世界初、水陸両用船の無人運航---八ッ場ダムで実証、実用化へ向けて前進

日本財団 無人運航船プロジェクト 世界初の水陸両用船の無人運航実証(群馬県八ッ場あがつま湖)で成功
日本財団 無人運航船プロジェクト 世界初の水陸両用船の無人運航実証(群馬県八ッ場あがつま湖)で成功全 12 枚

日本国内で、どこよりも早く水陸両用船の実用化にむけたテスト運航が始まった。その現場は群馬県長野原町八ッ場ダム(八ッ場あがつま湖)。2020年夏の発表時には「水陸両用バス」として実用化にむけてスタートしたプロジェクトだ。

3月14日、八ッ場ダムの実験現場にいた水陸両用バスは、東京湾を行く「スカイダック」(日の丸自動車興業)や、山中湖の「カバ」(富士急行)と似たタイプ。前方にはLiDAR・カメラ・ソナー、ルーフにGNSS・風速計・5G(第5世代移動通信)アンテナ、船内にジャイロセンサーなどが備わる。

「縦2個と横1個のライダーで110mほど先の障害物を検知できる。今回、注目してほしいのは入水、障害物回避、出水(上陸)の3シーン。入水はオートマチックシフトのD2、出水はマニュアルシフトのM2で出入りする。水中航行中はシフトをニュートラルに入れて、ブレーキを入れてタイヤを回さないで、一般的な船の操舵で航行する」

そう話すのは、自動運航・運転システムの開発を担う埼玉工業大学 工学部 情報システム学科・渡部大志教授(埼玉工業大学自動運転技術開発センター長)だ。同実証実験は、日本財団が推進する無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」の一環で、同プロジェクトで開発された経路追従・障害物回避・避航システムなどは、船舶の安全航行などに寄与すると期待されている。

同プロジェクトの八ッ場スマートモビリティのコンソーシアムメンバーは、ITbookホールディングスを代表とする、エイビット、埼玉工業大学、長野原町(群馬県)、日本水陸両用車協会の5者。

実験公開には、日本財団桔梗哲也リーダーをはじめ、ITbook HDの前俊守社長、埼玉工業大学の内山俊一学長、日本水陸両用車協会の須知裕曠理事長、エイビットの池田博樹執行役員、長野原町の萩原睦男町長も駆けつけ、水陸両用船による無人運航の世界初実証を見届けた。

水陸両用船の無人運航実証(群馬県八ッ場あがつま湖)水陸両用船の無人運航実証(群馬県八ッ場あがつま湖)

実際に入水・障害物回避・出水を、乗ってみて体感。入水は想像以上に勢いよく水面に突っ込んでいくのが印象的。「やや勢いをつけないと水陸両用バスの自重でタイヤ類が湖底に尻もちしてしまう」と埼玉工業大学 渡部大志教授はいう。

縦横3つのLiDARなどで前方の釣り船の存在を認知し、きれいに回避ルートをリルートし、見事に前方の船を回避する。さらに出水(上陸)時は、水陸境界付近にゆるやかにあるカーブもきれいにトレースし、小さな衝撃もなく上陸する。

この一連の流れ、すべて自動。船舶免許を持ったドライバーは、ハンドルや操舵スロットルレバー、操舵舵などに1回も触れずに、オートパイロットで航行してしまう。埼玉工業大学の自動運転バスで培った自動運転システムが、水上でもイメージ通りに機能する瞬間を垣間見た。

水陸両用船の無人運航実証(群馬県八ッ場あがつま湖)水陸両用船の無人運航実証(群馬県八ッ場あがつま湖)

いっぽうで、陸上にはエイビットのローカル5Gなどを介した遠隔操舵室(今回はトラック荷室内)を設置。無人自動航行を想定した遠隔操舵の実用化にむけた実験で、埼玉工業大学をはじめ開発チームのエンジニアたちが船の航行状況をモニターで監視し、緊急時は遠隔操舵室から自動運転バスを操舵する。

こうした各社の技術を結集させることで、無人運航船を実用化できたさいは、こんな利用イメージを日本財団は描いている。

・都市部では臨海部マンションから船で通勤やショッピング
・臨海部にある空港までの空港アクセスを無人運航船で
・地方に点在する離島を結ぶ貨物運搬や通勤通学利用

こうした想定シーンに無人運航船が実用化すれば、人手不足やドライバーや船員不足の時代につきまとう課題が解決できるかもしれない。また、既存のバス路線や空港アクセス、鉄道路線の混雑緩和も期待できる。

いよいよ動き出した、世界初の水陸両用船の無人運航実証。船舶免許証や自動車運転免許証の扱いや、海事法・道交法などの法制度整備、サイバー攻撃などへのセキュリティ強化、リスクに対応する保険類の整備など、まだまだ課題があるなか、今後どんなアクションでハードルを突破していくか、楽しみ。

《レスポンス編集部》

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