より進化したドライビング、新しくなった「パイロットスポーツ5」

ミシュランのニューモデル、『パイロットスポーツ5』を栃木県のクローズドコースで試した。約6年ぶりのモデルチェンジとなるパイロットスポーツ5は、「意のままのハンドリングを実現するハイグリップスポーツタイヤ」がコンセプトだ。
外側部分に大きなブロックを配して内側部分に高い排水性を確保する太いストレートグルーブを配した「デュアル・スポーツ・トレッドデザイン」や、シリカをより多く配合した新コンパウンドにより、もともと定評あるドライ&ウエット性能をさらに高めるとともに、「ダイナミック・レスポンス・テクノロジー」や「バイアブル・コンタクト・パッチ3.0」により優れたステアリングレスポンスと操縦安定性を実現。ストリートで軽快な走りを楽しむことに主眼を置いたタイヤだとブランド戦略マネージャーの大河内氏は語る。
進化のほどを確認するため、パイロットスポーツ5と前身の『パイロットスポーツ4』の225/40R18サイズを装着した『カローラスポーツ』を、ハンドリング路と外周路で乗り比べた。まず乾燥舗装路でのハンドリングと操縦安定性の高さを確認すべく外周路へ。同じサイズながら、走りはじめてほどなくよりしっかりとした手応えが伝わってきて、バンクでは幅を太くしたかのようなグリップを感じる。
レーンチェンジを試みると、パイロットスポーツ4も動きが素直で悪くないところ、パイロットスポーツ5は応答性がほどよく俊敏で、戻したときにも横揺れが素早く収束するなど、走りにより一体感があることがわかる。
『4』もまだまだ通用するとあらためて感じたが…

続いて散水したハンドリング路へ。路面はウェット状態で、1周目はVSCをOFF、2周目はONにして走ってみたところ、ここでもパイロットスポーツ4はバランスがよく、まだまだ通用するとあらためて感じたが、意図的に挙動の乱れそうな操作をするとそのとおり挙動が出るあたりがおそらく違うのだろうと予想しつつパイロットスポーツ5に乗り換えると、まさしくそのとおり。同じような操作をしても、VSC OFFでも走行ラインのずれが小さく、VSCをONにすると外にふくらむこともなく、巻き込む感覚も圧倒的に小さい。より意のままのハンドリングを実現している。
全体的にパイロットスポーツ5のほうが、同じように操作してもクルマがより前へ前へと進もうとする感覚があり、限界付近でさらにステアリングを切り増しても、それなりについてくるあたりもだいぶ違った。これにはコーナリング時の接地圧分布がより均等になるように内部構造を最適化したり、強度が高く耐熱安定性に優れた「ハイブリッドアラミドナイロンベルト」を採用したことによる接地性の向上が効いているに違いない。
なお、ウェットでのラップタイムを比較すると、パイロットスポーツ4に対して最速で1.7%、平均で1.5%短縮したそうだが、走った感触としては、もっと速くなったように感じたほどだ。
加えてパイロットスポーツ5は見た目もよい。新たな金型技術を用いてサイドウォールに精緻な加工を全周にわたり施すことで、より深い黒を実現したという「フルリングプレミアムタッチ」により、視覚的な質感も高い。装着するとクルマの見栄えまでよくなることを示すべく、会場にはレクサス『IS 300h』と『GR86』が展示されていた。
そんなパイロットスポーツ5。従来品もまだまだ十分に通用する実力を持っていながらも、新製品はさらに高い性能と価値を身に着けたことを確認できた。ここまでできる技術の進化に驚くとともに、大いに感心させられた次第である。

岡本幸一郎|モータージャーナリスト
1968年、富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報映像の制作や自動車専門誌の編集に携わったのち、フリーランスのモータージャーナリストとして活動。幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもスポーツカーと高級セダンを中心に25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに多方面に鋭意執筆中。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。