ホンダ・ソニー連合のEV戦略は市場にインパクトを与えるか

代表取締役会長兼CEOの水野泰秀氏(右)と代表取締役社長兼COOの川西泉氏(左)(「ソニー・ホンダモビリティ」設立発表会)
代表取締役会長兼CEOの水野泰秀氏(右)と代表取締役社長兼COOの川西泉氏(左)(「ソニー・ホンダモビリティ」設立発表会)全 8 枚

ホンダとソニーグループ、日本のベンチャーの先駆けである両社が電気自動車(EV)事業でタッグを組んだ。

両社が折半出資で、EV事業を共同で展開する新会社「ソニー・ホンダモビリティ」(SHM)を9月28日付で設立。設立後初の10月13日の記者会見で発表した計画によると、生産はホンダの米オハイオ工場で行い、2025年にオンラインで第一弾商品の受注を開始。2026年春から北米、同年後半から日本で納車を予定する。さらに、欧州などでの販売拡大も検討しているという。

現時点では、商品の詳細はベールに包まれたまま。SHMは2023年1月4日、米ラスベガスで開催予定の国際テクノロジー見本市「CES2023」で詳細を公開することを示唆しており、否応なく注目度は高まっている。

一気に加速したソニーの動き

ソニーのEV事業への参入が注目を集めたのは、EVコンセプトカーとしてスポーツセダン型の『VISION-S 01』を出展した2020年のCSE(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)においてだった。

そして2022年に入り、ソニーのEV事業に向けた動きは一気に加速した。1月のCSE 2022の場で、SUV型EVコンセプトカー『VISION-S 02』を出展するとともに、吉田憲一郎CEOがモビリティ市場への参入方針を表明。その場において、吉田氏は「過去10年で人々の生活を変えたのはスマートフォン、モバイルで、次の10年にはモビリティに変わる」と説明している。

3月4日には、ソニーとホンダが「モビリティ分野における戦略的提携」に向けて基本合意したことを発表した。その内容は、「高付加価値のエレクトリック・ビークル(EV)の販売とモビリティ向けサービスの提供を行う新会社の設立」というものだった。その後、6月の設立に関する合弁契約、9月のSFM設立、10月の記者会見へと、とにかくスピードの速さが目を引いた。

ホンダから新会社に参画した水野康秀会長兼最高責任者は、SHMが提供する新型車のコンセプトを「3A」に集約。すなわち、Autonomy=進化する自律性、Augmentation=身体・時空間の拡張、Affinity=人との協調・社会との共生で、「この3Aを実現する最新のテクノロジーを投入していく」とした。

現時点では、ソニーのコンテンツを走行中に楽しむことができる、レベル3、またはレベル2+の自動運転機能を搭載した商品と想定されている。

EV事業は両社の株価の起爆剤になるか

10月13日12時28分、大手経済紙のオンラインニュースでSHMの計画の第一報が流れ、東京株式市場でホンダの株価は4日ぶりに反発した。しかし、肝心なのは今後の動きだ。それというのも、マーケットで主役の一角を担い続けていた自動車株全体が、投資対象として傍流になっている感がぬぐえないからだ。

従来、外国為替市場における円安の進行は、円安→為替差益発生→収益拡大、という構図で、自動車株の買い材料となってきた。2016年8月から年末にかけて円相場が1ドル=100円から118円水準に下落した局面で、業種別日経平均「自動車」はおよそ3割上昇。同時期の日経平均株価の上昇率18%を大幅に上回った。

しかし、今回の円安局面は様相を異にする。円相場は10月20日に1ドル=150円台と32年ぶりの安値水準に下落したが、主要自動車7社の時価総額は8月末と比較して約3兆7000億円減少。ホンダの株価は、8月末の年初来高値3755円から10月27日の終値は3301円と12%下落している。今回の円安局面においては、自動車株が円安メリットで買われるという経験則が通用しない状況となっているのだ。


《山口邦夫》

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