電気バスを計218台投入! みちのりHDなど5社、効率の良い電動化社会へ連携

みちのりHDと東京電力HDがタッグを組んで、運行とエネルギーを一体的に管理するために新たに開発されたのが「バスEMS」
みちのりHDと東京電力HDがタッグを組んで、運行とエネルギーを一体的に管理するために新たに開発されたのが「バスEMS」全 8 枚

みちのりホールディングス(HD)と東京電力ホールディングス(HD)は7月19日、計218台もの電気バスを導入し、電気バスの運行と地域エネルギーの一体管理を実現する実証事業を発表。8月9日には記者会見を開催し、その概要について説明した。

◆バスEMSにより、電気バスながらディーゼル車並みのコストを実現

実証事業に参画するのは、事業の核となる、みちのりHDと東京電力HDと、運行事業者の関東自動車(栃木県宇都宮市)、福島交通(福島県福島市)、茨城交通(茨城県水戸市)の5社。事業そのものは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が 2022 年度より実施する「グリーンイノベーション基金事業/スマートモビリティ社会の構築」プロジェクトに採択されたものとなっている。

具体的には、みちのり HD がバスの運行管理最適化のノウハウ提供とシステムを、東電 HD がエネルギー需給調整マネジメントシステムを担い、両社で一体となった電気バス向けエネルギーマネジメントシステム(以下、バス EMS)を開発する。そして、開発したバスEMS を関東自動車、福島交通、茨城交通が導入を予定する電気バス 218 台を使って技術検証するとともに、電気バス導入の経済性および実用化に向けた検証を行うとしている。

なお、みちのりHDによれば、バス EMS をここまで大規模なフリートに適用する取り組みは国内初のことだという。

会見の中で、みちのりHDの松本CEOは、「カーボンニュートラル(以下:CN)が叫ばれる中、バスの電動化はそれを達成する上で重要な取り組みとなる。しかし、ディーゼルのバスと比較すれば20年間で2倍近いコストがかかるという現実もある。そこで重要なのがエネルギーマネジメント(EMS)で、この運用によりディーゼルのバスと同等のコストにすることができる」と説明した。

これまでは充電時間を抑えるために大容量バッテリーを搭載することが重視されていたが、これだと車両価格が高くなる上に、複数の車両が運行時間外の夜間に充電を行えば電力インフラに大きな負担となってしまう。そこでバスEMSが生きてくる。バスの運行と充電を同時に管理することで、必要最小限の充電で運行が可能となり、結果として大容量バッテリーが不要となって車両コストも抑えられるというわけだ。

◆電気バスが調整役となることで、再エネの利用促進にもつながる

見逃せないのは、この充電に再生可能エネルギーの活用を想定していることだ。太陽光を中心とする再エネは昼間に出力のピークを迎えるため、どうしてもその電力は余剰となってしまう。そこで大量の電気バスがこの受け皿となることで、そうした電力需給の調整役として機能させられる。また、電力需要逼迫時には、需要の高まる時間帯での充電を避けつつ、逆に電気バスのバッテリーのフリートから電力を供給することも想定する。それは地域の再エネ利用促進にもつながるとも言えるだろう。

東電HDの長崎(異体字)桃子常務執行役員は、この取り組みについて「充電をする電力について、再エネを最大限活用できると同時に、電力コストの最小化も実現できる。さらに再エネの地産地消につながり、カーボンニュートラル社会の原動力になる」と話す。

注目なのは実証実験で投入される電気バスの台数だ。関東自動車が158台、福島交通と茨城交通がそれぞれ30台を計画し、3社合計で218台にもなる。ここまで大規模な電気バスの投入計画は日本では初めてのことだ。中でも注目なのが関東自動車で、158台は宇都宮市内で運行中のバスをほぼ総入れ替えする規模となる。

今後の計画では2024年までに、バスEMSを構成する要素技術を開発して10台程度を導入してテストを開始。その後、25~27年において要素技術をシステムと統合し、運用拠点において年40台ペースで投入していく。そして、28年~30年にかけては大規模/高速化を経た実装時期とし、たとえば宇都宮市内全体に電気バスを導入し、多様な運行環境でバスEMSの稼働実績を蓄積していくことにしている。

松本CEOは「大規模な電気バスのフリートの運行管理において知見を持つ、みちのりグループと、エネルギーの知見を持つ東京HDがコンソーシアムを組んで開発することで、この取り組みが実現した」と述べた。もともと電気自動車は決められたエリア内で走行する業務用途において親和性が高いとされてきた。今回の実証実験は、その特徴を高級交通機関として具体化した注目の取り組みと言え、日本の公共機関における電動化が進むきっかけになることを期待したい。


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《会田肇》

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