ドライブ中の急激な眠気は「血糖」が影響していた!? そのメカニズムを専門家に聞いた

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ドライブ中の急激な眠気は「血糖」が影響していた!? そのメカニズムを自動車研究家の山本シンヤ氏が聞いた。
ドライブ中の急激な眠気は「血糖」が影響していた!? そのメカニズムを自動車研究家の山本シンヤ氏が聞いた。全 6 枚

現在、我々は新型コロナウイルスの影響を受け、従来とは異なる生活様式が求められている。移動に関しても同様だが、その中でも“クルマ”が見直されていると聞く。確かに外界と閉ざされたプライベートのままドアtoドアで目的地に行けるメリットは、他の移動手段にはない魅力と言えるだろう。

そんな事から、今まで以上にクルマでの移動が増えているようだが、多くの人の悩みはドライブ中の強い睡魔だ。マツダによると「78%のドライバーが運転中に眠気を感じている」と言う調査結果がある。

実はこの眠気は食事の後に起きるケースが高く、その原因の1つが“血糖値の上下”だと言われている。その時、体内でどのような変化があるのか? そして、それを予防する手段はあるのか? このような疑問を一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 理事長で医学博士の宮崎滋氏に、自動車研究家の山本シンヤ氏が聞いた。

「血糖」は体にどのような影響を与えているのか

一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 理事長 医学博士の宮崎滋氏一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 理事長 医学博士の宮崎滋氏

----:様々なシーンで多くの人が耳にする“血糖”とは、血液中に含まれるブドウ糖。食べた食物の糖質は腸でブドウ糖などに分解され、血液中に入ります。最近は糖質オフ、糖質を抑える、低糖質……と言ったように、人間にとって悪者扱いを受けているようですが、実際のところはどうなのでしょうか?

宮崎滋理事長(以下、敬称略):糖は人間が生きるための重要な栄養素の1つで、体に取り入れてエネルギーに変えていきます。クルマで言えばガソリンのような存在です。では糖は体のどこで使われるかと言うと一番は「脳」です。脳細胞はブドウ糖をエネルギー源にしており約30~40%、その次は筋肉、そして心臓や肝臓のような臓器が使っています。それをどう体全体に送り届けるのか? それが“生きるメカニズム”です。

----:一般的に、疲れている時は「甘い物を欲する」、「ブドウ糖を摂取するといい」と言われていますが、それは理に適っている?

宮崎:疲れと血糖値の相互関係はありますが、必ずしも疲れている=血糖値が下がっていると言うわけではありません。なぜなら、血糖は食事をすると上がり、消費されると下がる……の繰り返しだからです。

----:私は静岡県在住で、仕事で都内に行く際の移動手段のほとんどがクルマで、一回の走行で200~300km走ることが多い。往路はともかく仕事が終わった後の帰路は、必ずといっていいくらい睡魔に襲われます。これも血糖が関係しているのでしょうか?

宮崎:それは体の疲労が大きいと思いますが、眠くなるタイミングが食事を取った後であれば血糖の関係は高いと言えるでしょう。食事を取る→血糖値が上がる→インスリンが分泌→血糖値を下げるわけですが、それが急激に上がって急激に下がる……『血糖値スパイク』と言いますが、その変動で眠くなることはあります。

----:つまり、運転する時は食事を取らないほうが眠くなりにくいと言う事になるのでしょうか。その一方で空腹のままだとイライラを生む原因にもなってしまいそうですが。

宮崎:食べる/食べないだけでコントロールするのは難しいと思いますが、強いて言えば血糖値を急激に上げない食事を心がける……でしょうね。例えば、ラーメンやチャーハンなど糖質が多い物は避けたほうがいいですね。

「これを食べれば問題なし!!」と言うメニューはない?

一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 理事長 医学博士の宮崎滋氏一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 理事長 医学博士の宮崎滋氏

----:ただ、日本のサービスエリア/パーキングエリアで提供される食事の多くは、まるで「眠くなれ!!」と言われているような糖質が多いメニューばかりです(笑)。糖質が少ないメニューを選ぶコツは?

宮崎:基本的にはステーキやハンバーグと言った肉類・油類の多い物を選ぶことですね。ただ、ごはんは糖質が高いので控えめに。ハンバーガーは、糖質の高いパンなどを一緒に食べるので好ましくない。しかしながら、これらは『血糖値を急激に上げない』と言う観点での話です。逆に肉類はカロリーが高いので肥満や肥質異常症を起こすなど別の弊害もありますが……。

----:つまり、「これを食べれば問題なし!!」と言うメニューはないと言うことでしょうか?

宮崎:そうですね。逆に『食べた事で眠れない』と言うことになったら動物は生きていけません。ある事に効果があっても他の事には逆効果になる事もあるので、食べ物だけでコントロールするのは難しいのです。

----:やはり、日ごろの行ないが大事だと。その一方で、眠くなった時にカフェインを取るといいと聞きます。コーヒーやガムなど様々な物が販売されていますが、個人的には速効性はあるが持続性はないような気がしていますが……。

宮崎:カフェインは覚醒することで体内時計をずらすだけなので、結局は眠くなります。動物は眠らないと生きていけませんので、完全に眠りを抑制するのは至難の業です。

----:つまり、運転中に眠くなったら無理せずに寝たほうがいい……と。その場合、時間はどれくらいが理想なのでしょうか? 私は10分寝ようと思ったら、気が付いたら数時間……と言うことがよくあります(汗)

宮崎:短時間(10~20分)寝ることで脳の覚醒を呼び起こす効果がありますが、山本さんの場合は日ごろの疲れが原因だと思いますよ。ちゃんと寝てないでしょう?

----:何も言い返せません……。

「血糖値スパイク」に要注意!血糖値を急激に上げないための食事法とは!!

自動車研究家の山本シンヤ氏自動車研究家の山本シンヤ氏

----:これまでお話しを聞きまして、糖は体に必要なエネルギーだけれども、血糖値の急激な上がり下がりで起きる「血糖値スパイク」が問題だということが解りました。では、仮に糖を取らないと体にはどのような影響があるのでしょうか?

宮崎:体の中にはブドウ糖の元になるグリコーゲンが蓄えられ、それを少しずつ消費することで血糖を保ちます。更に糖のストックが減ると脂肪を使います。これが痩せるメカニズムです。脂肪を使い切ると筋肉を消費します。

----:体の脂肪を糖に変えて消費する……まさに糖質ダイエットのメカニズムですね。何だか、自分の事を言われているような感じです(笑)。筆者も糖質を抑えた食事と運動で12kgほど痩せたのですが、やはり極端な糖質カットのほうが効果はあるのでしょうか?

宮崎:全てに言えますが、取り過ぎも取らな過ぎもダメです。単一の食品だけだと不足する栄養素が多いです。糖質、タンパク質、脂肪、ビタミンとバランス良く取る事が大事でしょう。

----:ただ、今回の趣旨である、運転中の眠気を抑える……という部分で言うと、まずは糖質が少ないメニューを選んだほうが良さそうですが、他にも得策はあるのでしょうか?

宮崎:まずは『まとめ食い』や『ドカ食い』はやめることです。ドカ食いは急激に血糖値が上がるのでインスリンはたくさん出て、血液中の糖をたくさんの細胞に吸収させ脂肪に変える……これが太る原因です。少しずつ食べたほうがいいのは、そのためです。

----:今回は、事前に管理栄養士の望月理恵子さんにもお話を聞きまして、「バランス良い食事……特に低GI(血糖値が急激に上がることの抑制効果が期待できる)食品……繊維の多い物や幾らか油の含んだ多い物を選んで欲しい。更に糖の吸収を穏やかにする水溶性食物繊維の多い海藻類や、根菜類(大根、ニンジン、ゴボウなど)も良い」と教えて頂きました。これらは日本食のメニューに多く含まれる食品ばかりです。さらに望月さんは「糖類の多い物を食べる前に野菜ジュースや無糖ヨーグルトを取っておけば血糖の急上昇を抑えることができる」と話されています。

宮崎:はい、効果はあると思いますよ。

管理栄養士の望月理恵子さん管理栄養士の望月理恵子さん

「血糖負債」とは?まずは、自分の“いまの”血糖状態「ヘモグロビンA1C(HbA1C)」を知ることから

----:眠気を抑える……と言う意味では、食後の適度な運動は効果がありそうだと思いますが、血糖への影響もあるのでしょうか?

宮崎:食後に運動すると間違いなく血糖値は下がります。ただ、SAで体をほぐす程度の運動量ではちょっと足りないですね。となると、日ごとから運動することが大事です。

----:このようにお話しを聞いていると当たり前、と思う事ばかりですが、それができないのが現代人の大きな問題。ただ、言い訳ばかりでは何も解決しないので、マインドチェンジが必要だということですね。

宮崎:眠気は体調・疲労に関係しますから、食べ物も運動も生活習慣も規則的に行うことが大事です。

----:ちなみに自分の血糖値を知るには?

宮崎:自分で血糖値を測るには自己血糖測定器が必要です。通常、病院や健康診断、人間ドックなどで計測することができます。血糖値は食事をすると上がったり下がったりの繰り返しですので、通常は空腹時血糖……一晩10時間くらい絶食した上で計測します。それが血糖値の一つの目安ですが、最近はヘモグロビンA1C(HbA1C)と呼ばれる血糖の平均値(過去1~2か月)の計測が主流です。血液中に糖分が多いと赤血球のヘモグロビンと糖が結合するので、その結合量で判定。5.6%未満なら問題なく、5.6~6.5%なら正常範囲ですが要注意。6.5%を超えると糖尿病が疑われ、7%以上になると糖尿病特有の合併症が起こりやすく、そのリスクの蓄積を『血糖負債』と呼んでいます。ただ、一般の人にはこの重要性があまり理解されていないのが現状です。

----:血圧計のように簡単に測れると、より多くの人も気にすると思いますが。

宮崎:まずは健康診断をしっかり受けることです。空腹時の血糖値とHbA1Cの両方を測りますので、それを目安にしてほしいですね。また、薬局内で指先にハリを指して1摘の血液で測る「ゆびさきセルフ測定室」が整備されつつありますが、より普及が期待されています。じつは、更に自宅で簡単に測定できる方法も開発が進められています。

一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 理事長 医学博士の宮崎滋氏一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 理事長 医学博士の宮崎滋氏

運転中の眠気を解消する特効薬はない。だからこそ

今回のお話から解ったのは、残念ながら運転中の眠気を解消する特効薬はない、ということ。日々の生活で食事・運動・睡眠を改めることが一番の近道のようだ。そのためには、クルマと同じように自分のコンディションを測る目安が必要となるが、その一つが「血糖値」であり「HbA1c」と言うわけだ。

クルマは壊れたら直せるが人はそうはいかない。だからこそ、より注意して欲しい。

一般社団法人 日本生活習慣病予防協会

《山本シンヤ》

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