運輸安全委員会は12月1日、近畿日本鉄道(近鉄)名古屋線で2021年11月23日に発生した車両障害について、その調査結果を公表した。
この車両障害は、近鉄名古屋18時30分発大阪難波行きの特急(21000系『アーバンライナーPlus』6両編成)が伊勢朝日駅(三重県朝日町)付近を走行中に、最後部1号車左側の折戸1カ所が1cm程度開いていたもので、重大インシデントに認定されている。
運輸安全委員会では原因について「折戸回転軸の軸部と同板部間の溶接が破断したために、戸閉機械で生じた押付力が伝わらず外力が作用すれば折戸が動く状態となっていたところに、高速走行時の風圧や車体の動揺及び振動による力が加わり、その力が開扉抵抗を上回ったことから、折戸が動き、開扉したことにより発生したと考えられる」としており、溶接の破断については、設計強度に問題はないものの、設計図面どおりに溶接されずに不良が発生し、強度不足が生じていたと推定。溶接箇所が折戸の扉骨組みや外板、化粧板に覆われていたため、不良箇所を目視できなかったことも一因としている。

ただし、設計図面どおりに溶接されなかった点については、折戸の製作から長期間が経過していること、製作当時の資料がほとんど残されていなかったこと、溶接した会社が廃業していることから、詳細を明らかにできなかったという。
調査結果を受けて運輸安全委員会では、再発防止策として全般検査の際に溶接量を増やして強度を上げること、すべての溶接箇所に対して磁粉探傷検査を行ない、補修や交換のみならず、原因の調査や対策も講じることを挙げている。

