Energy meets mobility:日本法人の取り組みを世界に広げる ZFジャパン 代表取締役社長 多田直純氏[インタビュー]

Energy meets mobility:日本法人の取り組みを世界に広げる ZFジャパン 代表取締役社長 多田直純氏[インタビュー]
Energy meets mobility:日本法人の取り組みを世界に広げる ZFジャパン 代表取締役社長 多田直純氏[インタビュー]全 1 枚
三菱i-MiEVの開発に携わり日本電動化研究所 代表として業界のモビリティ革命、電動化戦略をリードする和田憲一郎氏による「EV海外OEM・部品メーカーセミナー」(第2回)が、ゼット・エフ・ジャパン 代表取締役社長 多田直純氏をゲストに招いて開催される。

セミナーでは多田氏に同社の電動化戦略やCASE時代の新しいビジネス戦略について語っていただく。その後、和田氏との対談と視聴者から質疑応答を行う予定だ。第1回目は視聴者からの質問が活発で、質疑応答の時間が多くとられた。今回もこのスタイルは踏襲されるとのことで、その内容に期待したい。

ZFの事業戦略と新しい取り組み

講演では、まずZFの事業ポートフォリオと今後の戦略に関する新しい技術トレンドが解説される。ZFのコア事業は「車両制御」「統合安全」「自動運転」「E-モビリティ」の4つに分けることができる。この4分野に対して、要求仕様・要件を「見て」「考えて」「動かす」というニーズから各論技術・製品を考えていく。

「見て、考えて、動かす」というのは自動車運転の基本的な要素である「認知」「判断」「操作」に相当するもので、自動車に必要な機能・性能を考える上で合理的な戦略といえる。このアプローチの強味は乗用車から商用車、あるいはロボットカーなどモビリティ全般のソリューションに展開可能なことだ。

例えば、カメラ、ミリ波レーダー、LiDARなどセンサー技術は「見て」に相当する。「考えて」はZF ProAIのようなハイパフォーマンスECUプラットフォームだ。自動運転や統合ECUのプラットフォームとして拡大が予想される分野だ。「動かす」はブレーキ、電動ドライブ、電動パワーステアリング、アクティブダンパー、その他車両を構成するコンポーネント、モジュールだ。

プラグアンドプレイ可能なeDriveとエネルギー分野への挑戦

電動化とソフトウェアは、ZFが注力している分野だ。同社の「eDrive Platform」について、その特徴や800V関連の技術が紹介されるという。その方向性は、小型・高効率であることは言うまでもないが、「T-Shape」構造による小型・高集積されたアクスル本体も独特だ。体格の小型化だけでなく、車両への実装は「プラグアンドプレイ」を強く意識している。

小型ユニットはパワートレイン設計の自由度に貢献するが、ZFのeDriveは、ソフトウェアの汎用性を高めているという。OEMごとのパワートレインニーズ、制御方式に対応するため、APIやソフトウェアモジュール、開発環境を整備している。詳細はセミナーで語られるはずだが、統合ECUやビークルOSなど新しいE/Eアーキテクチャの中で、各コンポーネントやユニットの相互接続性、プラグアンドプレイは非常に重要な要件となる。

完成車両のアプリケーションとしてのモビリティでは、FREUDENBERG社との大型トラック・バスの燃料電池車での協業や、1月のCESで発表された米国モビリティサービスプロバイダーBee社との無人シャトルについても触れる予定だという。エネルギー分野では、風力発電機(ギアボックス)、車載電池のエネルギー活用の取り組みが紹介される。あまり知られていないかもしれないが、世界の風力発電機の4本に1本にZFのギアボックスが使われている。風力発電の風車は巨大なものだと羽だけで260メートル、出力15MWというものがある。これに対応する発電用の増速機をZFは製造している。

なぜエネルギー事業なのか

多田氏の当日の講演内容でとくに注目したいのは、12月20日にリリースされた、「Energy Meets Mobility」をキーワードとした車載電池を活用した脱炭素への新しい取り組みだ。多田氏は、今後の自動車業界はエネルギー産業との関係をこれまで以上に強める必要があると考えている。背景にはもちろんEV・FCV等の電動車の普及拡大がある。それを別にして、産業において電力、エネルギーは重要な要素だ。現在の化石燃料(石油・石炭・天然ガス)は資源枯渇よりも、CO2削減コストや地政学的なリスクのほうが大きくなっている。

自動車産業だけの問題ではないが、国やエネルギー業界に任せればいいという問題でもない。100年に一度といわれる大変革期においては、成長分野ビジネスとして積極的に関与するアプローチも必要だ。たとえば現在各国政府や電力事業者が取り組もうとしているVPP(仮想発電所)やV2G(Vehicle to Grid)がある。各社の実証実験が続いているが、日本では関西電力の「K-VIPS」など、事業化の動きも現れ始めている。

VPPやV2GでのポイントはEVのバッテリーを発電リソースとして活用するという考え方だ。これまで、家庭用蓄電池、ヒートポンプなどを利用したVPPが進められているが、ZFでは、

「50kWh、100kWhといったバッテリーを搭載しているEVの電力をIoTの力で集約できれば電力の安定供給にもつながる。電池のリユースを含めた自動車+エネルギーの活用を推し進めている。ここにサプライヤーとしてプラスアルファを提供できないかと考えている(多田氏)」

という。現在、EV用のバッテリーとしてLFP(リン酸鉄)を使う動きが広がっている。NMC/NCAといった三元系と言われるバッテリーより、安全性とコスト、コバルトフリーといった特性から採用するOEMが増えている。欠点は、出力エネルギーが三元系より低いこと。そのため、セルやモジュール構造、最近ではパックとボディやシャシーを一体化させるセルツーシャシー設計がトレンドになっている。

バッテリーの新しいエコシステムをつくる

じつはLFPの高効率なパック実装方法は、分解や再利用をしにくくする。ZFはLFPを使いながらパックを取り出しやすくする構造、再利用しやすい構造を提案する。ZFはバッテリーメーカーではないが、再利用しやすいLFPパックをラインナップすることで、グローバルなOEMのニーズに応えようとしている。合わせて、同社のデジタルテクノロジーと組み合わせて、SOC、SOHといった電池の能力や消耗度合い、充電履歴などを集約するクラウドプラットフォームも構築する。

再利用しやすいパックは、交換式バッテリーも視野に入っている。そのため、オーナーシップはバッテリーメーカーからも切り離した、供給パートナー(商社)を視野に入れている。従来型のOEM供給のほか、サブスクリプションやリースも考えている。

EVバッテリーのEOL(End of Life)までのトレーサビリティは、EVのリセール市場、リース・サブスク市場ではおそらく必須要件となる。履歴情報とバッテリーの価値を定量化できれば、新しいビジネスが広がる。このようなデータや指標は、脱炭素の取り組みでもカーボンクレジットの適正な申請、審査にも必要になってくる。リサイクル、リユースのエコシステムの基盤情報でもあるからだ。

多田氏は、サプライヤー独自の視点でバッテリーのビジネスモデルを構築しようとしている。ZFがいうEnergy Meets Mobilityのうち、バッテリー活用のビジネスは、ZFジャパンから始まった取り組みだそうだ。本社もバッテリーメーカーや商社との新しいビジネスとして注目している。

多田氏が登壇するセミナー「EV海外OEM・部品メーカーセミナー」は1月24日開催。申込・詳細はこちら。

《中尾真二》

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