グラベルロードはクルマで例えるとSUV…最新eバイク『ワバッシュRT』&『クロスコアRC』開発のねらい

ヤマハのグラベルロードバイク『WABASH RT(ワバッシュRT)』とクロスバイク『CROSS CORE RC(クロスコアRC)』
ヤマハのグラベルロードバイク『WABASH RT(ワバッシュRT)』とクロスバイク『CROSS CORE RC(クロスコアRC)』全 16 枚

ヤマハ発動機(以下ヤマハ)から、新しいeバイク2車種が発売した。サイクルシーンのトレンドをとらえたグラベルロードタイプの『WABASH RT(ワバッシュRT)』、そして通勤、シティライドに最適なクロスバイクタイプの『CROSS CORE RC(クロスコアRC)』。これら国産eバイクの企画、開発、デザインを担当した各スペシャリストにお話を伺った。

【インタビュー参加メンバー】
黒沢大介:SPV事業部事業企画部 商品企画担当
吉田健人:プロダクトデザイン部 デザイナー
渡邉岳:SPV事業部開発部 プロジェクトリーダー

活況のグラベルロードはクルマで言うならSUV

ヤマハのグラベルロードバイク『WABASH RT(ワバッシュRT)』ヤマハのグラベルロードバイク『WABASH RT(ワバッシュRT)』

2022年3月に発売されたeバイク「ワバッシュRT」「クロスコアRC」は、スタイリッシュなデザイン、オートマチックアシストモードをセットしたドライブユニットの採用など、最新モデルにふさわしい仕上がりとなっている。

企画担当の黒沢さんは2車種の投入について、次のように話す。

「やはり自転車マーケットの動きは無視できないところでした。グラベルロードの盛り上がりは、かなり勢いがあるのと同時に、国産ブランドではあまりグラベルロードタイプのものは発売されていない状態でした。やはりユーザーに楽しんでもらうことが第一です。オンロードもオフロードも楽しめる、しかもマウンテンバイク(以下MTB)ほど激しくないグラベルロードは、クルマで言うまさにSUV的なもので、私たちが求める自転車にピッタリでした。一方のクロスバイクですが、こちらも外せないジャンルです。これまでもリリースはしてきた自転車ですが、より街中での使い勝手を向上させたものになっていると思います」

ヤマハのクロスバイク『CROSS CORE RC(クロスコアRC)』ヤマハのクロスバイク『CROSS CORE RC(クロスコアRC)』

今回の2車種は、グラベルロードとクロスバイク、オフロードとオンロード、という全く異なったシーンで使用されるバイクだが、同様のドライブユニットを使用し、同様のデザインのフレームを採用している。デザインを担当した吉田さんは、

「こだわったのはやはりバッテリーが収まるダウンチューブの部分です。収めるだけなら簡単なのですが、もちろん強度と軽さのバランス、そして見た目の良さという要素も求められます。強度と軽さの部分に関しては、中央にバッテリーが収まるスペースを設けて、さらにその両脇に補強とケーブル類の通り道を作ってあります」

フレーム内にバッテリーを搭載しながら極限まで絞り込んだというダウンチューブフレーム。フレーム内にバッテリーを搭載しながら極限まで絞り込んだというダウンチューブフレーム。

「ただこのツイン構造のダウンチューブは、強度は十分なのですが横幅が広く見えてしまうという欠点がありました。そこはデザイン的に中央部分と左右で滑らかに凹凸をつけるようにしました。陰影をつけたことで引き締まった印象になるようにしてあります。モーターが収まるボトムブラケット付近のデザインにも特徴があります。やはり細長いものは細く見えるので、モーターが収まるボトムブラケットまで滑らかに長く見えるようにデザインしてあります。ただこれができるのも自社開発したモーターを採用しているから、というところもありますね」

と話す。ただし、今回の2車種はグラベルロードとクロスバイクという、異なった場面で使用されるもの。同じようなデザインでありながらそれぞれのシーンに対応した設計になっているという。開発担当の渡辺さんは話す。

ヤマハのグラベルロードバイク『WABASH RT(ワバッシュRT)』とクロスバイク『CROSS CORE RC(クロスコアRC)』ヤマハのグラベルロードバイク『WABASH RT(ワバッシュRT)』とクロスバイク『CROSS CORE RC(クロスコアRC)』

「フレームに関して言えばデザイン的には似ていますが、ジオメトリの調整はしています。ワバッシュRTの方が少しハンドルが遠い設計になっていて、クロスコアRCは多くの人が乗りやすいようにハンドルが近いアップライトな設計になっています。また使われるパーツ類にも違いがありますね。特徴的な部分でいえば、クロスコアRCのタイヤでしょうか。クロスバイクでは珍しい27.5インチを採用しています。全体的に新しさをアピールできるところと、マーケットの声を取り入れてこのサイズにしてあります。エアボリュームがあって乗り心地がいい、しかもパンクしにくいこの太さのタイヤは街乗りには最適だと考えています」

オートバイとの共通性はあるのか?

『WABASH RT(ワバッシュRT)』のデザインスケッチ『WABASH RT(ワバッシュRT)』のデザインスケッチ

ここで疑問に思ったのが、オートバイメーカーとして同じ2輪というeバイクを作り、そこに同じような設計思想はあるのか?という部分だ。吉田さんはこう話す。

「ヤマハの2輪車をデザインする際に、今も指標になっているのが『YA-1』というバイクです。1955年に発売されたものですが、フレームのデザインがあり、配置されたエンジンがバランスよく見える。このスタイルは今回の2車種にもしっかり踏襲されています。フレーム、バッテリーがあり、ボトムブラケットのモーターがしっかり見えています。ヤマハらしさはこのeバイクにも表現できていると思います」

ハンドル左側のメーターにより、オートマチックモードのほか「ハイモード」「スタンダードモード」「エコモード」などさまざまなアシストモードが選択可能。ハンドル左側のメーターにより、オートマチックモードのほか「ハイモード」「スタンダードモード」「エコモード」などさまざまなアシストモードが選択可能。

すでに発売されて1か月ほど経過しているが、ユーザーからの評価は上々だという。筆者も実際に試乗してみて驚かされたのが、オートマチックスポーツモードだ。これは従来の「オートモード」とは違い、さまざまなセンシングによって、エコ、スタンダード、ハイの3つのモードの中から自動的にアシストモードを選択する。実際に試乗してみるとこのモードの自然なアシストには驚かされた。

「オンロード、オフロード両方でかなり効果を発揮しますが、特にオフロードで効果が分かりやすいかもしれないですね。モード間の切り替えがかなり自然で、本当に走りだけを楽しめるようになっていると思います。上り坂もまるで追い風が吹いているように走れます」(黒沢さん)

細かい上り、わだちなど路面状況の変化を感じてシフトチェンジしながら走るのがオフロード走行の醍醐味ではあるが、慌ただしくなってしまうのも事実。このバイクなら、慌ただしい操作は自転車に任せて、ライダーは景色を楽しみながら乗ればいいだけ。まさにスポーツを楽しめるバイクに仕上がっている。

モーターのカバー造形まで全体の構造体として取り込んだデザイン。モーターのカバー造形まで全体の構造体として取り込んだデザイン。

「オートマチックアシストモードに関しては、乗り手の感覚を重視して何度もテストを繰り返した部分です。このドライブユニットを搭載したワバッシュは新しいカテゴリーを作っていけると思いますし、クロスコアは純粋に乗りやすさの部分で進化していくと思います」(渡辺さん)

「これまでのeバイクは年配の方の乗り物、というイメージでした。でも今後はそのイメージが変わっていくと思います。ラクをしたいだけではなく、楽しむ要素をさらに増やしていきたいと考えています。ひとまずこの2台は自信をもっておすすめできる自転車です」(黒沢さん)

まだまだ自転車に乗る楽しみは続いていきそうだ。

《今 雄飛》

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