ファーストカーもセカンドカーもロータスになる…リージョナルディレクター[インタビュー]

ロータスアジアパシフィックミドルイーストのリージョナルディレクターであるダン・バルマーさん(右)とエルシーアイブランドマネージャーのジャスティン・ガーディナーさん(左)
ロータスアジアパシフィックミドルイーストのリージョナルディレクターであるダン・バルマーさん(右)とエルシーアイブランドマネージャーのジャスティン・ガーディナーさん(左)全 9 枚

ロータスカーズ日本正規販売輸入総代理店のエルシーアイは富士スピードウェイにおいて、ロータスデイ2022を開催。そこに本国ロータスよりアジアパシフィックミドルイーストのリージョナルディレクターであるダン・バルマー氏が来日したのを機に、日本市場の特徴やロータスの今後などについて話を聞いた。

ロータスアジアパシフィックミドルイーストのリージョナルディレクターであるダン・バルマー氏ロータスアジアパシフィックミドルイーストのリージョナルディレクターであるダン・バルマー氏

◆イギリスと日本は似ている

---:近年の日本では、東京オートサロン2022で『エミーラ』をいち早くお披露目したり、ロータスデイを開催するなど積極的に日本市場で活動しているように感じます。日本市場はどのような位置付けなのでしょう。

ダン・バルマーさん(以下敬称略):私の管轄するエリアはイギリス、ヨーロッパ、北米、中国を別にして、中東からニュージーランドまで結構広いエリアを担当しています。その中で一番大きいのが間違いなく日本ですし、これからも特にスポーツカーに関しては、アジアパシフィックの中で日本は1番大事な市場であり続けるでしょう。

---:では日本市場の特徴はどのようなものでしょうか。

バルマー:日本とイギリスは道路が狭いところも含めてとても似ています。それから週末の過ごし方など、暮らしぶりも似ていると感じていますし、ドライビングの楽しみ方も似ていますよね。また、日本も、自動車カルチャーがとても強い国です。私自身の話をすれば1990年代にはローバーにいまして、そこでイギリスらしさが詰まった新型の小型車を発表しましたが、その時も日本は主要市場でした。この経験はロータスに来てからも生かされています。このエミーラは、さらにモダンで、日常使いができるのスポーツカーであり、そこが日本での成功のポイントに繋がると思っています。

エルシーアイブランドマネージャーのジャスティン・ガーディナーさん(以下敬称略):私も全く同じ意見です。世界は大きいですがなぜか日本とイギリスはとてもよく似ているんです。彼(ダン・バルマーさん)が管轄しているマーケットの中で一番似ているのはイギリスと日本でしょう。

日本人のオーナー達はドライビングの楽しみは大事にしますが馬力一辺倒ではなく、ハンドリングなど一般道でも楽しいことを重要視しますよね。そこもイギリスと日本が似ているところです。ですから日本にはロータスのファンがいっぱいいて、その点ではアドバンテージがあると思っています。彼(ダン・バルマーさん)はいままでたくさんの自動車メーカーで働いてきました。アストンマーティン、ロールスロイス、ローバーです。90年代彼はローバーにいて、最後の1.3リットルのミニを出しました。あれは日本のために作ったものです。他のマーケットでは古くて小さくて、安全装備がほとんどないクルマでしたので評判は良くありませんでした。その結果、受け入れられたのはイギリスと日本だけだったのです。ですがイギリスだけでしたら採算が合わなくて実現できなかったでしょうね。そういうところも日本は他のマーケットとちょっと違います。我々ロータスも含めイギリスの車は日本で人気があるのです。

◆“E”つながりで

---:さて今回、エミーラの市販モデルが公開されました。そもそもエミーラという車名の由来、意味はどういうものなのでしょうか。

ロータス エミーラ V6ロータス エミーラ V6

バルマー:最初は狙ったわけではありませんが、『イレブン(ELEVEN)』から『エラン(ELAN)』、『エリーゼ『ELISE』などEが続きました。そこで、エミーラ(EMIRA)は中東ではクイーン、プリンセスの意味を持っていますので、このクルマに相応しいと思い名付けたのです。つまり今回は“E”で始めたかったのです。

---:現在、為替レートの変動などで車両価格の改定を耳にします。このエミーラについてはいかがでしょう。

バルマー:為替は大きな変化がありましたし、他の自動車メーカーはすぐに値上に踏み切りました。しかし我々は1年以上、1年半ぐらい納期が先のお客様が多分100人ぐらいいらっしゃいます。皆さんデポジットを払ってエミーラを待っているんです。その人たちに値段を上げてご請求するのはちょっと酷いですよね。だからそれはできません。ただし、このままこの値段は続けられませんので、エルシーアイとしては来年1月ごろから新しい値段になるでしょう。その少し前にこの日から値段が上がりますよというアナウンスをします。でも、そうすると、12月中にすごくオーダーが入ってきて、さらに納期が伸びてしまいます。だからとても難しいところなんです。でも値上げは致し方ないと思っています。

---:また、自動車業界は半導体などで生産に遅れが生じています。それはエミーラでも同様だと思いますが、具体的には現在どのような状況ですか。

バルマー:確かにいろいろなものが足りませんし、他の自動車メーカーでもそういう問題があります。そしてロータスも、同じような部品を使っていますので、およそ半年以上遅れています。本当はエミーラも半年前には販売している予定でしたが、まだ1台もお客様の手元に届いていないのが現状です。それでもちょっとずつ良くなっていますし、ちょうど先月から日本のためのクルマを作り始め。2週間ほど前に日本向けの1台目がラインオフしました。確かに思ったより少ないのですが、生産は開始されています。間もなく最初の2台が船に乗る予定です。

---:今回エミーラはV6モデルが発表されましたが、続いてAMGのインライン4(I4)モデルが登場するアナウンスがありました。実情来年の1月くらいになりそうというイメージでしょうか。

バルマー:本当はいますぐにでも作れるんです。しかし、V6のオーダーがまだまだ山ほどありますので、まずはこちらを先に作らなければいけません。そう考えると、来年の夏ぐらいまでは4気筒モデルは作り始められないのではないかと思っています。

---:ではV6とI4モデルとのポジションングの違いはどういったものでしょう。

バルマー: V6は3ペダルでクラッチ付きのMTですので、“ロマンティックな気持ち”になるでしょうね。あるお客様はそこを大切に思うでしょう。一方、もう少し軽くてシフトはもっと速くて新しいテクノロジーを取り入れた良いミッションとエンジンだからこそ、I4が好きな方もいる。つまりすごく分かれるのです。私が知っている限りこの間で悩んでいる人に出会ったことはありません。

---:将来的には年間7000台のエミーラを生産するというお話がありました。その場合ロータストータルとして何パーセントくらいエミーラが占めると想定していますか。

ガーディナー:来年はエミーラしかないので100%になるでしょうね(笑)。2028年にスポーツカーも含めて全てのEVがローンチされると、全世界のロータスの販売の中でスポーツカーが10%占めると予測しています。ですが日本のような市場では、SUVなどのライフスタイルビークルよりスポーツカーの割合が多いかもしれません。その中には135と呼ばれるEVスポーツカーも含まれて来るでしょう。

◆4ドアのロータス!?

---:将来の話になりましたのでお伺いしますが、そのライフスタイルビークルにはEVのセダンもあるという話があるようですが、それはどういうものでしょう。

ロータスカーズが開発中の電動モデル。2023年に登場する「タイプ133」というコードネームのEセグメントの4ドアクーペと見られるロータスカーズが開発中の電動モデル。2023年に登場する「タイプ133」というコードネームのEセグメントの4ドアクーペと見られる

 

バルマー:4ドアですが、トラディショナルなセダンではありません。EVで魅力的なのは、ガソリン車に比べてデザインの自由度がとても高いということです。EVはどんなデザインでも受け入れてくれますし、大きなイマジネーションで設計することができます。従って次世代はトラディショナルな4ドアになるわけではありません。

ガーディナー:4ドアは4ドアでも、SUVではありませんし、トラディショナルなセダンでもありません。基本EVですから、エンジン、キャビン、トランクというソリッドなデザインである必要はありませんよね。ですからSUVではない4ドアといういい方が近いんだと思います。

---:ではロータスが4ドアのライフスタイルビークルをあえてやる意味とはなんでしょう。

バルマー:ロータスはさらにスポーツカーを生み出すべきであり、同時にパフォーマンスカーであるべきです。それは2ドアでも4ドアでも同じです。4ドアであってもスポーツカー以上のものを作るのがロータスのビジネスだと思っています。ハイパーSUVやさらにスポーティな4ドアのようなパフォーマンスカーを作ることは、ロータスのブランドやデザイナーにとってチャレンジングです。結果的には将来に向けての私たちのチャレンジに繋がっていくのです。

ガーディナー:スポーツカーはパフォーマンスカーというジャンルのうちのひとつと考えてください。つまりスポーツカーだけでロータスは生きてはいけませんし、パフォーマンスカーでないものは、ロータスは作りません。ですからもう少しジャンルを広げて、パフォーマンスカー全体でもっとたくさんの種類のものを作らなければいけないのです。

バルマー:ヴィジョン18という戦略は5年前にロータス70周年の際に決めたことです。その時期は年間1500台も作ってないんですね。でもスタッフは1500人いました。つまり年間1人1台と、どう見ても計算が合いませんでした(笑)。当時、ロータスは趣味のクルマを作っていましたが、趣味のクルマのみを作り続けるのでは会社は成り立ちません。ですから、これからエミーラやEVを作るのです。そのEVではまずライフスタイルのクルマを何台か出していきます。しかし、エリーゼや『エキシージ』を忘れているわけではありません。まずはSUVなどを出したあと、将来は軽くて楽しいクルマを忘れずに大切にしていきます。

また、今年の夏に向けてアルピーヌと次世代のEVスポーツカーなどを共同開発します。ロータスのノウハウで2つのクルマを出す予定です。

それから、ロータスだけ乗っているお客様はなかなかいませんよね。でも今後は、ファミリーカーでエミーラやもしかしたらSUVかもしれませんが、それとエリーゼやエキシージという組み合わせが可能になります。これまではブランドで考えるともったいなかったんですね。ロータスプラスもう1台ではなくて、ロータス2台をガレージに入れてください。それがこれからの考え方です。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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