トヨタ「メガウェブ」跡地開発:スポーツとビジネスに特化したミニ「ウーブンシティ」

TOKYO A-ARENA PROJECT
TOKYO A-ARENA PROJECT全 14 枚

トヨタ自動車以下、トヨタ不動産、トヨタアルバルク東京の3社が29日に発表した「TOKYO A-ARENA PROJECT」は、バスケットボールの聖地を目指したアリーナをコアとしながら、モビリティや地域ビジネスの活性化を目指すプロジェクトだ。

施設詳細とトークショー

同プロジェクトはメガウェブ跡地の再開発プロジェクトという位置付けだが、トヨタ車のショールームや新型車の試乗といった機能はなくなり、代わりにスポーツを軸とした文化・エンタメの他、モビリティやサスティナビリティによる社会貢献を目指すという。

記者発表では「リーマンショック、リコール問題など困難に接したときもトヨタの運動部は我々に勇気を与えてくれた。その恩返しとして次世代型のアリーナを作る」(トヨタ自動車の早川茂取締役副会長)としている。アリーナはバスケットコートをメインに観客席や各種の演出機能も備える予定。一義的にはバスケットボールのプロリーグ「トヨタアルバルク」のホームアリーナとして機能させるが、アリーナはメインとサブの2つ。もうひとつアルバルク棟の3つを合わせて多目的な施設となる。建物の屋上にはファミリーパークとスポーツパークが設けられ、屋外イベントや各種アウトドアスポーツにも利用可能とする。

メガウェブの再開発は地域のまちづくり協議会とも連携している。パレットタウン再開発とともに地域活性化の一端を担う。施設はトヨタ車の記者発表やイベントのほか、国際会議や展示会のニーズも視野に入れている。スポーツもバスケットボール以外にも門戸を解放し各種団体やプロモーターによる利用も呼びかける。同プロジェクトでは施設やイベントのネーミングライツのライセンスもする。これらは、ビジネス面の取り組みとなる。

ちなみに、発表会のトークショーに呼ばれた日本バレーボール協会会長でトヨタビーチバレー部ゼネラルマネージャである川合俊一氏は「バレーボールの国際大会と、搬入口を広くしてくれれば(砂の搬入ができるので)、インドアビーチバレーを開催したい」といい、同じくトークショーに呼ばれたトヨタ自動車女子バスケットボール部アンテロープスの三好南穂サポートコーチは「女子バスケの試合も開催してほしい」とした。これに対して林邦彦氏(トヨタアルバルク東京 代表取締役社長)は「ぜひ実現したい」と前向きな回答だった。

モビリティ関連では、『e-Palette』を利用したキッチンカーや店舗、サービスブースを活用し、「来るたびに施設のサービスや店舗が変わる」(早川氏)コンセプトが披露された。プレゼンスライドでは、施設内を移動するe-Paletteも描かれていた。東京オリンピックのような施設内の無人バス、移動サービスが行われるかもしれない。広報部に聞いたところ、できれば最寄駅からの観客輸送や移動にも次世代モビリティサービスを展開したいという。お台場地域は各種自動運転、無人タクシーの実験などもさかんに行われているエリアだ。社会実装やビジネス応用としての期待もかかる。

プロジェクトは始まったばかりで、施設の詳細設計はこれからだという。まずはコンセプトを発表して賛同するパートナー、スポンサーを募るのが今回の記者発表の狙いのひとつだ。パートナーは、スポーツテックのベンチャーおよびスタートアップ、IT企業の他、スポーツ大会のプロモーター、イベントやカンファレンス、展示会主催者、そしてスポンサーなどだ。音響や映像関係の設備にも投資するというので、企業のプライベートカンファレンスや製品発表などにもいいかもしれない。

TOKYO A-ARENA PROJECTは、次世代技術の実験、地域貢献という要素があり、さながらミニ「ウーブンシティ」の様相を見せている。「ウーブン」との違いは、スポーツイベントや興行、カンファレンスなど実ビジネスを意識したものにになっている点だろう。自動車産業は、製品製造を軸としながらも確実に関連領域を広げている。それがモビリティカンパニーになるというトヨタの戦略にも現れているわけで、今回の取り組みもその一環だといえる。

その一方で、周辺には東京国際展示場(ビッグサイト)があり、お台場周辺はイベントスペースも少なくない。競技場やアリーナ施設も周辺および都内には東京オリンピックのレガシーが事後活用に苦慮している実態もある。収容人数1万人規模のアリーナは少なく、確保が困難なので競技関係者にとっては朗報だが、その中で、モビリティサービスや新しい場の提供での差別化と地域貢献が課題ではある。オープンは2025年というのでこの3年間の市場動向や社会情勢をみながらのプロジェクトだ。

だが、国内自動車メーカーでこれほどのプロジェクトや事業を多角的に行えるのはトヨタくらいだ。今後の展開に期待したい。


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《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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