アウディの伝説的ラリーマシン、EVになって1台限定の復活へ

アウディとケン・ブロックの最初の共同プロジェクト

WRCで活躍した「スポーツ・クワトロS1」がモチーフ

カーボン製シャシーにツインモーター+AWD搭載

アウディ S1 e-tron クワトロ・フーニトロン
アウディ S1 e-tron クワトロ・フーニトロン全 10 枚

アウディは8月8日、1台限りのEV『S1 e-tron クワトロ・フーニトロン』(Audi S1 e-tron quattro Hoonitron)を8月17日、米国カリフォルニア州で行われる「モントレー・カー・ウィーク2022」に出展すると発表した。

このEVは、ケン・ブロック氏のために製作された。アウディの伝説のラリーマシン『スポーツ・クワトロS1』をモチーフにしたEVだ。S1 e-tron クワトロ・フーニトロンは、同氏が今後数か月以内にリリースする新作映像の主役になるという。

◆アウディとケン・ブロックの最初の共同プロジェクト

アウディ・スポーツ・クワトロS1 と S1 e-tron クワトロ・フーニトロン とケン・ブロック氏アウディ・スポーツ・クワトロS1 と S1 e-tron クワトロ・フーニトロン とケン・ブロック氏

アウディは、ケン・ブロック氏とパートナーシップを結び、EVなどの電気モビリティの分野で共同プロジェクトを行う。米国出身のケン・ブロック氏は、現在53歳。2005年からラリーとラリークロスのドライバーとして活躍しており、高性能モデルを限界走行させるビデオシリーズで、世界的に有名な存在となった。

また、ケン・ブロック氏はここ数年、さまざまなEVでテストやレースを行っている。2020年にはダカールラリーの最終ステージにおいて、EVプロトタイプで3番目に速いタイムを記録した。同じ年、スウェーデンで開催された「プロジェクトE」ラリークロスシリーズの初レースにおいて、優勝を果たしている。

アウディはケン・ブロック氏と、EVの分野で協力する。最初の共同プロジェクトとして製作されたのが、ワンオフEVのS1 e-tron クワトロ・フーニトロンだ。

◆WRCで活躍した「スポーツ・クワトロS1」がモチーフ

S1 e-tron クワトロ・フーニトロン(手前)とスポーツ・クワトロS1S1 e-tron クワトロ・フーニトロン(手前)とスポーツ・クワトロS1

S1 e-tron クワトロ・フーニトロンは、アウディの伝説的ラリーマシン、スポーツ・クワトロS1をモチーフにしている。アウディは1980年、ジュネーブモーターショーで、アウディ『クワトロ』を発表した。同車でアウディは、1981年からWRC(世界ラリー選手権)に参戦。以降、「WRCはフルタイム4WDでなければ勝てない」という常識が生まれ、新たな自動車の歴史を築いた、と自負する。

スポーツ・クワトロS1は、アウディが1981年からWRCに投入したアウディ『ラリー・クワトロ』の進化形として、1984年から実戦投入された。WRCでのタイトル争いが苛烈になるにつれ、ライバルメーカーは、当時のグループBのレギュレーションの許容範囲を活用して、ラリー用にミッドシップレイアウトを含めた新設計モデルを製作するようになった。それに伴い、アウディも1984年シーズン途中に、ホイールベースを縮めてハンドリングの敏捷性を高めたスポーツ・クワトロを投入した。翌1985年シーズンには、パワーを500hpまで高めたスポーツ・クワトロS1をデビューさせた。

スポーツ・クワトロS1には、排気量2110ccの直列5気筒ガソリンターボエンジンを搭載していた。最大出力は476psを引き出す。車両重量は1090kg。0~100km/h加速3.1秒、最高速240km/hの性能を備えていた。スポーツ・クワトロS1は1986年、WRCのモンテカルロラリーにおいて、ヴァルター・ロールがドライブして優勝するなど、活躍を見せた。

◆カーボン製シャシーにツインモーター+AWD搭載

アウディ S1 e-tron クワトロ・フーニトロンアウディ S1 e-tron クワトロ・フーニトロン

S1 e-tron クワトロ・フーニトロンは、このスポーツ・クワトロS1を再解釈し、EVパワートレインを搭載する。2つの電気モーター、全輪駆動、豊かなパワー、カーボンファイバー製シャシー、FIA(国際自動車連盟)の基準を満たす安全装備を採用している。

開発は、アウディの高性能車とモータースポーツ部門のアウディスポーツが、ドイツ・ネッカーズウルムで実施した。アウディのEVスポーツ、『RS e-tron GT』の開発でのノウハウが生かされたという。

ドイツ・インゴルシュタットのアウディデザインが外装などのデザインを担当した。マーク・リヒテ氏が率いるデザインチームには、通常1年から1年半かかるデザイン工程を、4週間で完成させることが求められた。そのため、ケン・ブロック氏と連絡を取りながら、集中的に作業を進めた、としている。


《森脇稔》

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