ガソリンスタンドでの事故が「セルフ」で増加、その原因は【岩貞るみこの人道車医】

セルフスタンドでの事故が増えているという。その原因とは。(謝写真はイメージ)
セルフスタンドでの事故が増えているという。その原因とは。(謝写真はイメージ)全 3 枚

2022年6月の最後の一週間はとんでもない暑さになり、ちょっとコンビニまで……と家から外に出たとたん強い日差しと熱波にやられ頭がぼーっとしてしまう。エアコンの効いたクルマも同様で、外に出たとたんの寒暖差で体に不調をきたし、運転中の意識消失が増えるというのは以前、このコラムでも書いたとおりだ。

さらに、厳しい暑さは人の冷静さを失う。夏休みに向けてドライブの機会が増える今こそ運転に注意、いや、今回は、給油注意の話である。

セルフスタンドでの事故が増えている

給油時の事故。海外の事例はたまにネットで、ガソリンスタンドに突っ込んだり、出火したりという動画を見かけるけれど、日本ではどのくらい、どんな事故が起こっているのだろうか。東京消防庁からデータを入手してみた。

2021年中の東京消防庁管内の、危険物施設等の事故は124件(昨年比1件増)。このうち、ガソリンスタンドでの事故件数は74件で全体の約6割に当たる。

【図1】ガソリンスタンドでの事故発生状況(2021年)【図1】ガソリンスタンドでの事故発生状況(2021年)

ガソリンスタンドでの事故の内訳を見てみると、全体の56.8%に当たる42件が、「車両の運転操作ミス」による破損事故だ(図1参照)。この42件中37件は、セルフサービス施設で起こっていて、セルフでの事故が多いことがわかる。過去5年間の数字を見ると、2018年では一度減ったものの、そこからじわじわとまた上がり始めている(図2参照)。

【図2】車両の運転操作ミスによる破損事故発生状況【図2】車両の運転操作ミスによる破損事故発生状況

セルフでの事故はなぜ多いのか。初心者や運転に苦手意識を持つ女性や高齢者に聞くと、給油機の横にぴたりとつけるのが怖いという。特にセルフの場合は、だれも誘導してくれないし、給油機から離れすぎていたら給油しにくいから、ちゃんと寄せなくちゃいけないし、後ろにもクルマが待っているから、早くしなくちゃいけないし……とあせる気もちが強くなるのかもしれない。そして、給油機や、給油機のそばにあるガードポール、その他、施設内にあるさまざまなものにぶつけるのだ。

給油機にぶつけると、ガソリンの流出~火災につながる危険な状態になりかねない。「衝突被害軽減ブレーキがあれば、止まるのではないか」という人もいるが、衝突被害軽減ブレーキは、ドライバーがアクセルを踏み込めばそちらを優先するし、センサーが感知する角度やその時の速度によっては作動しなかったり、作動しても止めきれないことがある。ガソリンスタンドの敷地内で、衝突被害軽減ブレーキだけに期待することはできないのである。

「交通事故」や「火災」も、その原因は

ところで、図1のグラフをよく見ると、「車両の運転操作ミス」のほかに、「交通事故」が2件ある。車両の運転操作ミス、イコール、物損の交通事故ではないのかと思うが、確認するとこれは、敷地内で起きた事故が「操作ミス」、公道などのガソリンスタンド敷地外を走行していたクルマが突っ込んできたケースを「交通事故」として分けているという。ガソリンスタンドから出たクルマが公道を走っているクルマを避けようとして、ガソリンスタンドの防火塀にぶつかるパターンなどである。

また、昨年は給油中にホースをつけたまま発進したケースも、東京消防庁管内だけで3件も(!)発生している。これは本当に危険。夏はガソリンが気化しやすいし、冬は静電気で着火しやすいしなので、一年を問わずくれぐれも注意したいものである。

そのほかガソリンスタンドの事故としては、給油中のクルマのほかにガソリンスタンドの機器や配管から漏れたものも含まれる「流出」、タンクローリーが荷下ろしするときに、異なる油種の貯蔵タンクに入れてしまう「コンタミ(コンタミネーション)」、さらに、貯蔵タンクや配管に圧力を加える定期的な施設検査で異常が見つかった「気密異常」。そして、「火災」も7件、起きている。ガソリンスタンドの敷地内は禁煙なのだが、相変わらずライターでタバコに火をつけて燃え上がるケースがあるのだという。

また、バイクの多くはガソリンがどのくらい入ったかを示す燃料計がついていないため、タンク内を目で見ながら入れていくのだが、夜だと明るくしようとしてライターを点火し(!)、そのまま引火するケースも起こっている。ライター、絶対だめ! ちなみにスマホも、故障しているときなどはまれに火花が出ることもあるので注意したい。

あせった一瞬を、悪夢が襲うのである

ガソリンスタンド敷地内では落ち着いて操作するとともに、給油時はエンジンオフ! 給油口を開けるまえには静電気除去シートにタッチ! 注ぎ足し給油をしない! 給油キャップの置き忘れしない(する人、多いらしい)! 自分で容器にガソリンを入れない!

自分はそんなことするわけがない、と思いながら読んでいる人。その油断が危険なのだ。暑くて頭がぼーっとしたり、後ろに待っているクルマがいるからとあせった一瞬を、悪夢が襲うのである。

ぜひ、気を付けて。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「ハチ公物語」「しっぽをなくしたイルカ」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。最新刊は「法律がわかる!桃太郎こども裁判」(すべて講談社)。

《岩貞るみこ》

岩貞るみこ

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家 イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「未来のクルマができるまで 世界初、水素で走る燃料電池自動車 MIRAI」「ハチ公物語」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。2024年6月に最新刊「こちら、沖縄美ら海水族館 動物健康管理室。」を上梓(すべて講談社)。

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