熱中症事故! 園バス車内に置き去りをどう防ぐ?…社会通念の変容が必要だ

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熱中症事故につながる「子どもの車内置き去り」。幼稚園・保育園園児の送迎バス(園バス)車内での置き去り事故も発生している。その要因について、送迎担当者の50%以上が人手不足を指摘し、現場からは置き去り検知システムの導入要望も聞かれるが、運行管理者とは温度差が見られる。

自動車内装材を取扱う複合型専門商社の三洋貿易は、車内置き去りの潜在リスクを把握することを目的に、全国の幼稚園・保育園で送迎を担当する267名と、子どもを乗せて車を運転するドライバー2652名を対象として実態調査を実施した。本稿では園バス送迎担当者に対して行なわれた調査について説明する。

日本においては「子どもの車内置き去り」の現状や潜在リスクは十分に可視化されていない。米国の「Kids And Cars.org」によると、自動車内に取り残された子どもが熱中症で亡くなる事故のうち、5割以上が無意識の置き忘れだという。三洋貿易では、育児に関わる人々の負担増加により、意図せずに子どもを車内に置き去りにしてしまう可能性があると考え、実態調査を独自に実施した。

調査結果から、事故につながる行動の認識が不足していること、育児に関わる人へ負担が集中している可能性などが明らかになった。

調査結果概要

1. ここ1年間で送迎バスに子どもを残す経験をしたことがあるか質問したところ、直近1年間で15人が「送迎バスに園児を残したまま車を離れた(送迎バスの車内を園児だけにした)」と回答した。さらに、そのうち3人は園児を車内に残していることを「認識していなかった」と回答した。

2. これまでに園児を車内に残したことがあると回答した21名に、車内に子どもを残してヒヤリとした経験があるか質問したところ、5名(全回答者267名の約2%)に熱中症とみられる症状があった。

3. 車内に園児だけが残されることがなぜ起こると思うか質問したところ、送迎バス運転手、送迎バス添乗員、送迎バス運行管理者の全ての属性で、65%以上が「送迎担当者や職員の意識が低いから」と回答した。いっぽうで、送迎バス添乗員の回答では、「人手不足だから」(56.3%)、「登園確認などのルールが形骸化しているから」(45.7%)といった理由が、他の2つの属性と比較して多く見られた。

4. 園児の車内置き去りを検知し防止するシステムがあれば、送迎バスに導入してほしいか質問したところ、「まあ導入してほしい」「とても導入してほしい」の合計が全体で80.2%を占めた。しかし、回答者の属性別に見ると、送迎バス運転手では77.3%、送迎バス添乗員では84.8%と、現場担当者からは高いニーズが伺えるいっぽうで、送迎バス運行管理者では50%に止まった。

園児の車内置き去りを検知し防止するシステムがあれば、送迎バスに導入してほしいか。園児の車内置き去りを検知し防止するシステムがあれば、送迎バスに導入してほしいか。

NPO法人Safe Kids Japan 理事長の山中龍宏先生は「わが国では、子どもの事故が起きると、保護者の不注意や個人の責任に帰結しがちで、人は誰でも間違えるという前提のもと、仕組みなども活用しながら事故を予防するという認識が社会に行き渡っていない。こうした意識のあり方が、仕組みの導入においても円滑な浸透を阻んでる。車内置き去り検知装置についても、すでに欧州では搭載の義務化が進みつつある」と指摘する。

そして「子どもの事故は予測でき予防可能であることが多く、その予防には社会全体で取り組む必要がある。法律が整備されるまでには時間がかかるので、社会的な議論の高まりも必要だ。車内置き去りによる事故を無くすためには、子どもを車内に残すことのリスクを、保護者だけではなく全ての人が認識するとともに、保護者が気を付ければ済むのだという社会通念の変容が欠かせない」とコメント。

三洋貿易では、車内置き去りの予防について個人の意識に任せるのではなく、センサーなどを活用した見守りの仕組みの構築が必要であり、保育園・幼稚園事業者に対しては、補助金などの整備も望ましいと考える。

調査概要
●調査方法:オンライン定量調査
●調査期間:2022月5日19~24日
●調査対象:20~69歳の幼稚園・保育園バスの送迎担当者(運転手、送迎担当の教諭、送迎バス運営管
理者など)
●サンプル数:全国267名


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《高木啓》

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