インドEV市場は3倍増(21-22年)JUGAADを地で行く新興OEMの実像

インドEV市場は3倍増(21-22年)JUGAADを地で行く新興OEMの実像
インドEV市場は3倍増(21-22年)JUGAADを地で行く新興OEMの実像全 1 枚

2022年(暦年)インドのEV販売台数は100万台を超えた。2021年に立ち上がったインドEV市場は、210%の成長を果たしたが、その原動力は必ずしも旧来型の「自動車メーカー」にあるわけではない。1月26日に開催される「今のインド」モビリティの実態セミナーシリーズ(第3回)では「CASE時代のOEMスタートアップが登壇」と題して、ベンガルールに本拠を置く新興OEMのユニークな事業モデルを紹介する。

ゲストに迎えるのは「電動 x 三輪」専業のOEMである3ev Industriesと、その姉妹会社で周辺事業を担う3eco Systemsの両社の経営陣を務めるMr.Karan KadabaとMr.Peter Hartmut Voelkner。Karanは実務を率いる若手経営者、Peterは豊富な経験を有する共同創業者、というポジションにある。

ここでは、本セミナーシリーズのモデレーターを務めるベンガルール在住のコンサルタントの筆者(大和合同会社 代表 大和倫之)が、セミナー開催前にゲストに聞いた話の一部を紹介する。

3ev Industriesおよび3eco Systemsについて

3ev Industries (以下、3ev)は、「電動 x 三輪」に特化した車両メーカーだ。2019年に創業した当初はリキシャ (三輪タクシー) から始める想定だったが、Covidの影響を踏まえていきなり方針転換。街を出歩く人が減る代わりに急増したデリバリーに着目して、これを担う三輪トラックの開発・生産から事業を始めた。現在は貨客の双方に渡る複数のモデルを開発・生産している。

3eco Systems (以下、3eco)は、車両メーカーとしての3evを補完する役割として設立したものであり、業務用車両管理(フリートマネジメント)を中心に、メンテナンス拠点や充電設備の設置・運営、専用アプリを通じたドライバー管理等をつかさどる。

実は3evは創業以来、車両の「販売」をしたことがない。しかしながら、既に数千台の3ev製の車両がベンガルールを中心とした複数の都市で日々、走り回っている。「Hyper-Local Connectivityを担う事業者」に向けて3ecoが提供するサービスの一環として、3evは車両を提供している。今のところ3evは、「フリート専用の電動三輪車メーカー」なのだ。

3ev & 3ecoの何がユニークなのか ?

「フリート専用の電動三輪車メーカー」ということだけでも十分に特徴的だが、この業態に至った明確な背景・理由もある。まず第一は、冒頭にも触れた環境要因。Covidによるロックダウンを契機に急激に「宅配」に対するニーズが高まり、これを担うサービス事業者や車両や人員が圧倒的に不足していた。インド社会の基本構造として元来、宅配サービスは「町内の遊休資源」を活用されるのが一般だから、故に、しばらく前まではそもそも「業務品質」が問われるような業務ではなかった。

Covid前数年で普及し始めた通販やデリバリーの広がりに伴って「事業」化が進み、Covidを追い風に一気に「業界」化したのがこの分野だ。より品質高くHyper-Local Connectivityを実現する為のパートナーとしてサービスを提供しているのが両社の位置づけだ。当地のスタートアップらしく、市場の機会に対して自らの競争力を発揮できるところをシャープに突いている。

もう一つは、事業の精度を高めて成長スピードを速める為。この理由の方が、日本企業にとっての学びは多いかもしれない。端的に言えば、いかに積極的にフィードバックポイントを予め用意しておいて、事業の核を早く育てるか、を追求した事業モデルだ。今のインドで「OEM」として電動車を開発しようとする際、世界中に調達可能なパーツは存在している。これらをどう選んでどう組み合わせ、いかに車両として必要十分な性能を適正なコストで実現するか、が肝になる。

殊にHyper-Local Connectivityの用に供される車両であれば、デザインや先進性は二の次に、走行距離・積載量・信頼性などを利用環境・実態に照らしてどのレベルでバランスさせるか、が一番の課題だ。その意味で、車両を販売するのではなく、自らフリートオペレーターとしてメンテナンスや充電を手掛けるのはその一部だが、更にドライバーの採用や勤怠管理から、ドライバー毎の運転特性の違い、ひいてはバッテリーの消費・劣化状況なども各種アプリを開発・活用してデータを収集・分析して日々、事業に反映している。

例えば、初代モデルの発表から18カ月間で3回のモデルチェンジが繰り返されたという事実は、このフィードバックプロセスがうまく機能していることの証左となろう。



3ev & 3ecoの講演は1月26日開催のオンラインセミナーで聴くことが出来る(日本語通訳、チャットによるQ&A)。
お申込・詳細はこちら1月24日正午締切。

《大和 倫之》

大和 倫之

大和倫之|大和合同会社 代表 南インドを拠点に、日本の知恵や技術を「グローバル化」する事業・コンサルティングを展開。欧・米の戦略コンサル、日系大手4社の事業開発担当としての世界各地での多業種に渡る経験を踏まえ、シンガポールを経てベンガルール移住。大和合同会社は、インドと日本を中心に、国境を越えて文化を紡ぐイノベーションの実践機関。多業種で市場開拓の実務を率いた経験から「インドで試行錯誤するベースキャンプ」を提供。インドで事業を営む「外国人」として、政府・組織・個人への提言・助言をしている。

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