ソニーとホンダ、EV事業などモビリティ分野で提携…それぞれの思惑

ソニーグループの吉田健一郎会長兼社長(向かって左)とホンダの三部敏宏社長
ソニーグループの吉田健一郎会長兼社長(向かって左)とホンダの三部敏宏社長全 7 枚

ソニーグループホンダは3月4日、ソニーの本社で共同記者会見を行い、電気自動車(EV)事業などモビリティ分野で提携すると発表した。2022年中に合弁会社を設立して、25年にEVをホンダの工場で製造し販売する。

今回の提携のきっかけは21年夏に、ホンダ側からモビリティの将来を検討しようと声をかけ、新たな価値を生み出すために両社の若手社員でワークショップを始めたことだった。「そこで化学反応のような大きな可能性を感じた」とホンダの三部敏宏社長は話し、同年12月に「ソニーとホンダが組めば面白いクルマがつくれるのではないですか」とソニーの吉田健一郎会長兼社長に持ちかけた。

ホンダは21年4月、三部社長が2040年にガソリン車を辞める宣言をし、これまでの事業モデルからの脱却を進めていた。しかも、4輪事業は利益率も低く、大量の早期退職を行ったものの、構造改革はまだ終わっていない。4輪事業はトンネルに入ったままで、なかなか抜け出せずにいた。

「自動車のカテゴリーの中で考えていると、どうしても大きく踏み出すのが難しい。異業種のソニーと提携することで新たな価値を生み出すことができれば、いい刺激になる」と三部社長は話し、今回の提携によって硬直化した組織に新風を起こそうというわけだ。

ソニーのEV、VISION-S 02(CES 2022)ソニーのEV、VISION-S 02(CES 2022)

一方、ソニーも三部社長からの話は渡りに船だった。というのも、ソニーは20年にEVの試作車をつくったものの、壁にぶつかっていた。「ソニーにとって自動車は新たな領域で、パートナーが必要だった。ホンダは新しいことにチャレンジする企業文化を持ち、走るだけでなく飛ぶという技術も持つ。パートナーとして素晴らしい会社を見つけることができた」と吉田会長兼社長は話す。

ソニーのEVの試作車は車内外に約40のソニー製センサーを搭載し、音響や映像装備に加え、ゲームを含むコンテンツも活用した新たな移動空間を目指していた。「これまでつながったクルマは、クルマを認証するものが多かったが、これからは人を認証して何らかのアクションやサービスをするようになる。あくまでもサービスを提供するのはクルマメーカーだが、それをサポートするプラットフォームを広く提供していきたい」と吉田会長兼社長と説明し、ソニーはモビリティーの進化へ貢献し、その進化をリードしていくのが目的だという。

ソニーはそのプラットフォームで、ゲーム事業で行っているような課金サービスを展開し、EVを手がける他のメーカーにも広げようと考えている。ホンダも「25年に販売するクルマはできるだけ新会社を中心にホンダとソニーが強力に進める。その先はオープンな環境にしていきたい。ホンダとソニーで終わるとは考えていない」(三部社長)という。新会社は株式上場も視野に入れているようだ。

1980年、アメリカを訪問した井深大と本田宗一郎1980年、アメリカを訪問した井深大と本田宗一郎

ソニーとホンダは戦後の荒廃から生まれ、町工場から世界的な企業へと飛躍したが、それぞれの創業者である井深大氏と本田宗一郎氏は互いに学び合った。1950年代末には、宗一郎氏が部下たちを連れて、ソニーの前身である東京通信工業の井深氏の元へ勉強に行ったこともあった。

ビジネス的なつながりはできなかったが、生涯の友人となった。1991年8月に宗一郎氏が亡くなったとき、井深氏は「いた時にはわからなかったが、その存在は亡くなってみて衝撃だった」と、軽井沢の別荘に引きこもったという。

創業者同士の出会いから半世紀以上立った今、両社は手を組むことになったわけだが、どんな化学反応が生まれるか楽しみだ。

《山田清志》

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