リアル3歳児 VS メタバース? 日産自動車が時代を先駆けるチャレンジイベント

メタバース民と一緒にハンドル体操を楽しむ親子
メタバース民と一緒にハンドル体操を楽しむ親子全 12 枚

リアルとメタバースに双子のショウルームを持つ日産自動車が、現実とVRを繋ぐユーザー参加イベントを2023年3月4日に開催した。

東京都中央区銀座4丁目の日産自動車ショウルーム「NISSAN CROSSING」にて、「ハンドルぐるぐる体操体験会」を実施。同時にメタバース「VRChat」上にあるもうひとつの「NISSAN CROSSING」でも行い、オンライン中継によってリアルとメタバースでひとつのイベントを同時開催するというチャレンジが行われた。

◆日産自動車、次なるチャレンジ

日産自動車はVRChat上に、銀座のNISSAN CROSSINGとそっくり同じもうひとつのショウルームを2021年11月に開設した。以後、この施設を使って日産サクラの発表イベントやメタバース試乗会などイベントを開催してきた。

イベント会場は銀座NISSAN CROSSING2階のショウルーム。イベント会場は銀座NISSAN CROSSING2階のショウルーム。

今回はさらに一歩進めて、リアルとVRをリンクしてイベントを同時開催すると試みだ。日産自動車が発案した「ハンドルぐるぐる体操」の体験会をVRChat上で行い、その様子を銀座側のホールの大型モニタで見ながら、リアルでも同じ体操を一緒にやってみよう、というもの。

VRChat側の参加者は約30人。銀座側は一般参加者とプレスと関係者の見分けがつきにくかったが、少なくとも一般参加者だけで10数人はいたようだ。

VRChat側はどんな姿にでもなれる利点を活かして、体操のインストラクターを担当する「仮想舞踏団」は、全員が動物系のアバター。いっぽう、銀座側は3歳くらいの男児を連れた家族が計3組も参加した。

参加した子供は全員男子でした。参加した子供は全員男子でした。

ハンドルぐるぐる体操は、オモチャのハンドル(輪っか)を持って、身体を伸ばしたり曲げたりする運動。3人の子供たちはかなり真剣に画面を見ながら動作を真似していた。インタビューはできなかったが、表情から楽しんでいるのは間違いなかった。

◆幼児とメタバースの意外な相性の良さ

面白かったのは、この「ハンドルぐるぐる体操」が高齢者ドライバーのために作られた体操だという点だ。高齢者による自動車事故が社会的な問題となっている中で、日産自動車は新潟大学と協力して、高齢者の運動不足による運動機能の衰えを改善する目的でこの体操を作ったという。

コンテンツ的には、ミスマッチなイベントとなったが、意外な発見もあった。リアルタイム中継は、VRから現実への一方通行。巨大スクリーンに映し出された動物アバターたちを見ながら、オモチャのハンドルを握りしめてワクワクしている幼児たち。

一方で、VR側では完全に老人向けのコンテンツとして会が進行。司会もおそらく意識的にゆっくり喋っていた。体操の前後には日産の担当者がVR側に登場して完全に大人向けの説明をする。大人でもちょっと間延びして感じる空間に、幼児たちは耐えられるのか? 体操が始まる前に帰ってしまうのではないか?とヒヤヒヤ。

銀座の子供たちの様子を見て驚くメタバース民たちを見ている親子。銀座の子供たちの様子を見て驚くメタバース民たちを見ている親子。

ところが、意外にも子供たちは3人ともグズりもせずにきちんと待っていた。子育て経験のある人なら驚くレベルのお行儀の良さ。仮想舞踏団の動物系アバターが良かったのだろうか? これもひとつの可能性を感じさせる出来事だ。

イベント終盤には、銀座会場の様子を撮った動画がVR側で上映された。するとVR側で歓声が上がる。「子供がいる!」「凄い、教育番組みたい!」。銀座側も大人ばかりと想定していたVR住民たちには、ちょっとしたサプライズだったようだ。

◆次の時代への布石

動画だけでなく、銀座側の司会進行をしていた日産自動車の鵜飼さんも参加者の目の前でVRゴーグルを被って、VR空間にダイブしてスクリーン上に登場するというパフォーマンスも行った。VRという概念は知っていても、まだ未経験の人が大多数だ。こういうリアルイベントを行うことで、VRやメタバースをより身近に知ってもらい。メタバースを新たな顧客層とのタッチポイントにできる可能性が出てくるかもしれない。

メタバース側にダイブした日産自動車・鵜飼さん。メタバース側にダイブした日産自動車・鵜飼さん。

今回のイベントは、正直バタバタしてスムーズでない点もあった。それは主催者側も判っている。しかし、今はメタバースで何ができるか?をテーマに試行を重ねている時期なので、失敗を恐れずなんでもやってみるという姿勢が大切なのだろう。

本格的なメタバース時代が始まるまで、おそらくあと数年。それまでに自動車メーカーとして何ができるのか。何をすべきなのか。それを見極めているのかもしれない。

《根岸智幸》

メディアビジネスコンサルタント、ソフトウェアエンジニア、編集者、ライター 根岸智幸

メインフレームのOSエンジニアを皮切りに、アスキーで月刊アスキーなど15誌でリブート、リニューアル、創刊を手がける。クチコミグルメサイトの皮切りとなった「東京グルメ」を開発し、ライブドアに営業譲渡し社員に。独立後、献本付き書評コミュニティ「本が好き!」の企画開発、KADOKAWA/ブックウォーカーで同人誌の電子書籍化プロジェクトなど。マガジンハウス/ananWebなどWebメディアを多数手がけ、現在は自動車とゲーム、XRとメディアビジネスそのものが主領域。 ・インターネットアスキー編集長(1997-1999) ・アスキーPC Explorer編集長(2002-2004) ・東京グルメ/ライブドアグルメ企画開発運営(2000-2008) ・本が好き!企画開発運営(2008-2013) ・BWインディーズ企画運営(2015-2017) ・Webメディア運営&グロース(2017-) 【著書】 ・Twitter使いこなし術(2010) ・facebook使いこなし術(2011) ・ほんの1秒もムダなく片づく情報整理術の教科書(2015) など

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