マセラティの新世代SUV『グレカーレ GT』に初試乗…その革新性と走りに舌を巻いた

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マセラティ グレカーレ GT
マセラティ グレカーレ GT全 49 枚

◆マセラティの新世代SUV『グレカーレ』の革新性とは

マセラティ『グレカーレ』は、マセラティにとってふたつの“第二弾”という記号を持ち合わせている。ひとつは、『MC20』からスタートした新世代マセラティのポートフォリオに沿った第二弾のモデルであること。もうひとつは、マセラティ史上初のSUVとして登場した『レヴァンテ』に続く第二弾のSUVであることだ。

MC20はおよそ半世紀ぶりにマセラティが世に放ったミッドシップのスポーツカーなのだけれど、このクルマの存在意義はそれだけに留まらない。“ネットゥーノ”と呼ぶまったく新しいV6エンジンも同時発表したり、バッテリーEV(=BEV)も用意していることも公表するなど、自動車業界のこれからを見据えたマセラティの新しいチャプターの始まりを示唆するモデルでもある。MC20に次ぐニューモデルとなるグレカーレも、ネットゥーノをベースにしたエンジンを搭載する仕様があるし、“フォルゴーレ”を名乗るBEVが追加導入される予定で、つまりMC20と似たようなパワートレイン戦略を踏襲する。

レヴァンテが登場した頃は、プレミアムブランドが続々とSUV市場への参入を決めた時期だったが、数多のSUVとは一線を画すスタイリングと乗り味はまさしくマセラティのそれであり、レヴァンテを取り巻いたのは絶賛の嵐だった。グレカーレは、そんなレヴァンテの弟分のようなSUVでもある。

マセラティ グレカーレ GTマセラティ グレカーレ GT

グレカーレ(GT)のボディサイズは全長4845mm、全幅1950mm、全高1670mm、ホイールベース2900mm。レヴァンテは全長5005mm、全幅1961mm、全高1693mm、ホイールベース3004mmなので、グレカーレのほうが160mm短く11mm狭く23mm低い。レヴァンテを気に入ったのにその大きさをちょっと持て余す環境にいる人にとって、グレカーレのボディはうってつけのサイズかもしれない。

グリルがヘッドライトよりも低い位置に構えるフロントフェイスはMC20からの新しいデザイン言語で、レヴァンテとは決定的に異なるエクステリアデザインのディテールでもある。いっぽうで、長いフロントノーズやサイドウインドウ全体の輪郭、テールランプの位置が高く天地方向に薄いリヤウインドウ、リヤフェンダーのボリューム感などはレヴァンテと共通なので、シルエットだけでもマセラティのSUVであることが容易に判明する。

◆これまでのマセラティとは一線を画す先進のインテリア

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ドアを開けようとドアハンドルに手を掛けたら電動ラッチ式になっていた。MC20と同じ方式である。そして目の前に飛び込んできたのは、これまでのマセラティのインテリアとはまったく違う光景だった。

センターコンソールにはラップトップPCを開いたように12.3インチと8.8インチの液晶モニターが上下に置かれていて、シフトレバーはどこにも見当たらない。よく見ると、ふたつのモニターの間に「P」「R」「N」「D/M」の押しボタン式セレクターが配置されていた。これ以外にセンターコンソール上には機械式スイッチが存在せず、ハザードスイッチを含む多くの機能や装備は液晶パネルによるタッチ式コントロールとなる。

ステアリングには各種機能やADAS(運転支援レベル2相当)のスイッチの他に、ラウンドタイプのエンジンスタート/ストップスイッチとドライブモード切替スイッチが備わっている。ほとんどのスイッチを液晶モニター内にしまい込んでも、ドライブモードスイッチは独立させて運転中でも使いやすいステアリングにレイアウトするという判断は、マセラティをあえて選んだドライバーの趣向や要望に的確に応えている。

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センターコンソールの1番上に掲げられたアナログ時計は、1980年代から続くマセラティのインテリアにおけるアイコンのひとつだが、これも現代風にアレンジされている。もはや機械式時計ではなく液晶ディスプレイになっていて、アナログ時計の他にデジタル時計、Gメーター、ストップウォッチ、コンパス、音声認識アンサーバックなど、スマートウォッチのように表示を切り替えることが可能だ。

ダッシュボードは“Tシェイプ・ストラクチャー”といって、1970年代のギブリなどでも採用されていたインテリアの造形をモチーフにしている。エアコンの吹き出し口の主張を控え目に見せるクロームのトリムは左右方向へ、センターコンソールのふたつのディスプレイが天地方向への視覚的広がりをそれぞれ演出、これが“Tシェイプ”を形成している。時計といいダッシュボードの造形といい、マセラティは伝統のスタイルと先進技術の融合が本当に上手だと感心する。

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実は感心したことがもうひとつある。それはグレカーレのパッケージ。レヴァンテよりもホイールベースは短いのに、身長173cmの自分のドライビングポジションに合わせた運転席の後ろに座ると、足が組めるほどのスペースが残っていた。加えてラゲッジルームもスクエアな使いやすい形状で535リットルもの容量が確保されている。縦置きのエンジンは前後重量配分を考慮して、前軸よりも後方のフロントバルクヘッドに食い込むような位置にあるにもかかわらず、キャビンとラゲッジルームに余裕ある空間を生み出している秀逸なパッケージには驚かされた。

◆「GT」グレードに初試乗、そのスムーズさに舌を巻く

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グレカーレは「GT」「モデナ」「トロフェオ」のグレードがあって、GTとモデナは直列4気筒ターボのBSG仕様、トロフェオはMC20と同じV6ツインターボのネットゥーノのベースにしたユニットをそれぞれ搭載する。直列4気筒エンジンはギブリやレヴァンテにもすでに積まれているマイルドハイブリッドで、エンジン制御マップの違いによりGTは最高出力300ps/5750rpm、最大トルク450Nm/2000rpm、モデナは最高出力330ps/5750rpm、最大トルク450Nm/ 2250rpmを発生、トロフェオは最高出力530ps/6500rpm、最大トルク620Nm/2750rpmを誇る。

4気筒エンジンにはBSG(ベルトドリブン・スターター・ジェネレーター)の他にeブースターが装着されている。これは、本来のターボとは別の電気式の小さな過給機で、コンプレッサーを回すのに十分な排気がターボに送り込まれる前に電気を利用して過給していわゆるターボラグをなくし、低回転域からレスポンスよくトルクを発生させる。そしてターボが想定通りの過給を行えるようになるとeブースターは自動的に止まる仕組みである。

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今回の試乗車はGTだったが、1995ccの4気筒とは思えないほどパワフルで俊足である。何より舌を巻いたのは、状況に応じて4気筒エンジン本来のパワーに加えてターボやeブースターやモーターが入れ替わり立ち替わり駆動力をサポートしているはずなのに、運転しているとそんなことはまったくわからず、ただただ6000rpmのレブリミットまで間断なくスムーズに吹け上がり、どの回転域でもスロットルペダルを踏んだ瞬間に期待通りの加速感を得ることができるからだ。

これはZF製8速ATを含むパワートレイン全体の完成度の高さはもちろん、状況に応じて前後の駆動力配分を最適化するフルタイム4輪駆動システムとの協調制御の妙や、プロペラシャフトをあえてカーボン製にして後輪へのパワーデリバリーのロスを減らすといった細かなこだわりなどの複合的要因によって成立しているのだろう。GTはグレカーレの中ではもっとも控え目な出力/トルクではあるけれど、それでも300ps/450Nmである。日本の道路事情ではむしろこれくらいのほうがポテンシャルを存分に引き出すことができると個人的には思っている。

◆心躍るパフォーマンスを備えながらも快適さを忘れない

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トロフェオのサスペンションは空気ばねと電子制御式ダンパーを組み合わせたエアサスが標準装備だが、GTとモデナにはオプション設定で、試乗車には金属ばねとコンベンショナルなダンパーが装着されていた。このダンパーは、電子制御式でないにもかかわらずピストンスピードやストローク量によってオイルの流量や流路を最適化して減衰力を可変する。簡単に言えば、路面からの入力が小さい場合は減衰力も小さく、ロールやピッチなどでばね上が動くような局面では減衰力を上げてそれを抑え込むのだ。

運転していると、路面状況や速度を問わず一定の乗り心地を示すいっぽうで、コーナリグ時のターインからの過渡領域でのばね上の動きはきちんとコントロールされていて、てっきり電子制御式ダンパーが装着されていると勘違いしたほどだった。乗り心地とハンドリングを高次元で両立させているサスペンションシステムで、車高調整が必要となるような使い方をしないのであれば、エアサスでなくともきっと満足できるはずである。

マセラティはたとえスーパースポーツのMC20であっても、心躍るようなハンドリングと動力性能を備えながらも、長距離を快適にドライブできるグランドツーリングとしての性能を忘れない。それは最新のSUVであるグレカーレでもまったく同じであった。

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渡辺慎太郎|ジャーナリスト/エディター
1966年東京生まれ。米国の大学を卒業後、自動車雑誌『ル・ボラン』の編集者に。後に自動車雑誌『カーグラフィック』の編集記者と編集長を務め2018年から自動車ジャーナリスト/エディターへ転向、現在に至る。

《渡辺慎太郎》

渡辺慎太郎

渡辺慎太郎|ジャーナリスト/エディター 1966年東京生まれ。米国の大学を卒業後、自動車雑誌『ル・ボラン』の編集者に。後に自動車雑誌『カーグラフィック』の編集記者と編集長を務め2018年から自動車ジャーナリスト/エディターへ転向、現在に至る。

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