クルマには各部に樹脂パーツが用いられてる。しかし割れや欠けが起きてしまうことも多い。しかも力の掛かる部分の補修は難しそう。そこで今回は手軽に行える樹脂パーツの補修について紹介した。
樹脂パーツは力が加わると比較的容易に折れたり割れたりしてしまう。内張りなどを固定しているツメなどもそのひとつ。根本部分から脱着できて交換可能なツメも多いのでその場合はすぐさま交換すればリペアは完了する。このように部分によっては脱着する際にツメは壊れる前提で交換部品として用意されている場合も多い。
しかし中には破損しても交換できない形状の部品もある。そんな時には誰もが手軽に実践できるリペアを試してみよう。もっとも手軽な方法は樹脂の素材に合わせた接着剤を用意して貼り合わせる(接着する)方法だ。しかし割れた部分は面積も狭いため接着面積はわずか、そのためせっかく接着しても力が加わると簡単に折れてしまうこともある。ましてパーツを固定するツメなどの場合、脱着時に相当の力が加わるので接着剤では固定できない場合が多いのだ。
そんな時にDIYユーザーの間でもてはやされているのがアクリル樹脂を用いた補修剤(代表的なものがプラリペアと呼ばれる製品)だ。溶液とパウダー状の樹脂が別々になった補修剤で、溶液と樹脂パウダーを混ぜて割れや欠けのある部分に流し込むことで新たに樹脂が造形され、結果的に割れたパーツがひっつくという素材だ。実際に使ってみるとわかるのだが硬化するとかなりの強度があり、先に紹介したパーツ固定用のツメに使う場合、力を加えて脱着してもびくともしないほどの強度が出る(サイズや形状によって強度には差がある)。筆者も実際にいくつかのパーツ補修で実際に活用しているのでその強度は確認済みだ。この補修剤の使い方に慣れてくれば、ツメの抜き差しに影響しない部分であればアクリル樹脂を盛り上げてさらに強度を補強する手法も実施できるだろう。
さらにこの補修剤は欠けて無くなってしまったパーツの一部を新たに作って補うこともできるのも魅力。無くなった部分に合わせてプラリペアを流し込んで新たに部分を作ることができるのだ。さらにハイレベルの補修方法としては欠けてしまった部分をパテや粘土など(型取りくんと呼ばれる専用のアイテムも用意されている)を使って“型”を作ってそこに流し込めば元通りの樹脂パーツが作れるのも使えるところ。このようにアイデア次第で車内の壊れてしまって樹脂パーツを意外に簡単に復活させることができるのだ。ABS樹脂やアクリル樹脂、塩ビ、AESなどクルマで用いられている多くの樹脂パーツに用いることができるのも魅力だ。
また樹脂補修でもうひとつの注目手法がヒートリペアと呼ばれる方法だ。これは専用の器具で電熱ピンと呼ばれるホッチキスの針のような形状のピンを熱して、割れた樹脂と樹脂のつなぎ目に熱した状態で埋め込み固定する方法。電熱ピンに凹凸が付いているなど、割れた樹脂をつなぎ合わせる強度を持った形状になっているのが特徴。樹脂同士をひっつけるだけでは無く、金属製の電熱ピンを割れてしまった両者に橋渡しするので、金属部分の補強が加わるのが特徴。内張りや大きなパーツの割れを補修する場合、接着剤だけでは強度が出ない場合でも、ヒートリペアを使えばしっかりと強度が出せるのが魅力だ。ネックになるのは専用機具が必要になる点だが、DIY派のユーザーならキットを用意しておいても良いかもしれない。
また樹脂溶接といって、半田ごてを使って割れた部分の樹脂を溶かして一体化させてひっつけてしまう方法もある。先のヒートリペアとの合わせ技でさらに強度を高くすることができる。技術的にもレベルが高い手法だが、しっかり処理すれば確かな強度を出せるなど、樹脂補修のひとつの手法として憶えておくと良いだろう。
樹脂パーツの破損は諦めてしまうケースも多いのだが、適材適所の補修手法を実施すれば意外に難しくない。接着剤ではうまく補修できなくても専用のアイテムを用意して手軽に高強度な補修が可能なのがわかった。まずは愛車の目に付かない部分で試してみて、補修作業に慣れてきたら、各部の補修を実施してみると良いだろう。放置していた樹脂の割れ部分を補修していくと愛車は見違えるようにリフレッシュする。
土田康弘|ライター
デジタル音声に関わるエンジニアを経験した後に出版社の編集者に転職。バイク雑誌や4WD雑誌の編集部で勤務。独立後はカーオーディオ、クルマ、腕時計、モノ系、インテリア、アウトドア関連などのライティングを手がけ、カーオーディオ雑誌の編集長も請負。現在もカーオーディオをはじめとしたライティング中心に活動中。