どちらもクレイジー、どう使ったら楽しいか考えて…FCAジャパンCEO[インタビュー]

FCAジャパン代表取締役社長のポンタス・ヘグストロム氏
FCAジャパン代表取締役社長のポンタス・ヘグストロム氏全 9 枚

FCAジャパンはジャパンキャンピングカーショー2022において、フィアット『デュカト』とジープのフルサイズピックアップ、『グラディエーター』を公開した。どちらも多くの台数は見込めないが、なぜ日本導入に踏み切ったのか。FCAジャパン代表取締役社長のポンタス・ヘグストロム氏(以下敬称略)に話を聞いた。

◆様々な架装のベースモデルにも

----:まず初めに伺いたいのは、フィアットデュカトです。なぜこのタイミングでデュカトの導入を決断したのでしょうか。

フィアット・デュカトフィアット・デュカト

ポンタス:実は2017年に、実験としてどういった市場の反響があるかと、ジャパンキャンピングカーショーにデュカトを展示したのです。そうしたところ、驚くほど注目を集めました。

その理由ですが、国産メーカーから新しいキャンピングカー的なクルマを出しているかといわれたら、そういったものは出ていませんでしたし、外国メーカーも同様でした。そうはいってもキャンピングカー市場は毎年伸びていますので、これはチャンスだと感じ、そしてその市場のサイズも大きいと感じていました。

また、キャンピングカーメーカーが使えるのはトヨタ『ハイエース』やトラックベースのものばかりでかなり限られたものでした。ハイエースは小さすぎ、トラックは運転するもの愉しくなく、快適でもありません。そうなるとまさにデュカトのようなクルマが望ましいのです。そこで日本に導入しようと決めたのです。

実際に日本での展開は正式に2年前には決まっており、そこから本国で日本市場向けの仕様変更とテストを重ねて来ました。

----:販売方法はB2Bをメインにしつつ、ディーラー網も構築するという話でした。一般のお客様はディーラーで購入することはできるのですか。またその仕様はどういうものでしょう。

ポンタス:購入はできます。キャンピングカーとしてもベース車としての購入も出来ます。

今後のパートナーとしてはキャンピングカーメーカーをはじめ、いくつかの既存のステランティスディーラーになります。キャンピングカーメーカーの売り方としては、まず我々からデュカトを購入し、自身でキャンパーに仕立てて販売するということも出来ますし、あるいは素の状態で販売することも可能です。

----:そうすると、一般のお客様はステランティスのディーラーでこのクルマを買って、そのまま乗る方もいれば、キャンピングカーメーカーにそのクルマを持って行って、架装するパターンや、キャンピングカーメーカーがステランティスから購入し、自分たちで独自の仕様にして販売するといういくつかのパターンがあるということですね。

ポンタス:そうです。本当にこのクルマはやれることが無限にあるので、むしろ我々としてもお客様がどのような使い方をするか知りたいくらいです。

◆今後はさらにバリエーション展開も

----:先ほどのプレゼンテーション(ジャパンキャンピングカーショー2022において2車の発表記者会見が行われた)で、このクルマの使い方の想像が出来ないのは、想像力の欠如だといっていましたね。

ポンタス:そうですね。本当にやれることが無限にあるので、まずは絞り込まないとあまりにもラインナップが複雑になってしまいます。そこでまずはキャンピングカーとして展開していくことにしました。なぜならその需要が非常に高いからです。そして、バンタイプのボディバリエーションを3種類としていますが、それも、まずはわかりやすい形で出して、そのベースとなる市場を作り、ネットワークを構築して、そのあとで発展させていきたいと考えているのです。

----:では基盤が出来た後で様々なバリエーションの展開が期待できますね。

ポンタス:まず今回導入するバンの3種類ですが、基本的にキャンピングカーメインで展開しますが、当然それ以外の用途にも使えます。それが第一段階です。その次に配送や宅配の方面にも展開していきます。この第2段階の配送に関してはフリート契約を我々としては模索するでしょう。

また、シャシーカップ(キャビンのみで後ろはシャシーむき出しのもの)は、特にキャンピングカーメーカーでもっと大きいもの、もっと自由に作りたいという人たちにとっても素晴らしいベースモデルになるでしょうし、キャンピングカー以外のより特殊なものを作りたいというメーカーにも良いと思っています。

ほかにも現時点でデュカトは2ndシートがない仕様での導入となりますが、シートがあるバリエーションも(本国のラインナップには)存在しており、本当にミニバンのように使えます。ハイエースのようなクルマだと狭いですが、これですと、サイドに窓を入れて、8席設けると非常に快適なミニバンを作り上げることが出来るわけです。

----:乗るのが楽しみですね。

ポンタス:豊橋にあるPDIセンターでパートナー候補の方々とイベントを行いました。そのときに色々試してもらったのですが、そこで皆さんが非常に驚いていたのは、とても運転がしやすく快適だということでした。新しいディーゼルエンジンですし、9速オートマチックを搭載し、回転半径も小さいので取り回しもとても良いんです。

◆クレイジーだからこそ

FCAジャパン代表取締役社長のポンタス・ヘグストロム氏FCAジャパン代表取締役社長のポンタス・ヘグストロム氏

----:さて、現在ジープは非常に好調に台数を伸ばしていますが、なぜあえて今回ピックアップタイプのグラディエーターを導入したのですか。

ポンタス:クレイジーなクルマだからです(爆笑)。もともと本社の方からは日本市場向けにこのグラディエーターはどうかという提案は一切してきていませんでした。というのは、本社はよく日本市場のことを知っているからです。駐車スペースもないですし、そもそもピックアップ市場が日本にはないということが分かっていたからです。そこで私たちの方から本社に日本向けに導入したいんだけどと打診をしたのですが、ちょっとクレイジーだなといわれました(笑)。いずれにせよそこからようやく合意を得て、日本市場向けに改良を加えることが出来ました。

日本ではジープブランドは本当に成功していますし、特に『ラングラー』の人気は非常に高いですよね。そのことをジープの本社もとても良く理解していますので、その結果、私たちの提案を理解して、むしろ良いねと後押しをしてくれるようになりました。やはりジープ本社は日本市場をリスペクトしていますので、だからこそ右ハンドルバージョンの日本仕様を作るということをしたのだと思います。

グラディエーターは非常に大型ですので、それほど販売台数は伸びないということも見越しています。ただこういった車両をショールームに展示することによって、おそらく見にくるお客様はとても楽しいでしょう。つまり、これを販売するというよりは、これを見て通常サイズのジープを購入していただくということ。そこにつながれば充分なんです。これはとても楽しいショーケースになるでしょう。

----:もし今後、こういったクレイジーなクルマが出てきたとすれば、色々導入していきたいと考えていますか。

ポンタス:これが一番クレイジーなモデルではあるのですけど、もっともっと持ってきたいですね。やはりジープはライフスタイルブランドなので、人々に刺激を与えたいですし、クリエイティビティを刺激する立場でありたいのです。そしてエキサイティングで、とても楽しいものを提案していきたいですね。そう考えています。

グラディエーターもデュカトもそれぞれ対極にあるような車種ですが、同時に非常に似ています。どちらもとてもクレイジーということですよね。だからこそ、お客様にこれはいったいどう使ったら面白いだろうと考えてもらいたいと思っています。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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