事故データの蓄積が保険会社の強み…損保ジャパン DX推進部 山田貴之氏[インタビュー]

事故データの蓄積が保険会社の強み…損保ジャパン DX推進部 山田貴之氏[インタビュー]
事故データの蓄積が保険会社の強み…損保ジャパン DX推進部 山田貴之氏[インタビュー]全 1 枚

DXは単なる業務のデジタル化ではない。デジタルによって既存の業務やビジネスを拡張する取り組みだ。だが、それは同時に既存業務やプロセスの変革(破壊)を伴うことになる。プレーヤーの入れ替えや役割分担も変わる。

損保ジャパンは、個人・法人向けにDXを取り入れた新しい保険商品を展開している企業のひとつだ。専用ドラレコの特約、コネクテッドカー専用自動車保険をすでに商品化している。8月29日開催の無料オンラインセミナークルマを売った後の儲け方~コネクテッドカーのマネタイズ~では、同社DX推進部 課長代理の山田貴之氏が、同社が扱うDX保険商品やその戦略について講演予定だ。どんな内容なのか、ポイントを聞いた。

DX、MaaSの波は保険業界にも押し寄せている

――自動車産業にかかわる業界はすべてCASE、MaaS、DXの波によってさまざまな影響を受けています。保険業界での変化や影響をまず教えてください。

山田氏(以下同):保険業界でもいわゆる「デジタルディスラプション」は確実に起きています。自動車保険であれば、自動運転や高度運転支援システムによる事故率の変化があります。それらに対応するサービスや特約、これは法的な整理や対応も含みます。シェアリングやMaaS(ラストマイル)は、車の所有スタイルや稼働率にも影響を与えます。

火災保険や生命保険でもIoT、センシング、ウェアラブルデバイスなどつながる技術が利用できるデータの精度を上げています。ビッグデータ、AIが災害予知、疾病リスクの考え方を変えています。

これらは、事故・故障や災害予測など安心・安全につながります。デジタルに対応することは、保険会社のミッション・ビジョンにとっても必要なことです。

――実際、保険ビジネスにおいてデジタル化の影響はでているのでしょうか。

はい。もちろん、事業者ごとのポートフォリオや規模、特徴ごとに違いはあります。また、DX以外の社会情勢、景気、人口動向などの影響もあるので、一概に何が原因でとはいいきれません。ですが、変化を受け入れるだけではだめだと思っています。新しい技術とニーズをどうすり合わせていくかが重要です。さらに、業界側からも古いモデルを自ら破壊していく姿勢が求められています。

弊社のビジョンはデジタルでもそうでなくても変わるものではありません。事故をなくす、ドライバーの安全・安心に寄与するものとして、デジタルの活用は今後さらに進むとみています。

また、サイバーセキュリティやドローンなど新しいリスクへの対応も必要です。永続的に活動するには変化や改革を続けることです。

ビッグデータによって変わる保険商品

――具体的にはどんなサービスを展開しているのでしょうか。

コネクテッドカー専用保険として「コネぴた」というサービスがあります。各社のコネクテッド機能を搭載した車両から得られるさまざまなデータを、損保ジャパンが持つ独自の事故データや解析アルゴリズムで分析します。その結果を、走行診断やドライバーの安全運転スコア算出に利用します。ドライバーは、安全運転のアドバイスを受けたり、自己分析になるほか、スコアに応じて翌年度の保険料を安くできるといったメリットが生まれます。

また、事故の可視化も大きな特徴です。メーカーのコネクテッドプラットフォームを利用するので、事故時の車両データを使った正確な分析が可能になります。事故時、当事者はパニックになったりするので正確な事故分析や判断の妨げになることがあります。データによる分析は、その後の交渉もスムーズにすることにもつながります。

「コネぴた」はメーカーのデータ収集基盤を利用するので、商品としてはメーカーごとに連携が必要になりますが、通常の自動車保険の特約の形で、専用のドラレコをセットにしたもの(つながるドラレコDriving!)もあります。事故時、の緊急通報機能のほか提携している警備会社の駆けつけサービスが利用できます。

――法人向けにはなにかありますか。

後付けのドラレコと損保ジャパンのプラットフォームを利用した事故防止サービス(SMILING ROAD)があります。ドライバーの自己評価や安全運転のためのアドバイスは個人向けと基本は同じですが、ドラレコ情報とともに車両の位置情報がとれるので、事業者や車両部、総務部などが車両の運行管理にも利用することができます。

ねらいは事故防止なので、このシステムでドライバーを監視したりスコアによって懲罰を与えるためのものではありません。アドバイスや報償に特化した設計になっていますが、ご導入頂いた企業様の多くで、約20%以上の事故低減効果がありました。

車両に小さいタグをつけて、車室内だけスマホ操作を制限(画面ロック)できる「ながらスマホ」を防止するソリューションもグループ会社で持っています。

事故データの蓄積が保険会社の強み

――ドラレコやGPSを利用した運行管理や事故防止のソリューションは、カーナビやドラレコメーカー、自動車メーカー、クラウドサービスベンダーなど複数のプレーヤーが参入していると思います。

はい。将来的にどうなるかはわかりませんが、保険会社は独自の事故データ、分析データを持っています。詳細の事故データ、はメーカーも十分に持っているとは限りません。しかし車両の細かい制御情報(事故時にどんな操作がなされどんな命令が動いていたか)はわかります。カーナビであれば地点情報や3Dマップなどがあります。業界ごとの特色や得意分野を生かしていると思います。

S O MPOホールディングスでは、米国のPalantirと合弁企業を立ち上げ、同社の分析技術、知見を自分たちが持っている膨大な事故データを利用して、ビジネスモデル創造にチャレンジしています。

――海外企業との連携は今後も広がっていくのでしょうか。

広がると思います。MaaS革命やDXへの取り組みは各社が単独で動いていても限界があります。できることや強みを生かし、足りないところをパートナーシップでカバーする必要があります。また、新興国は自動車の保有台数にあわせて自動車保険も伸びています。

変革への危機感はありますが、新しい動きはチャンスでもあります。

山田氏が登壇する無料オンラインセミナークルマを売った後の儲け方~コネクテッドカーのマネタイズ~は8月29日開催。

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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