フロントサブウーファーを加える4ウェイシステム[マニアック・カーオーディオ]

“フロントサブウーファー”を加えた“フロント4ウェイ+サブウーファーシステム”を搭載したオーディオカーの一例(ホンダ・オデッセイ、製作ショップ:ガレージショウエイ<高知県>)。
“フロントサブウーファー”を加えた“フロント4ウェイ+サブウーファーシステム”を搭載したオーディオカーの一例(ホンダ・オデッセイ、製作ショップ:ガレージショウエイ<高知県>)。全 8 枚

高音質を得るための“マニアック”な理論やワザをさまざま紹介している当特集。今回は、フロントにサブウーファーを追加装備して実現された、“フロント4ウェイ+サブウーファーシステム”をクローズアップする。実践したのは高知県の実力店、“ガレージショウエイ”だ。

さて、当システムでは何が目指されどんな効果が得られているのか。その全容を詳細にリポートする。

20cm口径のサブウーファーを、純正ウーファー位置にビルトイン!

このスペシャルなシステムが搭載されたクルマは2台ある。まず1台目は、2021年の10月に開催された『第6回ハイエンドカーオーディオコンテスト』に“ガレージショウエイ”よりエントリーしたメルセデス-ベンツ・GLEだ。当車は、以下のようなユニットでシステムが構成されている。

ソースユニットがアイバッソオーディオのポータブルDAP、プロセッサーがヘリックスの『DSP ULTRA』、パワーアンプがカロッツェリアXの『RS-A09X』(計5台)。そして“フロント4ウェイ”スピーカーの顔ぶれは以下のとおりだ。ツイーターがブラムの『TSM 25 MG70HR』、ミッドレンジも同じくブラムの『MS 3 Multix』、ミッドウーファーがM&Mデザインの『SC-170』、フロントサブウーファーがカロッツェリアの『TS-W10RS』、トランクのサブウーファーがJBLの25cmモデルだ。

なおフロントサブウーファーとして使われている『TS-W10RS』は、20cmモデルだ。純正サブウーファー位置(足元の奥側)に装着するために、この口径のモデルが選ばれた。ただし純正サブウーファーと比べて厚みがあるので、FRPと合板を駆使して取り付け面を立ち上げてある。で、このフロントサブウーファーには大体、60Hzから150Hzを担当させているという。

さて、このようなシステムレイアウトを敷いている狙いは何なのか。“ガレージショウエイ”代表の吉岡さんに教えてもらった。

「このようなスピーカーレイアウトとしている目的はズバリ、ミッドウーファーの負担を減らすためです。フロントサブウーファーを加えることで、ミッドウーファーの再生帯域を狭めることができています。つまり、フロントサブウーファーを追加した狙いは低音の増強ではなく、中音のクオリティアップです」

ミッドウーファーには低い帯域まで受け持たせたい。しかし…。

狙いについてさらに詳しく教えてもらった。

「まず前提として、このようなスピーカーレイアウトは絶対的に必要なものではありません。2ウェイ、または3ウェイで十分にご満足いただけるサウンドが得られます。しかし、通常の2ウェイまたは3ウェイには実は、さらに音を良くできる“伸びシロ”が残されています。なのでもしもとことん高音質を追求したいと思ったときや、サウンドコンテストでより良い成績を上げたいと思ったときには、そこに手を付けるともうひと伸びが得られます。“フロント4ウェイ”はつまり、最後の最後の選択肢です。

その“伸びシロ”とはどのようなことなのか、詳しく説明すると以下のとおりです。

当店では、サブウーファーを導入する場合それには、60Hzあたりから下側の帯域を担当させます。小型・薄型のパワードサブウーファー以外はトランクに搭載することになる場合が多いので、それよりも高い帯域の音を担当させると重低音が後ろに引っ張られやすくなるからです。なので2ウェイでも3ウェイでも、ミッドウーファーは60Hzあたりまでを受け持たせます。

とはいえ、100Hz以下をミッドウーファーで鳴らすのは簡単ではありません。そもそもそこまで鳴らせないユニットもありますし、鳴らせるユニットでも、“デッドニング”も含めた取り付けをしっかり行わないと鳴ってくれません。

しかしそうして60Hzあたりまで鳴らせるようにすると、ミッドウーファーには多くの負荷がかかります。なのでもしもその負荷を減らせるのであれば、さらなる高音質が得られるのではと考えました。かくして“フロントサブウーファー”を導入してそれにて150Hzあたりまでを担当させたところ、ミッドウーファーが鳴らす中域のクオリティが上がりました。狙いどおりに、サウンドのレベルをもう1ランク上げられました」

取り付けを確実に行えば、サウンドチューニングの難易度は上がらない!?

ところで一般的には、スピーカーユニットの数が増えるとサウンドチューニングの難易度も上がっていくと言われている。ケアすべきポイントが増えるからだ。そこのところはどうだったのだろうか。

「確かにチューニングの難易度は上がりました。特に位相合わせが難しくなりますね。とはいえ当店では、2ウェイにせよ3ウェイにせよ、サウンドチューニング以前に取り付けの精度を上げることの方が重要だと考えています。そうすることで、サウンドチューニング機能を使う度合いを減らせるからです。この点は“フロント4ウェイ”でも同様です。なので実を言うと、難易度の上がり幅はそれほど大きくはありませんでした」

続いて、もう1台の“フロント4ウェイ”搭載車を紹介しよう。それは、2021年11月に開催された『まいど大阪 秋の車音祭 2021』に同店よりエントリーしたホンダ・オデッセイだ。このクルマではフォーカルとモレルのスピーカーにてフロント3ウェイを構成し、そこにカロッツェリアのパワードサブウーファー『TS-WX010A』が2機、追加されている(左右のダッシュボードの下に装着)。

「当車でも、さらに上質なサウンドを得るために“フロントサブウーファー”を追加しました。ただしこちらではユニットサブウーファーを装着できるスペースがなく、なのでパワードサブウーファーを活用しました。とはいえ、内蔵されているパワーアンプは使っていません。同じくカロッツェリアの外部パワーアンプ『PRS-D800』を組み合わせています。なぜなら、内蔵パワーアンプにはクロスオーバーがかけられていてスルーで鳴らせないから、そしてアンプの質を上げたかったからです。

当車でも、“フロント4ウェイ”のメリットが活かされています。“フロント4ウェイ”の最大の目的は先ほど申し上げたとおり、ミッドウーファー帯域のクオリティアップです。そこのところが確実に果たされました。

なお、このようなシステム運用ができるのは、昨今、プロセッサーが優秀になったからこそです。ひと昔前まではフロント3ウェイまでしかコントロールできませんでしたが、今では、それ以上のマルチウェイ化が可能です。であるならその能力を活かしたい、というところも“フロント4ウェイ”にトライした理由の1つです」

いかがだったろうか。理想のサウンドを追求しようと思ったときには、“フロントサブウーファー”を追加するというやり方も有り得ている。興味があれば、貴方もトライを。

“フロントサブウーファー”を加える“4ウェイシステム”の、狙いと実力とは…「ザ・マニアック・カーオーディオ」第5回

《太田祥三》

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