男社会の自動車業界で訴え続けた“ラブ”ブランディングという挑戦

長年フィアット・アバルトのマーケティングに携わってきたティツィアナ・アランプレセさん
長年フィアット・アバルトのマーケティングに携わってきたティツィアナ・アランプレセさん全 15 枚

アバルトと聞くと、なんだか勇ましいブランドというイメージを持っていらっしゃる方が多いと思います。コンパクトなボディで、小排気量のエンジンをパワーアップして、ぶん回す!(笑)。アバルトって本来そういうブランドなんですよね。うん!まさに元気な女性にピッタリ!

そんなアバルトの女性だけのミーティング「スコルピオンナドライブ」が開催されました。当日は、国際女性デーが近かったこともあり、アイコンのひとつとなっているミモザの花をイメージして、ドレスコードは黄色いもの。鮮やかな黄色を全身にまとった方、オシャレにあしらった方、ミモザの柄の和服で登場された方等々、オシャレで元気いっぱいのスコルピオンナたちが集合。ゲストにアバルト『695リーヴァ』のオーナーさんでもある女優の高橋ひとみさんもお招きして、楽しいお話に花が咲きました。

「SCORPIONNA DRIVE 2022」に参加した女性アバルトオーナーたち「SCORPIONNA DRIVE 2022」に参加した女性アバルトオーナーたち

こんなステキなイベントの発案者は、ティツィアナ・アランプレセさん。日本の自動車業界に長年携わり、フィアットやアルファロメオのマーケティング責任者として活躍してこられました。ステランティスを退職した現在も、ブランドアドバイザーとして大きく関わっています。女性たちを応援してくれる、心強い味方なのですが、女性がクルマの世界でブランドを一から作っていくのは大変だったと思うんです。今回はそんなアランプレセさんにインタビュー。これまでと、これからの挑戦について語っていただきました。

男社会の自動車業界で続けた“ラブ”ブランディング

「33年間、ずっと自動車関係のお仕事をしてきました。やはり男社会なので、最初は大変でした。でもステレオタイプのままじゃいけないと思っていたんです。少なくても私には、従来のやり方は合いませんでした。若い頃は真っ向勝負しちゃったこともありましたが、それじゃダメ。もっとフランクに一緒に手を携えてやっていくやり方の方が、上手くいくんです。闘うことで私は強くなっちゃったけれど(笑)、それって自分の働き方のスタイルじゃなかった。自分が上手だから成功するという考え方じゃなくて、自分がすごく応援できるチームと一緒にものをつくって、だから成功できるという考え方をしていかないとダメだと思うんです。そして、それって女性が得意なことだったりするんですよね」(アランプレセさん、以下同)

----:男社会の中での真っ向勝負は厳しいだけですもんね。私は男女の区別は必要だけれど、差別はいけないと思っています。

「女性は何が良いのかを経験から習うんですね。だから次のステップでまた新しいことができる。それはすごく女性的なことだと思いますね。私たち女性の身体は、妊娠出産などを含め毎月の変化、わずらわしさや痛みにも会わせて乗り越えなければいけないでしょう。それも関係しているのかもしれない。ある意味変化に慣れているのかもしれません」

ティツィアナ・アランプレセさんティツィアナ・アランプレセさん

----:柔軟性は女性の得意分野かもしれませんね。

「私は日本では“ラブ・ブランディング”=ラベディングということをやってみました。その結果、ビジネスの再興だとかフィアットのサクセスとか、いろいろな私のマーケティングの活動では、すごく面白いことができました。それだけじゃなくて、一番の変化は、私の会社の中のいわゆる男性の中でも男っぽいと言われてきた、そのように見えていた人たちが、“ラブ”という言葉を使うようになったんです。最初は“ラブ”の言葉で笑っちゃってたような人が、ラブのプレゼンテーションをするようになった。それが一番嬉しかったですね」

----:みんなを変えたんですね!

「みんなじゃないけど、少しでも変えたことは大切だったと思います。でもね、これまでの社会で蔑ろにされてきた、女性に対して心ないひと言を、ポロリと言ってしまう男性はまだまだいて、それに対して女性は言い返せないでいるけれど、嫌なことがあればちゃんと言うべき。言えるような環境を作っていかないとダメですね。そうすれば相手も理解できて、それはステップアップになる。特に男性女性、ジェンダーのコミュニケーション、言葉の違い、言葉の取り方の違いもありますよね。実は男性の方も、女性的な社会とマネージメントの仕方、仕事の仕方がやりたいと思っていると、私は思うんです。だってね、ステレオタイプってツライだけだと思うの。時代は動いてるのに」

購入時の決定権は80%、だけどメーカーで働く女性は10%の矛盾

ティツィアナ・アランプレセさんティツィアナ・アランプレセさん

----:どうしても男社会がメインになりがちな中で、女性と車っていうのを多方面からいろいろ取り組んで来られたんですよね。

「そう。だってね、すごく大事なポイントだから。なぜなら女性は自分で車を買うだけじゃなくて、家族の車の決定権でも大きな影響を持っているでしょう? クルマの購入時の女性の決定権は80%なんて言われているけれど、自動車メーカーで働いている女性はたったの10%。これはアンバランスですよね。だからお客さんになる女性と、決定権を持つ女性のために、もっと女性から提案をさせてもらいたいと思うんです。その提案は車のデザインから、車の作り方、車の未来まで。販売面でもそうですよね。車業界は次へのステップとして、もっと女性の進出が必要だと思います」

----:ちなみにスコルピオンナドライブのようなイベントは、お客様になっていただいてからも、お付き合いを続けよう、カーライフをきちんとサポートしようというイベントですよね。

「ブランドの魅力を、もっと女性に伝えたいというイベントですね。だから女性が楽しいスタイルにしたいの。(竹岡)圭さんにも来てもらったことがあるけれど、ドライビングアカデミーのようなイベントでも女性はやっぱりチャレンジするのを楽しんでくれる。そこでみんなサポートする、セレブレーションする、すごくみんなが協力的になって、みんながハッピーになる。そういう環境をドライビングスコルピオンナの時につくったの。だからみんなもっとお互いに話をしたり、自分のファッションポイントを見せたり、あとおいしくて可愛いお弁当を食べたり。そういう雰囲気をもっともっと自動車メーカーの中にも作っていきたいですね。」

ティツィアナ・アランプレセさんがこだわった特製のお弁当ティツィアナ・アランプレセさんがこだわった特製のお弁当

----:ティツィアナさんは全体統括もしなきゃいけないのに、お弁当まで全部細かく確認しているのが、本当にすごいと思います。

「お弁当はいちばん大事よ!そこは私、すごく細かい。女性にとって大事なことだもの」

----:確かにそうですよね(笑)。そこで気分がグーンんと上がりますモン。

「ディテールを細かく見ていくのは大切なことです。これからももっともっと新しい提案とチャレンジをしていきますので、楽しみにしていてくださいね」

ティツィアナさんの新しいチャンレジ、本当に楽しみです!これからも女性の背中を押し続けて、時には抱きしめて、応援してくださいね!

筆者の竹岡圭さん(左)とティツィアナ・アランプレセさん(右)筆者の竹岡圭さん(左)とティツィアナ・アランプレセさん(右)


《竹岡圭》

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