技術開発先行になりがちな先進モビリティの社会実装、まちづくりと一体化した活用方法とは

第1回 モビまち研記念シンポジウム
第1回 モビまち研記念シンポジウム全 18 枚

◆モビリティの開発が目的となっている現状

現在モビリティ分野では、自動運転、MaaS、パーソナルモビリティなどの先進モビリティの社会実装に向け技術開発が加速化している。その一方でモビリティは本来、地域のもつ課題を解決するための手段であるべきところ、先進モビリティを開発することが目的化されている面があり、技術開発先行が目立っている。モビリティが本当に「人」と「まち」に有益なものとなるには、まちづくりと一体で実装していく必要がある。

12月2日、東京都内において、第1回モビまち研記念シンポジウム「先進的モビリティを活用したまちづくり」が開催された。テーマである「人とまちに有益な先進モビリティの都市実装における現状の課題と展望」について、活発な議論が行われた。今回のシンポジウムは、日建設計総合研究所と、名古屋大学 COI-NEXTマイモビリティ共創拠点が共催したもの。先進モビリティを活用したまちづくりのプラットフォーム構築を目指す活動の一環として実施された。

名古屋大学は、深刻な社会課題となっている地域の交通問題に対する提案とその実装を目指し、2022年秋に「COI-NEXT マイモビリティ共創拠点」を設置。日建設計総合研究所は、名古屋大学と協働で本共創拠点を運営支援するとともに、「モビリティとまちのミライ研究室(通称:モビまち研)」を立ち上げている。この共創拠点は産官学民で連携し、技術開発先行で進む先進モビリティを「まちの魅力」と「人々の幸福」を実現する「都市の装置」に発展させるとともに、本取り組みを全国に波及させることを目指す、としている。

◆新たなモビリティを繋ぐ交通結節点が重要

最初に、日建設計総合研究所 主席研究員 兼 名古屋大学客員教授 COI-NEXT マイモビリティ共創拠点 副プロジェクトリーダーの安藤章氏が登壇し、シンポジウムの開催挨拶と趣旨を説明した。

安藤氏は、「まちづくりの装置としてモビリティを活用することが重要だ」と強調し、2017年にアメリカのNACTO(アメリカ都市交通担当官協議会)が提唱した自動運転・MaaS社会の都市の姿である「Blue Print」を提示しながら、先進モビリティまちづくりのイメージを説明した。

安藤氏は「例えば名古屋・栄の三越の前は、久屋大通を挟んで向かい側に久屋大通公園がある。このようなエリアが、これからの自動運転時代となった場合には、向かいにある都市の公園と立体的な空間を構築し、手前のエリアをモビリティの乗降場所とオープンカフェなど人が集う空間をセットで考えることによって、都市とモビリティを組み合わせて新たな需要を作ることができる。こういった発想が重要なのではないか」と強調した。

また新たなモビリティツールとして、カーシェアやサイクルシェア、電動キックボードや超小型モビリティが出現しており、「従来型の鉄道・バスと新しいモビリティをどうつないでいくのかが重要になる。モビリティの交通結節点をうまく構築しないと利用が促進されない」とし、神奈川県横浜市小金町の事例を紹介した。


《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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