「白信号」で渋滞解消、自動運転車がワイヤレスで操作へ

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自動車事故の多くは交差点で発生しています。交差点では生身のドライバーでも、ちょっとした判断の誤りで事故に発展することを考えると、これから普及しようとしている自動運転車にとって、交差点が非常に走行の難しい場所になるは容易に想像できます。

ノースカロライナ州立大学の交通研究者は、交差点の信号機に、通常の赤、青(緑)、黄の3色に加えて、白色の信号を追加することを提案しています。この「白信号」は自動運転車のためだけではなく、人間のドライバーのためにも機能します。

研究者は、この白信号のコンセプトにより、まず人間のドライバーが自動運転車と協調して交差点を通過することができるようになると説明します。具体的には、赤は止まれ、青は進め、黄色は注意(止まれ)。ここまでは通常どおりですが、白は「前のクルマに続いて進め」になるとのこと。

白信号のコンセプトは、交差点に近づく自動運転車どうしが相互に通信し交通状況を把握したうえで、もっとも効率的に通行できるよう信号機にワイヤレス通信で指示するシステムです。ある程度の数の自動運転車が交差点に接近すると、その進行方向の信号機を白色にし、自動運転車が交差点を通過できるようにします。

当然、自動運転車だけが立て続けに走行するわけではなく、そのなかには人が運転する車両も含まれると想定されます。とはいえドライバーにとって白信号は前走車に続いて進めなので、そのまま滞りなく交差点を通過できます。なお、白信号であっても交差する側の自動運転車が交差点を通過する場合は、自動運転車は停止線で止まります。また人のドライバーも白信号は「前走車に続いて走行」なので、前のクルマが止まれば、そこで停止します。

そして、自動運転車が通過したあと、交差点に向かうクルマの大半が人が運転するクルマになれば、再び信号システムは赤、青、黄のモードに戻ります。人が運転するクルマの間に少数の自動運転車が混じる場合も、そのまま通常の信号パターンで制御されます。白信号は点灯しません。

このように、自動運転車によって一部信号機の制御を切り替えることで、コンピューターによるシミュレーションでは交差点の効率が向上し、場合によってはトラフィックの遅延が90%も解消する可能性があると研究者は報告しています。

白信号は自動運転車に指示するためというより、自動運転車どうしが決定した順番を人間に伝えるためと言った方が正確かもしれません。

研究者はシミュレーションをしてみたところ、白信号がなくとも自動運転車が増えれば交通フローは改善する傾向があるとし、白信号システムを利用すれば、ストップ・アンド・ゴーの機会が減るためさらに交通の流れは良くなるとしました。また、自動運転車が全体の交通の10%しかない場合でも交通の遅延が3%改善し、自動運転車が多くなるほど、交差点はスムーズに流れ、燃費も向上するとしています。

ただ研究者は、この白信号システムは自動運転車ソフトウェアなどの面で対応する必要があり、また一般道を走行可能な自動運転車がもっと普及しなければなりません。さらに政府がすべての交差点に白色の信号機を追加施工する予定もないことを認めています。とはいえ、特定の場所で、このコンセプトを実験する機会はあると考えているとのことです。

ちなみに、追加する4色目の信号機の色は、特に白である必要はなく、何色であってもかまわないと研究者は述べています。ただ、赤、青、黄色の他に視認しやすい色といえば、白が妥当なところかもしれません。

White Phase Intersection Control Through Distributed Coordination: A Mobile Controller Paradigm in a Mixed Traffic Stream


自動運転車がワイヤレス操作する「白信号」で渋滞解消、米大学研究者が提案

《Munenori Taniguchi》

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