生した根本原因として、使用時にシリンダーの状態を確認するルールがなく、未確認のまま使用していたことが挙げられている。

そのため、軌道モーターカー、ミニホキともに点検整備が行なわれた4月からトラブルが発生した6月までの間、ブレーキ機能の低下に気づくことができなかったが、その理由として、メーカーがストローク測定時に非常ブレーキを使用することを推奨していたのに対して通常ブレーキで測定していたことが挙げられている。

また、軌道モーターカーではストローク量として扱う範囲を本来より小さな値となる位置で誤測定していたことや、ストローク量が過大になると車両構造上ブレーキリンク機構に干渉することが認識されていなかったこと、ミニホキでは空車(空荷の状態)と積車(荷がある状態)でストローク量に変化が生じることが認識されていなかったことも挙げられている。

今回の発表では鉄道総合技術研究所の見解も示されているが、ストローク設定の管理が適正であれば逸走を防止できた可能性が高かったとされている。

JR北海道ではこれらの結果を踏まえて、「『仕業点検におけるブレーキシリンダーのストローク量の確認』を継続し、同事象の再発防止に努めるとともに、引き続き、ブレーキシリンダーストロークの更なる管理強化を図るための方策等を検討して参ります」としている。

その上で今後は、軌道モーターカーへのストローク量が限度値に近づいた際に発するアラート機能の設置、ストローク調整作業を簡易化するためのミニホキの構造変更、保線作業用機械の検査・点検の外注化、軌道モーターカーの非常ブレーキ強化が課題になるとしている。

《佐藤正樹(キハユニ工房)》

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