パリが息づくコンパクトSUV、扱いやすいサイズ感でしなやかに駆ける
フランス人のヴァカンス好きは有名だ。彼らにとって夏のヴァカンスは一年のうちの最大行事である。ほとんど1ヶ月、いやそれ以上夏を楽しむのだからそうなる。マルセイユやカンヌ、ニースといった南フランスの地中海沿いはもちろん、ヨーロッパ大陸を旅する。

北アフリカあたりもそう。フランスからモロッコまでは車を積載できるフェリーが出航している。クルマ旅もなんのその。およそ1日の船旅で到着。モロッコはフランス語が通じるので、彼らにとって都合の良い旅の目的地となる。

なぜそんな話をするかというと、フランス車で旅に出たからだ。相棒はこの夏に生まれ変わった、新型ルノー『キャプチャー』でマイルドハイブリッド搭載のモデル。パリでよく見かける。フランスを代表するSUVである。
キャプチャーがフランス人にウケている理由はいくつかある。例えばその1つがサイズだろう。全長4,240×全幅1,795×全高1,590mmは数字の羅列からもわかるように、日本でも扱いやすいコンパクトさだ。パリ市内を走ればわかるように、道の狭い彼の国では都合がいい。曲がりくねった石畳の路地も臆することなく入っていける。

もちろん、それだけならルーテシアのようなさらに小さいモデルもあるが、キャプチャーは流行りのSUVである。視線が高くて運転がしやすく、荷物も積めて、道路のちょっとしたギャップにも耐えられるのだ。そこがフランス人に愛されるポイントとなる。なんたって彼らのヴァカンスはロングスパン(2~4週間ほど)で、家族みんなの荷物を目一杯クルマに押し込む。場合によってはルーフキャリアの上も使って。そんなフランス人の合理主義を見事に満たしてくれるのがこのクルマなのだ。
今回の旅はフランス人のヴァカンスとは程遠いショートトリップだが、それでもキャプチャーの良さはふんだんに感じられた。高速道路やワインディングでの走りやすさと楽しさ、それと街中でのサイズ感など多方面でポジティブさを感じ取れた。

旅のルートは都内からアクアラインで房総半島へ。館山道や一般道を利用して千葉県館山市へ向かう。館山では古民家をリノベした“レストランやまぐち”でフレンチ料理を堪能。シーサイドドライブを楽しんだあとは、金谷から東京湾フェリーで横須賀・久里浜へ行く。カーフェリーでの時間もまたフランス旅気分を味わわせてくれるエンターテイメントだ。そしてそこから高速道路で都内へ戻る。まずは、今回の相棒キャプチャーについて触れてみよう。

そもそもキャプチャーは2013年にヨーロッパで発売をスタートしたBセグメントSUVで、翌年には同カテゴリーのナンバーワンセラーになっている。このサイズがヨーロッパでウケているのは実証済みだ。現行型は2019年リリースの2代目で、こちらも翌年販売台数1位に輝く人気者。日本でもすでに乗っている方や、購入を検討した方はいらっしゃるだろう。ルノーファンやフランス車好きならずとも気になる存在だ。
街に溶け込む洗練されたデザイン、さらに“アルピーヌ”の香りも楽しめる

今回の相棒は2025年6月に新しいデザインへマイナーチェンジしたモデルとなる。目玉は文字通りの新デザインとサイズ、それと2つのハイブリッドシステムだ。フルハイブリッドの「E-TECH」はF1のノウハウを投入した独自の技術で話題となったシロモノだ。電子制御のドッグクラッチマルチモードATと合わせ、クルマ好きが納得のシステムを搭載する。

旅のお供になるのは「マイルドハイブリッド」で、ベースは1.3リッター直4ターボのガソリンエンジンとなる。そこに補助モーター(BSG)と12Vのリチウムイオンバッテリーを搭載した。最高出力は158ps、最大トルクは270Nmを発揮する。それでいて車両重量が1,330kgに抑えられているのは見どころ。FWDという駆動方式で、キビキビした軽快な走りを見せてくれる。

さらに言えば、今回試乗したグレードは“エスプリ アルピーヌ”。つまりアルピーヌブランドのスポーティな世界観を取り入れた、ヨーロッパで大人気のグレードだ。日本ではまずアルカナに採用され、キャプチャーも含め各モデルに展開される予定である。エクステリアカラーとインテリアトリムカラー、ホイールデザインに注目だ。

では新しいエクステリアデザインについてだが、見た目はかなり都会的でパリで流行りそうな印象となる。きっと新しいルノーのロゴ(ロザンジュ)に合わせてデザインされたのであろう。薄型のLEDヘッドライト、ハーフダイヤモンド型LEDデイタイムライトがそんな感じだ。スタイリングはカジュアルにもフォーマルにもイケそうな雰囲気である。


インテリアもまた都会的。センターにある10.4インチマルチメディアがそれに当たる。スマートフォンのアプリにアクセスできることから、ガジェットを扱うように操作できるのが嬉しい。

シートもグッド。フロントシートは長時間乗っても疲れないのはさすがで、リアシートにも工夫が施されている。リアの前後スライド量は最大16cmで、ニールームはクラストップレベルの221mmを誇る。ラゲッジとリアシートのメリットを最大限に活かせるこのスライドシステムはまさにフランス的合理性の賜物だろう。

リアシートを前方に16cmスライドすれば広大なラゲッジスペースが現れる。オプションのルーフバスケットラックを取り付け、荷物を積んでネットをかければ、長期のヴァカンスも恐れ知らずとなる。
鼓動を愉しむルノーのスポーツDNA!1.3L+MHEVで余裕の走り

マイルドハイブリッドの走りは今回のロングドライブに適していて、終始楽しい走りができた。スタートや加速時など必要な時にモーターがアシストしてくれるので力不足はほとんど感じない。「これで1.3リッター?」というのが正直なところだ。高回転域はターボが、低回転域はモーターが効率よく働いてくれるのでパワーユニットとしての完成度も高い。

それにマイルドハイブリッドは常にガソリンエンジンの鼓動を感じさせてくれるのがいい。内燃機関の発する鼓動とも言える振動や音がドライバーを刺激する。操っている実感を得られるのが嬉しい。電動化でここがスポイルされるとカーガイとしては悲しくなってしまう。高速での合流や追い越しも難なくこなし、さらに言えばワインディングでのキビキビした走りも期待通り。ルノーの得意技であるスポーティな走りはしっかり生きていた。

ドライブモードをスポーツにすると、クイックなステアリングレスポンスでギアを上まで引っ張ってくれる。館山までの途中山道を選んで走ったが、それがすごかった。ルノーたるものの機敏な走りを実感できた瞬間である。


というのがキャプチャーと過ごしたプチヴァカンス。ランチは古民家レストランでフレンチを食べ、夕方にはフェリーに乗る。まるで東京湾が地中海に見えてくるから不思議だ。

相棒となったエスプリ アルピーヌ マイルドハイブリッドの価格は409万円。エントリーモデルのテクノ マイルドハイブリッドは389万円だから、キャプチャーはお財布に優しいクルマと言える。これもまたフランス的な合理性にかなうお金の使い方かもしれない。
新型 ルノー『キャプチャー エスプリ アルピーヌ』の詳細はこちら《取材協力 レストランやまぐち》
