[キーワードから読み解くカーオーディオ]スピーカーが音を鳴らせるのはなぜ?

市販カースピーカーの一例(シンフォニ/クワトロリゴ・アパッシオナート)。
市販カースピーカーの一例(シンフォニ/クワトロリゴ・アパッシオナート)。全 3 枚

カーオーディオを趣味として楽しもうとするとき、専門用語の存在が“壁”となることがある。当連載ではその“壁”を切り崩すべく、用語解説を行っている。今回は、スピーカーの各部の名称について説明しながら、その仕組みを解き明かす。

◆スピーカーは発明された約100年前から、基本的な仕組みを変えてはいない…。

スピーカーは、今から約100年前に発明された。そして以後、その仕組みをほぼ変えていない。その意味では、実に“ローテク”な工業製品だ。

さて、その仕組みはどのようになっているのかというと……。

心臓部となるのは、「磁気回路」だ。ここが音を生み出す元となる。構造は大体以下のとおりだ。中央部分に筒状の「ボビン」と呼ばれるパーツが入っていて、それには導線が巻かれている。その状態の「ボビン」は「ボイスコイル」と呼ばれている。そしてその内側、または周囲に『マグネット」が仕込まれている。ちなみに『ボイスコイル」の内側に「マグネット」が仕込まれている「磁気回路」のことは「内磁型」と呼ばれていて、外側に「マグネット」が仕込まれている「磁気回路」のことは「外磁型」と称される。

で、その「ボイスコイル」に「パワーアンプ」にて増幅された音楽信号(つまりは電気)が流されると、「フレミングの左手の法則」に従って動力が発生し、「ボイスコイル」が前後に動く。その動きが「振動板」に伝わり(「ボイスコイル」の一部と「振動板」とは繋がっている)「振動板」が前後に動く。こうして空気が振動し音が伝わるというわけだ。

市販カースピーカーの一例(シンフォニ/クワトロリゴ・アパッシオナート)。市販カースピーカーの一例(シンフォニ/クワトロリゴ・アパッシオナート)。

◆仕組みはシンプル。しかし細部には最新技術が多々注入!

かくして、仕組みは至ってシンプルだ。しかし現代スピーカーには、部材や作り方といった細かな部分にさまざまな最新技術が注入されている。例えば「ボイスコイル」の導線の材質、線の形状、巻き方等々に工夫が凝らされている。そうすることで、電気信号を音に変えるときに情報のロスが起きないように、つまり原音に忠実なサウンドが再現されるように熟慮して設計され、組み上げられている。その意味では現代スピーカーは、“ハイテク”な工業製品であるという側面も持つ。

ところで「振動板」のことは、英語で「ダイヤフラム」と呼ばれることもある。そしてその中央には「ボイスコイル」が取り付けられている芯材のパーツのフタとなる「センターキャップ」が装着されていて、「振動板」の外周部分には「振動板」と「フレーム」とを繋ぐ「エッジ」と呼ばれる部材が装備されている。

で、この「振動板」にも、最新スピーカーにはさまざまな先端技術が投影されている。よりよい「振動板」を作りたいからだ。

ちなみに「振動板」には以下のような3つの性質が求められる。軽さ、硬さ、適度な内部損失、この3つだ。これらを高次元でバランスさせるべく、さまざまな技術が注入されることとなる。

市販カースピーカーの一例(シンフォニ/クワトロリゴ・アパッシオナート)。市販カースピーカーの一例(シンフォニ/クワトロリゴ・アパッシオナート)。

◆軽さと硬さと適度な内部損失は、“トレードオフ”の関係にある…。

ところで軽さと硬さと適度な内部損失は、相反する性質だ。つまりこれらは、あちらを立てればこちらが立たなくなる、いわゆる“トレードオフ”の関係にある。なのでこれら3要素を“総取り”するには、高度な技術が必要となる。

もう少し踏み込んで説明しよう。「振動板」は、軽ければ軽いほどレスポンス良く動ける。そして硬ければ硬いほど乱れなく空気を震わせられる。さらには、素材自体の響きがしにくい方が良い。例えば指で叩いたときにカンカンと音が良く響く素材は「振動板」には向いていない。その響きが再生音に乗るからだ。

例えば紙は、軽くて素材自体の響きも少ないので「振動板」素材として向いている。しかし、あまり硬くはない。その点ではビハインドがある。対してアルミは、ある程度軽く強度も高い。しかし、他の「振動板」素材と比べると部材特有の響きを発しやすい。

ちなみに、ダイヤモンドやベリリウムやボロンといった希少素材は、先述した3要素を比較的に高次元でバランスさせられている。しかし、これらを用いると価格は必然的に高くなる。そして加工も難しい。

なお、相反する3要素をバランスさせるべく、複数の素材が用いられることも少なくない。または、構造にこだわることで性能が上げられることもある。

今回は以上だ。次回もスピーカーに関連した専門用語の解説を続行する。お楽しみに。


《太田祥三》

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