デジタル庁が引き継いだ自動運転の官民ITS構想・ロードマップ…小原英明氏[インタビュー]

デジタル庁が引き継いだ自動運転の官民ITS構想・ロードマップ…小原英明氏[インタビュー]
デジタル庁が引き継いだ自動運転の官民ITS構想・ロードマップ…小原英明氏[インタビュー]全 1 枚

2021年9月にデジタル庁が発足したことにより、これまでの「官民ITS構想・ロードマップ」が新たな形に変わってきている。今後どのようになるかデジタル庁国民向けサービスグループ主査の小原英明氏に聞いた。

小原氏は1月25日開催の無料オンラインセミナー「デジタルを活用した交通社会の未来」に登壇し、この内容について詳説する。

---:デジタル庁の国民向けサービスグループの役割は?

デジタル庁は2021年9月に発足しました。国民向けサービスグループの中で準公共分野を担当しています。準公共分野とは、国、独立行政法人、地方公共団体、民間事業者などさまざまなサービス主体がサービス提供に関わっている分野です。たとえば、モビリティの他にも、健康・医療・介護、教育、インフラ、防災、こども分野などが含まれています。

官民ITS構想・ロードマップを引き継ぐ

---:デジタル庁は、内閣官房IT総合戦略室が行ってきた、官民ITS構想・ロードマップの策定を引き継がれたと聞きました。どのように進められたのでしょうか?

官民ITS構想・ロードマップは2014年に初めてできました。その後、2021年まで毎年更新されてきました。

一方で、自動運転に加え、MaaS やオンデマンド交通などの発達、ドローンや自動配送ロボットを始めとした新たな輸送手段の出現など、デジタルを活用した新たなモビリティサービスの普及も進んできました。

こうしたことから、デジタル庁発足を契機に、「デジタル交通社会のありかたに関する研究会」を立ち上げて検討を進め、官民ITS構想・ロードマップを引き継ぐ「デジタルを活用した交通社会の未来2022」を2022年8月1日に策定しました。

自動運転のみならず全ての移動モード

---:デジタル交通社会のありかたに関する研究会ではどのようなことを話されたのですか?

デジタル交通社会のありかたに関する研究会は「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和3年12月閣議決定)を踏まえています。

官民ITS構想・ロードマップは自動運転など道路交通を中心にしていたのですが、この研究会では空飛ぶクルマなども含め、人から物まで、歩くから飛ぶまでの全ての移動モードを対象としています。

将来的には自動運転車、ドローン、自動配送ロボット等は同じ空間で同時にさまざまなサービスを提供するようになるかと思います。それぞれが異なるシステムをつくるのではなく、共通の三次元空間情報基盤上で運行できるようにできないかという長期に向けた検討もしています。

国民の一人ひとりの暮らしのあり方からバックキャスト

---:デジタル交通社会のありかたに関する研究会、それを受けたデジタルを活用した交通社会の未来2022で一番大切にしたことは?

研究会の構成員の中には、モビリティとは直接関係のない子育て関係の活動をされている方らにも参画頂きました。シーズではなくニーズファーストにマインドセットするためです。暮らしのシーンを想定し、ペインポイントに着目してサービスを社会実装された事例を伺ってきました。その上で、車両技術を中心とした供給側の視点の整理も行いました。

人口減少時代に必要となるデジタル基盤

社会の大きな変化として、人口増加の時代では「バス停に来るバスを待つ」など、需要が供給に合わせる形でよかったものが、人口減少時代においてはビジネスが成立しなくなり、バスの減便や路線の廃止のような事態につながってしまうというのが現状の課題かと思います。そこで、「迎えの車が乗客の都合に合わせて迎えに来る」というように、需要が少ない中でも供給側が需要に合わせ、効率化を果たしながら需要を満たすようにサービスが変化する必要があると考えています。そのためには、需要と供給の情報をリアルタイムで把握し、そのマッチングを行うようなデジタル基盤等が必要になると考えています。

デジタル田園都市国家構想においては、多様な生活ニーズや価値観に寄り添い、デジタル技術によってサービスを磨いていくには、複数のサービスが積極的に協力し合う、「共助」を土台とした、データ連携基盤等のインフラの再構築が必要と考えています。モビリティ分野においてもその考え方を踏まえ、協調領域としてのデジタル基盤の検討に取り組み、各地域の目的に応じたサービスの実装により、一人一人の暮らしの困りごとの解決を進めていければと考えています。

各省庁と具体を詰めていく

---:経済産業省は自動運転のRoAD to the L4プロジェクトなど、連携する警察庁、法務省、総務省、経産省、国土交通省などはすでに各々の事業を進められていますが、どのように調整されますか?

デジタルを活用した交通社会の未来ではこれまでの官民ITS構想・ロードマップと同様に官民の取組の工程表も示しており、さらに、その対象となる輸送モードを拡げています。引き続き、関係各省庁と連携を取りながら、デジタル交通社会のアーキテクチャ設計・実装を進めたいと考えています。

小原氏が登壇する無料のオンラインセミナー「デジタルを活用した交通社会の未来」は1月24日申込締切。申込・詳細はこちら。

《楠田悦子》

ピックアップ

アクセスランキング

  1. 船上で水素を製造できる「エナジー・オブザーバー」が9年間の航海へ
  2. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  3. 最後のフォードエンジン搭載ケータハム、「セブン 310アンコール」発表
  4. 高機能ヘルメットスタンド、梅雨・湿気から解放する乾燥ファン搭載でMakuake登場
  5. 「三菱っぽくないけどカッコいい」ルノーの兄弟車となる『エクリプス クロス』次期型デザインに反響
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
  2. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  3. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  4. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
  5. 「あれはなんだ?」BYDが“軽EV”を作る気になった会長の一言
ランキングをもっと見る