【CES 2023】メタバース・Web3と自動車産業との関係は?…日本政策投資銀行 青木崇氏[インタビュー]

【CES 2023】メタバース・Web3と自動車産業との関係は?…日本政策投資銀行 青木崇氏[インタビュー]
【CES 2023】メタバース・Web3と自動車産業との関係は?…日本政策投資銀行 青木崇氏[インタビュー]全 1 枚
日本政策投資銀行 青木崇氏は過去6回のCESを調査・取材している。今回のCES2023の見どころや主だった基調講演の発表内容から、今後のトレンドを語ってもらった。なお、ここでの内容の詳細は1月27日開催のオンラインセミナー「2023年自動車業界展望~CES2023調査報告・サプライヤーの生き残り戦略~」で聞くことができる。

今年は会場を広げメタバースやWeb3

2022年12月1日(日本時間)に、CESの主催団体であるCTA(Consumer Techinology Asociateion) CEO Gary Shapiro氏らが、各国メディアに向けてCES2023の概要を発表した。2023年のCESは会場を昨年の1.5倍に広げるという。今回のメイントピックスは3つだ。ひとつは「メタバース」、2つ目は「Web3」、そして最後は「自動車」だ。

基調講演ではBMW、ステランティスの発表、ボッシュやソニーの発表にも注目が集まった。しかし、Web3やメタバースは自動車業界に関係があるのだろうか。筆者は、業界外の動向にも目を向けるべきと考える。CASEやモビリティ革命など自動車業界で起きている変革、ビジネスモデルの変化は、業界外の動きと分離して語ることが難しくなっているからだ。

コネクテッドや自動運転、シェアリングといったトレンドは、自動車のソフトウェアシフト、サービス指向を加速させている。また、カーボンニュートラル、デジタルトランスフォーメーションやIoTおよびサイバーフィジカルシステムといったマクロな動向もある。メタバースやWeb3は、自動車業界と直接の接点はないかもしれない。しかし、CESの主要テーマになった背景は押さえておいたほうがいい。

Web3をCESが取り上げる意味

Web3は、GAFAのようなプラットフォーマー中心の「アテンションエコノミー」から、個人やDAO(Decentralized Autonomous Organization:自律分散型組織)による「リレーションエコノミー」に変わる社会のことを指す。Webの黎明期は個人が中心になる非中央集権型を目指したはずだったが、Web2.0の時代は、巨大プラットフォーマーが情報やコンテンツの集約・配信・共有を管理する中央集権型になってしまったモデルと言える。人々はプラットフォームがどのように変化していくか注目する必要がある。

個人の情報発信が可能になったとはいえ、それにはYouTubeやSNSといった管理主体の存在が必要だ。リレーショナルエコノミーでは、もっと小さい単位のサイトや個人が、特定の目的やプロジェクトに集まることで、ひとつの組織や集合体を形成する。目的やタスクドリブンで個人や機能が動的に集まる、いわば仮想的な組織、機能が市場や経済を動かす力を持つとされている。

既存のネットやサービスすべてがWeb3に移行することはないが、ピラミッド構造の巨大組織や企業は変化への対応が遅く、大量生産によるマスモデルより、水平協業モデルやパートナーシップのほうが企業価値が高まる現実もある。重厚長大な資産価値が高い製造業よりファブレスで付加価値を提供できるベンチャーが市場プレゼンスを発揮している例も増えている。

マイクロソフトが「テクノロジーガバナンス」を、ウォルマートが「多様性こそ移民国家であるアメリカの本質的な強み」を述べたのも過去のCESの基調講演だった。今回、Web3をCESが取り上げたことは、今後のビジネス環境を考える上で考慮しておくべきものだろう。

注目の基調講演は?

自動車業界の個別技術や各論では、2022年のロシア・ウクライナ情勢が、電動化やカーボンニュートラルの動きに影響を与えたのか。この点もセミナーで触れる。

クアルコムやモービルアイのような企業の動向も興味深い。CASE車両では、半導体やソフトウェアの重要性がさらに高くなっている。自動車メーカーは、これまでのサプライヤーとは違ったレベルで半導体メーカーやソフトウェア企業と接する必要がある。

以下に、注目の発表をいくつかピックアップし、その発表の意味・意義について簡単に紹介する。

実は、今回CES2023を取材するにあたり、「Web3」の可能性を深く理解するため、事前に自分に対して年末年始の宿題を課した。それは、Web3に関連する幅広い分野の書籍を合計30冊読み込んで、問題意識を明確にし取材にあたるというものである。その結果、かなり面白い考察ができたと考えている。以下、講演の骨子をご案内する。

1. 2023年のテクノロジートレンド

まず、押さえておきたいのは毎年主催団体のCTAから発表される、「今年のテクノロジートレンド」だ。今年は、6つの分野が紹介された。(1)Enterprise Tech Innovation(2)Metaverse/Web3(3)Transportation/Mobility(4)Health Technology(5)Sustainability(6)Gaming and Servicesである。今回の講演では、Metaverse/Web3とTransportation/Mobilityに焦点を当ててお伝えしたい。Metaverse/Web3を米国がどのように捉えているか、Transportation/Mobilityでは、さらに3つの注目テーマがあると紹介された。そのうちの1つが、「EVとエコシステム」であり、「エコシステム」に言及があったのは初めてと言える。ようやく気付いたかという感もあるが、メルセデスからEVの充電ステーションを大幅に増やすという発表があったり、各社からはバッテリーの改善(軽量化、持続性、環境に配慮した素材への置換など)についても発表がなされた。

2. 自動車関連企業の取り組みと将来の方向性

Bosch、Valeo、Continental、BMW、Stellantis、Mercedes-Benz、Sony Honda Mobilityからの発表をまとめてお届けする。基本的には、過去のCESからの流れを受け継いだもので、全く新しい方向性が出てきたというわけではない。既に日本でも報道がなされているので、ここでは筆者が6年間CESを取材してきて感じた変化につき焦点を当てたい。実は、ここに挙げていない「ある企業」の講演に重要なヒントがたくさん詰まっていたと感じている。その内容・理由については、講演で紹介する予定である。Web3にも通じる大きな潮流を感じる内容であり、非常に重要なメッセージである。是非、聴いていただきたい。

3. 2023年以降の重要なメガトレンドが同時進行している

今回のCESは、日本でも報道されていない重要なメガトレンドのエッセンスが散りばめられていた。これに気付いている人はまだ多くないであろう。その理由も講演でご説明したい。このメガトレンドは、企業という枠組みを超えて、そもそも資本主義とは何かという問いかけから始まるものであり、みなさん個人や子供たちの世代にも大いに関係してくるので、日本全体で議論していくべきだと思っている。すぐに正解が出るものではないが、「地球環境」や「カーボンニュートラル」を考えるのであれば、一度じっくりと腰を据えて向き合うテーマだと思う。そのヒントが「ある企業」の講演にあったので、それも踏まえご紹介する予定である。また、米国株式取引所NasdaqのAdena Friedman CEOの基調講演も紹介したい。これまで多くのCEOと面談してきた結果、共通のテーマが3つあると紹介された。驚いたのは、日本では重要テーマとして語られている「あるテーマ」が入っていなかったことだ。興味ある内容だったので、その内容も詳細にお伝えするつもりだ。「ある企業」や「あるテーマ」など、もどかしくて申し訳ないが、是非講演を楽しみにしていただきたい。

青木氏の講演は1月27日開催。詳細はこちら。

《中尾真二》

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