超上級な“方法論”がある!?[スピーカーの鳴らし方・大研究]

「フロント4ウェイ」が実践されたオーディカーの一例(製作ショップ:サウンドフリークス<岩手県>)。
「フロント4ウェイ」が実践されたオーディカーの一例(製作ショップ:サウンドフリークス<岩手県>)。全 5 枚

カーオーディオでは、取り付け方やシステムデザインを煮詰めることでもスピーカーの鳴り方が変わってくる。当特集では、それら「鳴らし方」のポイントを1つ1つ解説してきた。今回はその最終回として、超上級な方法論を紹介する。

「プロセッサー」が高性能化したことで、異次元のスピーカーレイアウトが可能に!?

今回紹介するのは、「フロント4ウェイ」という鳴らし方だ。ちなみにスタンダードなスピーカーレイアウトは「フロント2ウェイ+サブウーファー」だが、マニアの間では「フロント3ウェイ+サブウーファー」が採用されることが多い。しかし近頃はその上を行く「フロント4ウェイ+サブウーファー」というスピーカーレイアウトが成されたクルマを、サウンドコンテストの会場で見かける機会が増えてきた。

その背景には、サウンドチューニングをつかさどるユニット「プロセッサー」の高性能化の進行がある。コントロールできるch数を多く持つモデルがいくつか登場し、「それならそれを使いこなそう」、そう考えるインストーラーや愛好家が現れつつあるのだ。

とはいえ、「フロント4ウェイ」の実行は簡単ではない。簡単ではないポイントは3つある。まず1つ目は「取り付けに手間がかかること」だ。「フロント3ウェイ」でも取り付け作業は複雑化するが、そこにもう1つスピーカーユニットが足されるのだからそれもそのはずだ。まず取り付けスペースを確保するのが難しく、当然ながらカスタムインストールが成させるのでピラー等のパネルの改造が必要となる。結果、取り付け工賃も相応にかさむ。

そして簡単ではないポイントの2つ目は、「サウンドチューニングが複雑化すること」だ。例えば信号の帯域分割を行う「クロスオーバー機能」の設定では、考えなければならないことが増え各スピーカーのサウンドを上手く繋げることが難しくなる。他の機能についてもケアすべき項目が増加する。

「フロント4ウェイ」が実践されたオーディカーの一例(製作ショップ:サウンドフリークス<岩手県>)。「フロント4ウェイ」が実践されたオーディカーの一例(製作ショップ:サウンドフリークス<岩手県>)。

パワーアンプのch数が多く必要となり、コストもかさむ…。

簡単ではないポイントの3つ目は、「パワーアンプの必要ch数が増えること」だ。というのも現代のハイエンドカーオーディオの世界では、「マルチアンプシステム」が組まれることが当たり前になっている。「マルチアンプシステム」とは、1つのスピーカーユニットにパワーアンプの1chずつをあてがう方式のことをいうのだが、「フロント4ウェイ+サブウーファー」というスピーカーレイアウトを敷く場合には、パワーアンプのch数は計「10」が必要となる(サブウーファーをブリッジ接続したとき)。

なおこれによるコストアップは実は、結構大きくなりがちだ。特にハイエンドシステムが構成される場合にはハイグレードなパワーアンプが使われることが多く、そしてパワーアンプの台数が増えれば搭載するスペースも取られるし、必要なケーブルの本数も増える。そして取り付け工賃ももちろんかさむ。

しかし、もろもろが成功すると音的には大きなメリットが得られる。ちなみに、「フロント4ウェイ」が実践される場合、中音を再生するスコーカー(ミッドレンジ)と、低音を再生するミッドウーファーの間に、「ミッドロー」が足されることが多い。

「フロント4ウェイ」が実践されたオーディカーの一例(製作ショップ:サウンドフリークス<岩手県>)。「フロント4ウェイ」が実践されたオーディカーの一例(製作ショップ:サウンドフリークス<岩手県>)。

ホームオーディオのリスニング環境に近づく!?

そうすることで、以下のような利点が生まれる。利点は主に2つある。まず1つ目は「ミッドウーファーの負担を減らせること」だ。ちなみに「フロント2ウェイ」のミッドウーファーは広範囲な音域の再生を担当することとなるのだが、そこから「フロント3ウェイ」へと変更するとかなりの負担減が果たされる。そしてさらにもう1つ「ミッドロー」を足すと負担は一層軽減され得意な低音の再生のみに集中でき、よりクリアな低音再生が行える。

2つ目の利点は、「中低音がある程度高い位置から聴こえてくること」だ。中域の下の方の音をミッドウーファーで鳴らす場合にはそれが足元から聴こえてくるが、「フロント4ウェイ」にすれば中域の低めの音も高い位置に取り付けられたスピーカーから聴こえてくる。いわば、ホームオーディオのリスニング環境に近づく。カーオーディオだからこその不利要因が軽減されるのだ。

ちなみに、「フロント4ウェイ」を実践した車両は、サウンドコンテストで一定の成果を挙げている。なので、これに注目するサウンドコンペティターは増えつつある。

かくして「フロント4ウェイ」は手を出しづらい高度な方法論ではあるものの、理想のサウンドを徹底的に追求したくなったときには選択肢として浮上する。覚えておこう。


《太田祥三》

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