事故削減はクルマの進化だけで為せるのか? 浮き彫りになる「道路構造」の課題【岩貞るみこの人道車医】

事故削減はクルマの進化だけで為せるのか? 浮き彫りになる「道路構造」の課題(写真はイメージ)
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◆クルマの進化で事故の犠牲者は減っているが

警察庁から、毎年恒例の交通事故発生状況(速報値)が発表になった。

2022年は、発生件数が30万1913件(昨年比マイナス4003件)、負傷者数が35万6419人(昨年比マイナス5712人)、死者数が2610人(昨年比マイナス26人)となり、確実に減り続けていることがわかった。

多くの大人たちが2000年問題で大騒ぎした22年前は、発生件数93万1950件、負傷者数115万5707人、死者数8757人であったことを思うと、大幅に減少したと思う。

なかでもクルマの進化はハンパない。事故が起きても怪我をしないようにするパッシブ・セーフティ技術のほか、事故を起こさないためのアクティブ・セーフティ技術があれやこれやと投入され、2021年11月からは衝突被害軽減ブレーキがついに義務化された。今後登場するモデルは軽トラックに至るまで標準装備である。ただ、軽トラを農器具として使い、ほとんど公道を走らない農家さんのことを思うと、車両本体価格が上がることに関して諸手を挙げて喜べない私がいることも事実だ。

自動運転は、政府でロードマップが作られ、世界中の技術者がこぞって事故を減らすことを目的のひとつとして掲げているけれど、クルマはどこまで安全技術を搭載し続けなければいけないのか。2022年の死者数、昨年比26人減は、正直なところ誤差の範囲のようにも見える。これ以上クルマに技術を搭載して、どこまで効果が出るのだろうかとすら感じてしまう。世の中の風潮を見ていると、クルマに頼り過ぎではないかと思えるのである。

◆人口あたりの死者数から見えてくるものとは

昨年2022年の、都道府県別人口10万人あたりの死者数を見てみよう。最少は東京都の0.94人。自動車メーカー本社のある主な府県を少ない順に並べてみると、

・神奈川 1.22人
・大阪 1.60人
・愛知 1.82人
・静岡 2.30人
・群馬 2.44人
・広島 2.66人

となっている。この数字を見ると、公共交通機関の発達と自家用車の保有率が大きく関わっていることが推察できる。

ただ、公共交通機関の発達と自家用車の保有率だけに左右されているのかというと、どうも違う。


《岩貞るみこ》

岩貞るみこ

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家 イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「未来のクルマができるまで 世界初、水素で走る燃料電池自動車 MIRAI」「ハチ公物語」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。2024年6月に最新刊「こちら、沖縄美ら海水族館 動物健康管理室。」を上梓(すべて講談社)。

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