内蔵パワーアンプシステムを構築可能!?…ダイヤトーンサウンドナビ[システム・メイク術]

『ダイヤトーンサウンドナビ』を搭載したオーディオカーの一例(製作ショップ:M.E.I.<広島県>)。
『ダイヤトーンサウンドナビ』を搭載したオーディオカーの一例(製作ショップ:M.E.I.<広島県>)。全 8 枚

カーオーディオでは「システムレイアウトを考えること」も、良い音を得ようとするときの重要なポイントの1つとなる。当特集では、その選択肢を1つ1つ紹介している。今回は、『ダイヤトーンサウンドナビ』を核とするシステムについて考察していく。

「マルチアンプシステム」の構築が可能! そしてさらには…。

ここまで、メインユニットに内蔵されているパワーアンプを使ってスピーカーを鳴らす「内蔵パワーアンプシステム」について解説してきた。なお「内蔵パワーアンプシステム」はメインユニットに何を使うかによって、できることや利点が変化する。なので、各社の機種ごとで、それぞれどのような「内蔵パワーアンプシステム」が組めるのかを説明している。今回は、三菱電機の『ダイヤトーンサウンドナビ』を使う場合について考えていく。

ところで前回の記事で触れたように、アルパインの『ビッグX』シリーズ、カロッツェリアの『サイバーナビ』の各機、そしてこの『ダイヤトーンサウンドナビ』では、内蔵パワーアンプによる「マルチアンプシステム」を構築可能だ。「マルチアンプシステム」とは、パワーアンプの出力の1chずつを各スピーカーユニットにダイレクト接続するというシステムのことを指す。メインユニットは普通、内蔵パワーアンプが4ch仕様となっているのだが、なので「マルチアンプシステム」を構築する際にはそのすべての出力をフロント2ウェイスピーカーを鳴らすために使い切る、ということになる。

結果、各スピーカーをよりトルクフルに駆動できかつ各スピーカーを個別に制御できるので、音の質が上がり、ステレオイメージの再現性も高まる。これら3シリーズのいずれかを選ぶと、1グレード上の「内蔵パワーアンプシステム」を手にできるというわけだ。

なおこの『ダイヤトーンサウンドナビ』では実は、もう1つ独特なシステムレイアウトも組み上げられる。それは、「2chマルチ制御システム」だ。さて、これはどのようなものなのかというと…。

普通は「マルチアンプシステム」が成立していないと、マルチ制御は行えない。しかし…。

「2chマルチ制御システム」とは、内蔵パワーアンプの2ch分の出力にてフロント2ウェイスピーカーを鳴らす場合でも、ツイーターとミッドウーファーの個別制御が可能になるというものだ。

ちなみに普通は、内蔵パワーアンプの2chだけでフロントの4スピーカーを鳴らす場合には、音楽信号の帯域分割はスピーカーの手前に設置する「パッシブクロスオーバーネットワーク(以下、パッシブ)」にて行われることとなる。なのでそこに至るまでのスピーカーケーブルの中には全帯域の音楽信号が流れることとなる。よって、ツイーターとミッドウーファーの個別制御は行えない。個別に制御するならば、伝送経路も個別化しなければならないからだ。

しかし『ダイヤトーンサウンドナビ』では、2ch分の出力で2ウェイスピーカーを鳴らす場合でもツイーターとミッドウーファーの個別制御(マルチ制御)を行えるのだ。

このようなことが可能となる理由は、『ダイヤトーンサウンドナビ』には「マルチウェイ・タイムアライメント」という三菱電機独自の機能が搭載されているからだ。

ところで「タイムアライメント」とは、近くにあるスピーカーの発音タイミングを遅らせてすべてのスピーカーから発せられる音を同時に耳に届くようにするための機能なのだが、ツイーターとミッドウーファーを個別に制御できないとなると、これらが別々の場所に取り付けられていたとしてもそれらを“1つのスピーカー”として扱わざるを得なくなる。つまり、当機能を厳密には効かせられない(アバウトに運用することとなる)。

対して『ダイヤトーンサウンドナビ』の「マルチウェイ・タイムアライメント」では、2ch出力でフロント2ウェイを鳴らす場合でもツイーターとミッドウーファーに個別に「タイムアライメント」をかけられる。ナビ本体内で一旦信号をツイーター用の高音とミッドウーファー用の中低音とに分けた上でそれぞれの信号に「タイムアライメント」をかけ、その上で2つの信号を同一回線にて伝送する。

“ナビを換えただけ”でも、フロント2ウェイスピーカーの「マルチ制御」が可能に!

そしてスピーカーの手前の「パッシブ」にて改めて信号の帯域分割を行ったときでも、それぞの信号は「タイムアライメント」がかけられた状態がキープされたままツイーターとミッドウーファーとに送られる。結果、運転席のリスナーがすぺてのスピーカーから等距離の場所にいるかのような状況をほぼ厳密に作り出せるのだ。

なので『ダイヤトーンサウンドナビ』では、“ナビを換えただけ”で純正のフロント2ウェイスピーカーのマルチ制御を行える。スピーカーケーブルも純正のままで良いのだ。普通なら、「マルチアンプシステム」を完成させないと(スピーカーケーブルを引き直さないと)ツイーターとミッドウーファーの個別制御は行えないが、『ダイヤトーンサウンドナビ』は必ずしもそうしなくてもOKだ。

なお各スピーカーをトルクフルに鳴らしたいと思ったら、『ダイヤトーンサウンドナビ』を使う場合でも「マルチアンプシステム」化した方が良い。しかしケーブルを引き直す費用が発生するのを嫌う場合やリアスピーカーを殺したくないと考える場合には、『ダイヤトーンサウンドナビ』では、「2chマルチ制御システム」という選択肢も選べる。つまり、楽しみ方の幅が広いのだ。

ところで『ダイヤトーンサウンドナビ』は、素の音質性能も高い。つまりそもそもの音が良い。その一方で少々の弱点もある。HDMI端子を持たないのでスマホのミラーリングを行いたい場合には市販の「デジタル・アナログ変換アダプター」が必要となり、ハイレゾ音源の再生時にはサンプリング周波数が44.1kHzにダウンサンプリングされる(量子化ビット数は24bitのまま再生される)。とはいえ、総合力が高いことは紛れもない事実だ。本格的な、そして独特な「内蔵パワーアンプシステム」を組みたいと思ったときには、有力な候補になり得る。参考にしてほしい。

今回は以上だ。次回以降もさまざまな「システムメイク術」を紹介していく。お楽しみに。

太田祥三|ライター
大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集者としてキャリアを積む。カー雑誌、インテリア雑誌、そしてカーオーディオ専門誌の編集長を歴任した後、約20年間務めた会社を退職しフリーに。カーオーディオ、カーナビ、その他カーエレクトロニクス関連を中心に幅広く執筆活動を展開中。ライフワークとして音楽活動にも取り組んでいる。

唯一無二の「内蔵パワーアンプシステム」を構築可能!? 詳説「システム・メイク術」Part6『ダイヤトーンサウンドナビ』の場合

《太田祥三》

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