カウンタック復活:新型はクンタッチ、ランボルギーニのDNAは守り続ける…デザイナー[インタビュー]

ランボルギーニ クンタッチLPI 800-4
ランボルギーニ クンタッチLPI 800-4全 11 枚

アウトモビリ・ランボルギーニは『クンタッチLPI 800-4』を日本で公開した。そのデザインは1971年にデビューした『クンタッチLP500』(これまで日本ではカウンタックと呼ばれた)のオマージュとしてデザインされている。そこでアウトモビリ・ランボルギーニ ヘッドオブデザインのミィティア・ボルケルトさんに具体的なポイントなどについて話を聞いた。

◆50周年を記念してDNAのスタートを祝う

----:初めにお伺いしますが、なぜこのタイミングで新たにクンタッチを開発したのでしょうか。

アウトモビリ・ランボルギーニ ヘッドオブデザインのミィティア・ボルケルトさん(以下敬称略):単純にクンタッチLP500というランボルギーニのDNAを確立したクルマが、昨年50周年を迎えたことがあります。その美を称え50周年を祝いたいという思いからです。また、私たちとしても常に未来を見据えたうえで、1970年代にランボルギーニのDNAのスタートとなったデザイン、まるで宇宙船的なデザインをインスパイアしたいという思いもありました。ですから、このクンタッチLPI 800-4は1970年代のクンタッチを未来版として解釈したような、21世紀版のクンタッチといっていいでしょう。従って初代が持っている全て、もちろん私も個人的に大好きなラインをすべて取り入れています。

ランボルギーニ クンタッチLPI 800-4ランボルギーニ クンタッチLPI 800-4

----:ランボルギーニブランドのデザインDNAは、クンタッチがもとになっているとのことですが、具体的にはどのようなところでしょうか。

ボルケルト:それは2つのラインです。ひとつは全体的なシルエット。宇宙船のライン、スペースシップラインと呼んでいますが、サイドから見てすぐにランボルギーニだ、クンタッチだとわかるこのライン(シルエット)がまず第1の特徴です。

ランボルギーニ クンタッチ5000QVランボルギーニ クンタッチ5000QV

2つ目は、真正面、もしくは真後ろに立つとよくわかるんですけど、サイドウインドウが、すごく傾斜(ルーフに向ってすごく寝ている)しているところです。それによって室内のスペースが決まるわけですけれども、この強く傾斜してるのが2つ目の特徴です。

ランボルギーニ クンタッチLPI 800-4ランボルギーニ クンタッチLPI 800-4

こういった特徴から、スーパースポーツカーがたくさん駐車しているところにクンタッチを置くと、遠くからでもこれはクンタッチだなと分かる、本当に特徴的なデザインをしています。

◆いまも未来も

----:クンタッチLPI 800-4はオリジナルクンタッチのオマージュということで、ややデザイン的にはレトロにも感じさせます。一方で、ミィティアさんは常に未来的なデザインに挑戦して来ています。そういうミィティアさんにとってレトロ的なデザインをすることへの難しさ、チャレンジのようなことはありましたか。

ボルケルト:ランボルギーニのデザインというのは常に未来的だといえると思うんですね。私はアーティストとして、デザイナーとして、ランボルギーニの色々な新型車をデザインしてきています。その中にはすごく“クレージー”なクルマもあります。例えば『シアン』はいってみればクンタッチを極端に解釈したクルマ、いい換えるとオートクチュール的なクルマなのです。

それに対してクンタッチLPI 800-4はエレガントなデザインとまではいいませんが、本当にピュアなデザインだと思っています。私はランボルギーニに入社してから数々のクンタッチを研究してきました。ミュージアムに行って過去のたくさんのクンタッチを見る機会もありますし、東京に行ってランボルギーニデイに参加させていただくと、そこでも本当に素敵なクルマをたくさん見せてもらいました。そういった私個人として様々なクンタッチを見て研究していく中で出来上がったのが今回のLPI 800-4なのです。つまり、私のクンタッチに対する愛情を表現したデザインに仕上がってるといっても過言ではないんです。

例えば、まずLP500のピュアなシルエットを採用していますし、最初の市販車でありますクンタッチのペレスコープのようなラインも採用してます。そして横に置いてあるQVの6角形のホイールアーチやリアのデザインも採用しているのです。

ランボルギーニ クンタッチ5000QVランボルギーニ クンタッチ5000QV

こういった過去の要素をすべて取り入れつつ、モダンな技術も一方で採用しています。例えば、現代にあったエアロダイナミックスの技術、今回はウイングを一体化させています。LPI 800-4は2022年のモデルとして、その時代に必要とされているエアロダイナミクスをさいようすることで、最高時速350km/hをたたき出せる要素を盛りこみ作っていきました。

その結果として未来的なインスピレーションを与えるようなデザインに仕上がっていると思います。

----:ではボルケルトさんがLPI 800-4で一番こだわった部分はどこでしょう。

ボルケルト:LPI 800-4では特にリアのショルダーやフェンダーの部分が非常に筋肉質で人間のようにも見えるところです。ここの処理にはかなりこだわりました。それからフロントフェンダーのところのホイールアーチも6角形のように見せていますが、キチンとデザインに溶け込んでいます。ここもかなりこだわりました。

ランボルギーニ クンタッチLPI 800-4ランボルギーニ クンタッチLPI 800-4

また、LPI 800-4では2つのラインにこだわっています。1つがスペースシップライン。それからもう1つはドアエリア(サイドエアインテーク上あたり)からリアホイール上にかけて走るラインです。ここが非常にクリーンにデザインされています。実は昨日、ランチを食べに外に出た時に黒いクンタッチLPI 800-4が走り去る姿、つまりリアビューを見たのですが、遠くから見てもすごく良いプロポーションだなと思いました。特にリアの六角形で形作った3つのテールライトや、中央下のテールパイプがあるあたりがすごく目立って見えたのですね。そしていまお話をしたリアのフェンダーの部分はほんとうに人間のように見えたのです。やはりこの辺りはこだわりですね。

ランボルギーニ クンタッチLPI 800-4ランボルギーニ クンタッチLPI 800-4

----:今後電動化になっていった時にデザインは変わっていくのでしょうか。

ボルケルト:私がランボルギーニに入ってから、手掛けてきたデザインを見ていただければわかると思いますけれども、それを今後も続けていきたいと思っています。特にスペースシップラインといわれるものこそ、非常にランボルギーニが重視しているところですから、このDNAは今後も守り続けていきたいですね。ランボルギーニである以上、どのデザインも必ず予想を覆す、予想外でなくてはいけません。しかしそれと同時にこのスペースシップラインは大事にしていきたいと思っています。

ただしデザインテーマについては、その時々の新しいテクノロジーや、そのクルマに課せられた新しいミッションに合わせて変えていく必要はあるでしょう。では、ランボルギーニの電気自動車は一体どういうデザインなのか。1番参考になるのが『テルツォミレニア』でしょう。ハイライトとしてひとつ挙げるならば、電気自動車はエキゾーストパイプは必要ないですよね。このスペースを使って何か別のテクノロジーでクールなことができると思います。例えば、スマートエアロダイナミクスもその1つ。この時点で未来のデザインについて私がいえるのはこのくらいなんですけど、やはり、常にデザインのDNAには忠実でありたいですし、実際にテルツォミレニアもクンタッチも、『SCV12』も『シアン』もそうです。そのうえでデザインする以上は常にサプライズを与えたいですし、アイコン的なデザインでありたいと思っています。それはランボルギーニに期待されたことであり、私たちがお約束していることでもありますので、そのニーズには常にお応えしながら、皆様のエモーションを掻き立てるようなデザインをしていきたいですね。


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(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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