日本のEV市場でリーダーになりたい…日産自動車 チーフマーケティングマネージャー EV担当 柳 信秀氏[インタビュー]

日本のEV市場でリーダーになりたい…日産自動車 チーフマーケティングマネージャー EV担当 柳 信秀氏[インタビュー]
日本のEV市場でリーダーになりたい…日産自動車 チーフマーケティングマネージャー EV担当 柳 信秀氏[インタビュー]全 1 枚

日産のEV戦略が加速している。『アリア』のデリバリーがいよいよ始まり、さらに今年度初頭には「軽EV」の投入が予定されている。日産の現在、および今後のEV戦略の方向性について、日産自動車 日本マーケティング本部 チーフマーケティングマネージャーオフィス チーフマーケティングマネージャー EV担当の柳 信秀(やなぎ のぶひで)氏に話を聞いた。

柳氏は、5月26日に開催される 【連続セミナー】中西孝樹の自動車・モビリティ産業インサイトvol.7 日産のゲスト講師として登壇し、このテーマで詳説する予定だ。

---:日産と言えば、今から11年前にリチウムイオン電池を搭載したEV、初代『リーフ』を発売したEVのパイオニアですが、当時はまだ「カーボンニュートラル」という言葉はなかったと思うのですが、そんな時代になぜEVに取り組んだのでしょうか。

:そもそも自動車業界が生き残っていくために、地球温暖化に対して手を打たなければならないという気持ちはそのころからありました。90年代の初めごろからリチウムイオン電池の研究開発を始めており、EVには非常に有効な技術であること、ある程度自信を持ってリチウムイオンを搭載できるだけの技術改良ができてきたことが、2010年のリーフにつながった形です。

また当時は、トヨタさんがハイブリッドで燃費向上を謳っており、日産としてもそれに追随する道はあったのですが、他とは違うアプローチですることが日産のDNAですので、EVを出すことを決断したということですね。

---:なるほど。そして昨年度末にはアリアを発売し、軽EVもまもなく登場予定というタイミングですが、気になるのは、何台売るか、ということです。単にEVのニューモデルを用意しました、ということではなく、どれくらい売るのか、そこに注目が集まっています。

:(社内からは)とんでもない台数を売れと言われています(笑)。経済産業省からも「日産さんはどのくらい売ろうと思っているのか」と非常に関心を持っていただいていると聞いています。具体的には、昨年度のリーフの販売台数が1万2000~3000台なのですが、これにアリアと軽EVを加えた3車種で昨年度比10倍とまではいきませんが、一気に販売台数を増やしていきたいと思っています。

---:それはスゴイですね。逆に言うと、それだけ作る準備があるということですか。

:はい、そうです。そうだったのですが、ご承知の通り、ロックダウンや戦争、半導体問題等があり、本来はその位作って売るぞということだったのですが、実際はそこまでは作れないのではないかと心配しています。

いずれにせよEV3車種投入後は、それくらいの意気込みでEVを売っていきたいと考えてています。

---:なるほど。生産も含めて、それくらい本気でやるということなのですね。

:はい。本気です。

---:日本のメーカーがEVをどれだけ本気で売るのか、市場としては疑心暗鬼になっている部分もあると思いますが、日産の本気度が感じられる言葉ですね。

:トヨタさんの『bZ4X』はサブスクというかいわゆるリース販売ということですし、ホンダさんやスズキさん、ダイハツさんの軽EVも、報道で聞くところ2024-25年度ということですので、今年度から来年度にかけて、我々が持っている3車種で盤石の地位を築いて、EV市場のリーダーになりたいと思っております。

---:今年度の軽EV購入の補助金が上積みされましたが、販売にはどのような影響があると見ていますか。

:もともと軽の補助金は20万円程度想定で、一番下のグレードが200万円を切る価格にしたいとしていましたが、当社の軽EVの仕様だと今年度は補助金が55万円になる見込みですので、実質の負担額はもっと抑えられる計算です。そうなると、軽のガソリン車の上位グレードやコンパクトカーのエンジン車と同じ位の負担になることも期待できますので、多くの方々の検討対象になってくるのではないかと思います。

ランニングコストについても、今はガソリンが高いですし、お車を毎日通勤・通学でお使いになられているお客様や、ご自宅からガソリンスタンドが遠いお客様は、家で充電しておけばスタンドに行かなくても済みますし、とても便利に使えます。また、戸建てにお住まいの方で、普通充電器を用意できれば、かなり安いご負担でお乗りいただけます。そういうお客様にアピールしていって、一人でも多くのお客様にEVの魅力をお伝えして、ご購入いただけたら嬉しいです。

航続距離については、バッテリーが20kWhで現行のリーフの半分くらい、航続距離もリーフの約半分くらいなのですが、軽をお乗りになっているお客様のデータを見ると、8割くらいの方が一日50キロ前後の走行距離ですので「ちょっと買ってみようかしら」となると思うのです。

ただ、我々が良い商品だと思ってお出ししても、お客様に確実に受け入れていただくには、お客様の生活のためのクルマとして、価格も含めて、しっかりとアピールしていかなければなりません。

---:やはり市場認知をきちんと変えていく、アピールしていくことも非常に重要だということですね。

:本当に大事だと思います。EVはまだ市場の1%もないくらいですが、我々の意気込みとしては、この軽EVは、当然一番買って頂きたい車種になります。

私もこの軽EVに乗りましたが、日ごろ軽に乗っていらっしゃるお客様であれば、乗っていただくと、一瞬でその良さが分かるはずです。走りだすと、トルクがすぐについてきて運転しやすいですし、とても静かなことがいちばん印象的です。50-60キロほどで走っても、ロードノイズや風の音はするのですが、エンジンの唸りがなく、ものすごく静かです。普通の軽は、グッとアクセルを踏むと、グワーといって車内が騒がしくなりますが、あれがないというだけでも、世界は格段に変わります。

---:ぜひ乗っていただく機会があると良いですね。

:そうですね。乗らないとガソリン車との違いが分からないのが、EVやe-POWERの良い面でもあり、難しいところです。カッコ良ければ買っていただけるわけではないので、我々としても、いろいろなところで見ていただいて、気軽に乗っていただく機会を設けていきます。少しでもアクセル踏んでいただければ良さがすぐに分かりますので。

また、カーボンニュートラル実現に向け積極的に取組まれている企業様、自治体様にも是非一度軽EVに乗っていただきたいです。すぐにその良さをお分かりいただけることは間違いないですから。私としてはそのような機会を提供していくことが、軽EV成功の秘訣だと考えております。

柳氏が登壇するオンラインセミナー 【連続セミナー】中西孝樹の自動車・モビリティ産業インサイトvol.7 日産は5月26日開催。

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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