【日産 エクストレイル 新型】電動4駆の e-4ORCE に期待できるわけ

日産エクストレイル新型
日産エクストレイル新型全 12 枚

日産自動車が7月20日に発表した中型SUV、第4世代『エクストレイル』。動力系の看板技術としているのは電動AWD(4輪駆動)の「e-4ORCE」である。

電動AWDはフロント、リア両アクスルに大出力の電気モーターを配置し、AWD状態を作り出すシステム。前後アクスルが機械的にリンクしていないので、前後輪のトルク配分は車両制御コンピュータのプログラムによって自在に制御可能というのが特徴。エクストレイルのe-4ORCEの電気モーター出力は前150kW(204ps)、後100kW(136ps)。

電動AWD自体は今日においてはそれほど珍しい技術ではなくなっている。アメリカのテスラは2014年に当時の主力モデルだった大型セダン『モデルS』に「デュアルモーター」システムを採用。今日のBEV(バッテリー式電気自動車)のAWDはほぼこの方式で、トヨタ『bZ4X』、『レクサスRZ』などもそうだ。

エクストレイルの前後軸電気モーターの合算値250kWというのはかなり強力なもので、日産のBEVではバッテリー容量66kWhの『アリア B6 e-4ORCE』と同格。エクストレイルはシリーズハイブリッドなので、最高出力はエンジンとバッテリーの合算出力150kWに制限されるが、強力なバッテリーを積めば即、高性能BEV化も可能だ。

日産は技術資料でe-4ORCEの特質の一部について触れている。普段は前輪駆動で走り、コーナー進入時にステアリングを切りはじめると駆動力を後輪主体に切り替え、コーナー脱出時には内輪にブレーキをかけることで荷重のかかっている外輪への駆動力配分を高めて効率よく加速させる。また加速時の時のプラスG、回生ブレーキのマイナスGを4輪に分散させることでスクワット(尻下がり)やノーズダイブ(鼻先下がり)を減らし、室内の揺すられを低減させる等々だ。

こうした特質は別に日産の専売特許というわけではなく、電動AWD車であれば大体似たような制御を行っているのだが、興味がわくのは実車の挙動の仕上がり。筆者はエクストレイルよりも小型の電動AWD車、『ノート e-4WD』で3700km弱のロングツーリングを行ったことがある。e-4WDはe-4ORCEのような内輪と外輪の駆動力に差をつける制御をうたっていないのだが、ドライブしてみるとESP(電子制御車両安定装置)がかなり攻撃的な走りも受け付ける仕様になっていて、実際には左右輪の駆動力配分に近いことをやっていた。

日産がe-4ORCEでも謳う山岳路走行時のRWD的特性、悪天候時の直進性、スクワットやノーズダイブの小ささなどの効果は如実に体感できるものだが、それ以上に感銘を覚えたのはコーナリング時のロール特性の良さだった。横Gの発生とロールする方向の感覚的なズレが非常に小さく、山岳路を良いペースで走っていても助手席や後席に乗る同乗者がストレスを覚えることがほとんどなかったのだ。

前後輪、左右輪の駆動力配分をアクティブに行うという機械的特性はシステムを構築すればどのメーカーでも作れるのだが、実際にどういう制御を行えばよりドライブが楽しいか、乗っている人が快適かという官能チューンはメーカーのノウハウがモノを言う部分。日産の電動AWDはその点が大変優れていた。エクストレイルの仕上がりが楽しみになるゆえんである。


Amazonギフト券 チャージタイプ(直接アカウントに残高追加)
¥5,000
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)

The Longest Day: The Classic Epic of D-Day (English Edition)
¥2,200
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. ホンダ N-BOX など7車種1万2653台リコール…過去の改善措置が不適切
  2. メルセデスベンツ『ウニモグ』、低床仕様登場…荷台高1200mm以下で作業効率向上
  3. スズキ初の量産EV『eビターラ』に期待の声!「リーフとどっちが安い?」など価格に注目集まる
  4. トヨタ RAV4 新型の価格は390万~630万円と予想…電動グレード体系に再編
  5. リアシートのない新型『ランドクルーザー250』発売!? 英国トヨタ工場で改造される“特別仕様”とは
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 茨城県内4エリアでBYDの大型EVバス「K8 2.0」が運行開始
  2. 中国EV「XPENG」、電動SUV2車種を改良…新電池は12分で80%充電可能
  3. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
  4. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  5. 三菱が次世代SUVを初公開、『DSTコンセプト』市販版は年内デビューへ
ランキングをもっと見る