「MR 融合現実」映像を車体や室内に映し出すエンターテイメントカー

ヤマハ発動機株式会社とソニー株式会社が共同開発したエンタテインメント車両『Sociable Cart(ソーシャブルカート):SC-1』。
ヤマハ発動機株式会社とソニー株式会社が共同開発したエンタテインメント車両『Sociable Cart(ソーシャブルカート):SC-1』。全 10 枚

「まだ知らない、アウトドアの魅力」を体験できるイベントとして、2月18、19日に東京ビッグサイトで開催されている『SOTOWAKU PARK 2023』。そんなキャンプ系イベントに、ちょっぴり異色なエンターテイメントカーが展示されていた。

OUTDOOR×テクノロジー展示のエリアに、前面にも後面にも側面にも大きなモニターが貼り付けられたクルマが展示されている。じつはこれ、ヤマハ発動機が、ソニーと共同開発したエンタテインメント車両。『Sociable Cart(ソーシャブルカート):SC-1』と名付けられ、室内や車体側面にビルトインされている高精細ディスプレイに、カメラで捉えた車両の前後左右の様子や走行場所に応じた様々な映像、融合現実(Mixed Reality、複合現実)映像を映し出すことができる。

SC-1自体は2019年に開発されたもので、車内に49インチ4K液晶モニター1台、車外には55インチ4K液晶モニターが4台装備され、最高速度19km/hのゆっくりとした移動スピードの乗り物だ。高感度なイメージセンサーや超音波センサー、LiDARで捉えた車両周囲のデータをAI解析することで、最適な運行アシストや、人の性別・年齢などの属性に基づいた最適な情報(道案内や店舗情報、エンターテイメント情報、配信ニュース、広告など)を表示することも可能。

◆現実の映像にCG映像を融合することでおもしろいコンテンツが生まれる

融合現実映像と言われてもいまいちピンとこない方も多いだろう。簡単に言ってしまえば、『車外の景色をクルマの外側にあるカメラで撮って車内モニターに表示し、その景色の映像にCG映像を合成して表示する』と考えてもらうといいだろう。

実際にSC-1は、沖縄県沖縄市にある東南植物楽園や、沖縄県名護市にあるカヌチャベイリゾート(現在はサービス終了し、4月に再度サービスが開始される予定)にて風景&映像のミックス世界を楽しめる『ムーンライトクルーズ』というイベントで使われている。ムーンライトクルーズは、自動運転されるSC-1に乗り込み、夜間の実際の走行シーンをベースに、魚やイルカ、サメといった水中の生き物が道路の上を泳いでいるかのような姿が見られる。そんな拡張現実が体験できるコンテンツが、SOTOWAKU PARK 2023の会場に展示されていたSC-1でも無料で視聴できる(自動運転機能はない)。

◆ただの移動に付加価値を付けることが可能なクルマ

今後このSC-1は、どのような展望があるのかなどを株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント デジタルイノベーショングループの齊藤建氏に聞いた。

「ソニーチームとしてはITによって移動を楽しくするというのもひとつの目的だ。たとえば10分ほど歩いて移動しなければならないとき、SC-1に乗って拡張現実のコンテンツを楽しみながら乗っていたら、いつの間にか目的地に着いていた。そんな移動に付加価値を付けるということができると思う」

「今まで、みんながクルマに乗って、個人個人でスマホを見ていたというただの移動が、全員が同じコンテンツを楽しんだり操作したりといったエンターテイメントに変わる。今回のイベントに出展しているのも、お父さんはキャンプ好きだけど、お母さんや子供はそこまで好きじゃないといった場合、お父さんとしてはキャンプに行って子供に色々体験させたい。そんな時に、SC-1のようなおもしろいコンテンツのクルマがあれば、一緒に行ってみようかなというきっかけのひとつになるのではないか? と、そんな想いがソニーミュージック側の視点としてある」と教えてくれた。

◆すでに1万5000人の乗客を無事故で運んでいるという実績は重要

また今後進化していくであろう自動運転のことについては、「自動運転が可能で電動のクルマというとソニー・ホンダモビリティの『AFEELA(アフィーラ)』を思い浮かべる方もいるかと思うが、SC-1はソニー・ホンダモビリティとはまったく別チームで作っている」という。

「SC-1はすでに沖縄で1万5000人から乗車料金を頂いて、無事故で運用している。妄想と言われるかもしれないが、たとえばSC-1がキャンピングカーになって、家族みんなが寝ている間に、日の出が素敵に見られるスポットまで自動運転が行われる。朝、最高の日の出を家族一緒に見られるなんてことが実現したら楽しいはず。エンターテイメントと自動運転の方向性を持って開発し運用を進めることで、『自動運転レベル4(ドライバー不在の運転が可能)』に向けた実績を積んでいることにもなる」と述べた。

従来のクルマでは提供できなかったエンタテインメント空間を創り出す、自動で移動可能な部屋といった印象を受けるSC-1。SOTOWAKU PARK 2023を訪問出来る方は、近未来を体験してみてはいかが?

《関口敬文》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  2. 最後のフォードエンジン搭載ケータハム、「セブン 310アンコール」発表
  3. 高機能ヘルメットスタンド、梅雨・湿気から解放する乾燥ファン搭載でMakuake登場
  4. 「三菱っぽくないけどカッコいい」ルノーの兄弟車となる『エクリプス クロス』次期型デザインに反響
  5. 船上で水素を製造できる「エナジー・オブザーバー」が9年間の航海へ
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
  2. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  3. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  4. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
  5. 「あれはなんだ?」BYDが“軽EV”を作る気になった会長の一言
ランキングをもっと見る