ITベンチャーが自動車産業に参入して5年間でわかったこと…ナイル 執行役員 COO 久米田晶亮氏[インタビュー]

ITベンチャーが自動車産業に参入して5年間でわかったこと…ナイル 執行役員 COO 久米田晶亮氏[インタビュー]
ITベンチャーが自動車産業に参入して5年間でわかったこと…ナイル 執行役員 COO 久米田晶亮氏[インタビュー]全 3 枚

2018年にスタートした申込みまでネット完結のマイカーリースサービス「おトクにマイカー 定額カルモくん」は、2019年に新車販売から中古市場にも展開し、2021年からは加盟店や直営店というリアル展開も進めている。まもなく開催されるセミナー「2023年「クルマ×金融」各社の挑戦~サブスク・リース・法人・個人・新車・中古車~」に登壇するナイル株式会社 執行役員 自動車産業DX事業部 COOの久米田晶亮氏に、定額カルモくんの特徴やセミナーの見どころについて聞いた。

セミナーの詳細はこちらから

◆アセットライトなオンラインサービス

---:セミナーについてお聞きしたいのですが、その前にまず御社(ナイル株式会社)について簡単にご紹介いただけますか。もともとクルマ業界というより、IT企業ですよね。

久米田:そうですね。当社はもともとデジタルマーケティングの支援事業から始まった会社で、その中でも特にSEOやマーケティングの施策に強みを持っています。事業領域は少し違うのですが、その知見(※リーチや集客力)を応用して大手リース会社さんと提携し、マイカーサブスクリプションの事業に展開していったという経緯です。

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---:なるほど。そのような成り立ちが「定額カルモくん」のビジネスモデルにも現れているのですね。

久米田:そうですね。わかりやすく言うと、カーリースの商品企画やオンライン販売を当社で行い、お客様とリース会社さんの仲介をしています。なので、月額のリース費用はユーザーからリース会社さんに支払われています。

---:カーリースには御社は関わっていないということですか?

久米田:お客様の窓口は申込みから契約後まで当社が行っています。最長で11年契約が可能ですので、長期間に渡りお客様とのコミュニケーションが発生します。契約期間中はメンテナンスや保険の提案なども行い、カーライフのサポートをしています。

---:リース料とは別に、ユーザーが メンテナンスプランに入ると、その部分が御社の収入になるということですか?

久米田:そうですね。また特徴として、メーカーがやっているカーリースではないので、車種はメーカー問わずご紹介できること、あとは新車と中古車を両方やっている点も特徴のひとつですね。

◆メンテナンスプランは約90%の加入率

---:確認ですが、例えば10年契約でリースを受けるとして、月々1万円ちょっとというサブスクリプションと、それに加えてメンテナンスプランの費用が追加になるということなんですか?

久米田:そうですね。カーライフで必要なメンテナンス料金も月々の定額にできるので、車にかかる維持費が一定になることで、かなりの方に利用いただいております。

---:メンテナンスプランの加入率はどれぐらいなんですか?

久米田:今はほぼ90%の加入率で、ほとんどの方が入っています。保証も含まれるので、これがあることで安心して長期で乗っていただけるというサービスになっています。

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---:例えばシルバープランであればオイル、点検、車検がカバーされるということですね。

久米田:そうですね。エンジンオイルやオイルフィルター、車検といった部分ですね。

---:お話をお聞きしていると、発想がオンラインサービス的で、ビジネスモデルもそうなっているなと感じました。

久米田:そうですね。端的に言うとアセットライト(*)ということですね。車両自体を自分たちで作っているわけではありませんし、在庫も持っていません。リース、車の準備、メンテナンスの取次ぎの部分も全部リース会社さんにお願いしてるというスキームです。

*アセットライト:資産(Asset)をできるだけ持たずに、財務を軽く(Light)すること。工場を持たずに生産を外部委託することや、オフィスや社用車など事業に必要な資産を持たずにリースを受けるなど。

日本の自動車の購入形態で、個人向けリースは2.1%の利用しかないので、ここを拡大していき、オンラインのサービスとして整備やサブスクという要素を組み合わせて考えていく、というところに可能性を感じています。

---:なるほど、個人向けリースはまだ伸びしろがありそうですね。

久米田:それから、去年から埼玉の春日部に直営店舗を作りました。現在は店舗を拡大していくというよりは、オンラインとオフラインの組み合わせを検証しているフェーズです。

また、加盟店という形で、既存の整備工場の方々に「整備というメイン商品に加えて、カルモも扱っています」という形で協力をいただくケースもあります。

◆独自の与信を検討 多くの人にサービスを届けるため

---:リースの際の与信を独自基準でやる計画もあるんですね。

久米田:リース会社さんに金融的な部分は依存していると申し上げたのですが、それだとやはり審査に通過する方が限られる部分があるので、我々独自の考え方のもと、自社で供給しようとしている所です。

---:独自の与信ってちょっと怖い感じがするのですが、御社はその辺の知見もお持ちですか?

久米田:それほど経験値があるわけではありませんが、例えば個人事業主の方などは、なかなかローンが通らない方もいますし、通常の与信だと難しいけれど、本来は信用力を持っているという方もいらっしゃるので、この辺はトライしたい領域として、現在試験準備中です。

---:確かに画一的なチェックだと、ひとつの項目に引っかかると、他がいくら良くても駄目というケースがありますよね。

久米田:そうですね。通常の与信もとても重要な基準だとは思っています。しかし、どちらかというと貸し倒れがないように、という思考のもとだと思うんです。

しかし、車両を供給できる方が少なくなってしまうのはもったいないですし、私達の事業ミッションである「マイカーの概念を変え、誰もが自由に移動を楽しむ社会を作る」という観点からも、クルマを持ちにくい方々にも出来るだけ提供していきたいという思いはあります。

---:なるほど。定額のサブスクリプションである以上、そうした方がより良いサービスになるというような思いもあるということですかね。

久米田:そうですね。できるだけ多くの方のカーライフを豊かにしたい、という方向感で我々はやっています。もちろん理想論だけではないので、実行する場合は社内でもしっかり議論をしながら、ということです。

久米田氏が登壇する無料のオンラインセミナー「2023年「クルマ×金融」各社の挑戦~サブスク・リース・法人・個人・新車・中古車~」は2月24日開催。申込締切は2月22日正午まで。詳細はこちらから。

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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