
第一回目の記事では、バッテリー式電気自動車(BEV)の現状を紹介し、より環境に優しい移動手段として最も有力な選択肢の一つであるBEVに関する課題について解説しました。BEVには多くの可能性がある一方で、他の革新的な技術と同様に、このコンセプトを完全に成熟させるためには様々な取り組みが必要であることがわかりました。現時点では環境対策の面で内燃機関(ICE)車と比較した場合、BEVが優れているのはほんのわずかだけと言えるかもしれません。こうした認識の広まりや、バッテリー技術のイノベーションの鈍化などを受け、官民の組織は代替策を検討し始めています。
この20年を振り返ると、水素を動力源とする燃料電池車(FCEV)には、何度もスポットライトが当たっています。実際、最初のFCEV(Chevy Electrovan)の登場は1966年にさかのぼり、より実用的なものは2000年代初頭にほぼすべての主要自動車メーカーからコンセプトとして導入されました。2008年にはホンダが初めて顧客向けにFCEVのリースを開始し、2013年にはHyundaiがix35 Fuel Cellを皮切りにFCEVの量産化に着手した最初の自動車メーカーとなりました。いずれの場合も、FCEVの販売台数は年間わずか1万台と非常に限られており、そのほとんどは、水素燃料供給ネットワークが最も確立されていた韓国、東京、カリフォルニアなどの特定の市場で販売されたものです。では、BEV(あるいはICE)ではなく、FCEVが消費者に選ばれる理由とは何なのでしょうか。FCEVの特徴は、BEVのように水しか排出しないグリーンモビリティでありながら、ICE車のように3~5分で燃料補給ができ、満タンでの航続距離が長いということが挙げられます。消費者の立場からすれば、まさに両者の良いとこ取りができる車両と言えるかもしれません。しかしながら、このFCEVにも課題はあります。