電動車の課題解決にグループの力を集約する… BluE Nexus技術担当取締役 安部靜生氏[インタビュー]

電動車の課題解決にグループの力を集約する… BluE Nexus技術担当取締役 安部靜生氏[インタビュー]
電動車の課題解決にグループの力を集約する… BluE Nexus技術担当取締役 安部靜生氏[インタビュー]全 1 枚
bZ4xのeAxle、新型クラウンの電動駆動モジュールを手掛けたのは「BluE Nexus」という車両電動化のシステム開発&販売を担う会社だ。そのBluE Nexusが同社の戦略や電動化の技術動向について1月31日開催のオンラインセミナー2035年までのeAxle市場・技術トレンドとBluE Nexusのチャレンジで講演する。どんな内容になるのか、スピーカーである同社技術担当取締役の安部靜生氏に聞いた。

BluE Nexusの技術ポートフォリオ

BluE Nexusは、アイシンとデンソー、そしてトヨタ3社の出資で作られた電動化ソリューション全般の企画・設計・販売に特化した会社だ。事業ポートフォリオはハイブリッドシステム(THS)からPHEV、EV/FCVまでのパワートレインにまつわる、要素技術、コンポーネント、モジュールからシステムまでをカバーする。トヨタハイブリッドシステム(THS)に関しては、エンジンやバッテリーも守備範囲だ。

安部氏は、トヨタ自動車でガソリン直噴エンジンの量産開発を経てハイブリッドを中心としたトヨタの全電動パワトレーンを牽引したリーダーだ。2019年にBluE Nexusの取締役に就任し、bZ4Xや新型クラウンの電駆動モジュールの開発でも指揮を執った。グループにおける電動パワートレインの第一人者でもある。

講演では、まず、自動車業界の現況を俯瞰しながら電動化の課題を整理する。この課題に対してBluE Nexusがどんなソリューションを提供できるのか、電動化シフトの中でも同社の役割や強み、今後の技術動向をまとめるという。その中でbZ4Xや新型クラウンのパワートレインに投入された要素技術や各論の話も予定されている。今後の電動化技術(とくに駆動システム関連)の動向は、業界関係者にとって気になる内容だと思う。実際、各社のビジネス戦略や技術戦略に有用な情報になるはずだ。

だが、安部氏は「講演のポイントは個別技術よりも、業界が対峙している課題とそのソリューションにどんなものがあるのかに注目してほしい」という。

そもそも、EVや電動車両にとって最大の課題はバッテリーのコストや劣化と充電時間である。この問題は「いまだに根本的な解決はされていない」(安部氏)状態だ。しかし、この問題は、バッテリーの素材や技術革新に頼るだけでは不十分だ。車両、パワートレイン、バッテリーなど車を構成するすべてのシステムが高度に連携し、量産につなげなければ意味がない。

電動車普及のアプローチ

BluE Nexusでは、電動車普及のアプローチを3段階で考えている。Step1は電動車両の導入。これはもう始まっている。Step2はEVの拡大。現在はこのフェーズだ。電動パワートレインやバッテリー、半導体技術を動員し、システムの小型化、効率化を進める。小型化、効率化はEVの本格的普及に不可欠だからだ。Step3はEVの本格的普及を加速させる。Step3で重要なのはCASEやMaaSといった新しい市場に対応する付加価値をどうつけることができるかだ。この段階ではソフトウェア技術、通信技術、自動運転といった要素が重要になってくる。

Step2で、電動化システムの小型化や高効率化がなぜ重要なのか。そのためにどんな技術があるのか。この点については、セミナーで詳しく解説される予定だ。ひとつ言えるのは、システムの進化に必要なのは、インバーター、トランスアクスル、モーター、そして半導体技術といった要素技術やコンポーネントを協調して組み合わせる技術。アイシンとデンソーの双方のリソース、技術を持つBluE Nexusは最適なポジションにあるといえる。BluE Nexusのソリューションはオープンである。これは、世界中のOEMやサプライヤーにとってもメリットとなる。

Step3では、付加価値の最大化が求められる。今後の車両はパワートレインの性能だけでは市場価値が決まらなくなってくる。充電やバッテリーの課題解決が進むにつれて、自動運転、OTAなど新しいモビリティ体験や機能へのニーズが高まることが予想される。充電中のエンターテインメントなどキャビン空間に新しい用途が生まれるとも言われている。脱炭素や再エネを加速させるため、災害時の非常電源のためには、EVバッテリーの活用、統合化(VPP:仮想発電所)も進められている。

熱源のないEVこそ重要な熱マネジメント

車の設計で、コネクテッド(通信機能)やソフトウェアサービス、サイバーセキュリティの比重が高まると言われている。デンソー由来の半導体技術を持つBluE Nexusの枠組みはここでも有効だ。Step2では、IGBTやSiCなどパワー半導体技術がコアとなるがStep3ではこれらに加えて統合ECUなどのプロセッサ、セキュリティモジュール、通信モジュールの技術が生きる。

加えて安部氏が強調したのは、熱交換、熱マネジメント技術だ。内燃機関のような熱源を持たないEVこそ、熱マネジメントが欠かせない。バッテリーの保護や効率アップ、劣化対策に温度管理は必須だ。キャビン空調を含めて、eAxleの排熱利用、熱交換によるバッテリーの冷却。さらにヒーターなど温水系との連携サイクルを確立する。車両全体の熱マネジメントループが完成すれば、走行の快適性のほか、航続距離延長、低コスト、充放電の最適化によってEVの付加価値を高めることができる。

これらの話はセミナーで今後の技術動向として詳しく解説されるという。トヨタグループが考える電動化技術とそのロードマップを知るうえでは外せないセミナーだ。

安部氏が登壇するオンラインセミナー「2035年までのeAxle市場・技術トレンドとBluE Nexusのチャレンジ」は1月27日申込締切。詳細・お申込はこちら。

《中尾真二》

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