車載LiBのリサイクル&リユース…各国各社の最新動向 - 沖為工作室 CEO 沖本真也 氏[インタビュー]

車載LiBのリサイクル&リユース…各国各社の最新動向 - 沖為工作室 CEO 沖本真也 氏[インタビュー]
車載LiBのリサイクル&リユース…各国各社の最新動向 - 沖為工作室 CEO 沖本真也 氏[インタビュー]全 5 枚

来たる3月24日、オンラインセミナー「グローバルEVトレンドと車載LiBリサイクル&リユース・各社の最新動向」が開催される。登壇する沖為工作室合同会社 ファウンダー CEOの沖本真也氏に、セミナーの見どころを聞いた。

セミナー概要

1.グローバルEVトレンド
1-1 Software-Defined Vehicleと課題
1-2 電動化とエネルギーマネジメント
1-3 ライフサイクルマネジメントと情報管理システム

2.車載LiBリサイクル、リユース動向
2-1 車載LiBリサイクル、リユースに関わる法規制
 欧州 / 中国 / 米国 / その他
2-2 各社の取り組みアップデート
Volkswagen / Northvolt / NIO / Tesla / Li-Cycle / Redwood / Brunp / Accurec Recycling / Primobius / Epiroc / GEM / 天奇 など

3.市場規模分析
3-1 EV市場
3-2 車載LiB市場
3-3 車載LiBリサイクル、リユース市場規模分析

4.まとめ
4-1 循環型社会の経済性

セミナーの詳細や聴講の申し込みはこちらから。

■グローバルで保護主義的な動き

---:セミナーの見どころについてお聞きします。興味深いテーマが並んでいますが、まずはグローバルのEVトレンドでしょうか。

沖本:そうですね。去年あった一つの大きなテーマとして、アメリカのインフレ抑制法があります。その中にEVの税額控除があるのですが、こちらも今年から本格的にスタートしました。

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控除が受けられる要件は、新車の乗用車であれば、希望小売価格が5万5000ドル以下であること、あとはEVバッテリー用のクリティカルミネラルは、米国またはFTAを結んでいる国から調達する必要があるといったことが、段階的にその割合が決められています。2024年では、ロシアや中国などの事業体による製造または組み立てがNG、2025年以降は、そこから部品調達してはいけないといったものですね。

これによってCATLは、アメリカでのプロジェクトを一旦白紙に戻し、逆に欧州のほうで工場をつくるという動きがあります。

ただ、中国のバッテリーメーカーとこの件について話す機会がありましたが、あくまで政治的な話のため、自分たちはそれに従って事業を行っていくと。そこは、企業の方たちは冷静に捉えて行っていらっしゃいます。

---:クリティカルミネラルとは、リチウムのことですか?

沖本:レアメタルです。リチウムやニッケルなど、そのあたりのものが含まれます。

---:リチウムはほぼ中国で精製していると思うんですが、現実的にこれはクリアできる条項なのでしょうか?

沖本:去年、これが出されたときは、どこの会社もこれは達成できないという話で、結構厳しい要件なので、アメリカの中でも現在、慌ててリサイクルやリユースに対する取り組みが少し活発化しているところですね。

このあたりの取り組みは、欧州でもバッテリー規則について去年の末に合意があって、現在、最終承認が待たれているところです。ここではリサイクル材使用率最低値は、段階を踏みますが、規則発効日156ヶ月後からコバルト26パーセント、リチウム12パーセント、ニッケル15パーセントとすることが定められています。こちらも但し書きがあって、欧州委員会は状況によって新電池規則を補足する委任法令を採択できることを明言しています。

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つまり基本的には目標値に向けて進めていくのですが、状況に応じて欧州委員会は若干の方向修正ができるという余地を残しているので、難しくなってくれば、当然方向修正といったことが図られる可能性があります。

アメリカのインフレ抑制法もバイデンさん自身が、マクロン大統領にそれはフェアではないといわれたときに、場合によっては交渉の余地があるといった話もしているので、そこはケースバイケースで変わっていく可能性もゼロではないですね。

---:欧州の場合はリサイクル率の目標ということですか。

沖本:はい。リサイクル率と、生産地に関しはデューデリジェンスで課していくといったところですね。例えば、典型的にはコンゴなど、そういった児童が強制的に労働されているところから出てくるものは使ってはいけない、ということもありますし、デューデリジェンスを広義な意味で捉えると、やはりローカルのきちんとトレースできるところから調達するほうが好ましいとされます。

■リサイクルとリユース

---:続いて、リサイクルとリユースの動向はいかがでしょうか。

沖本:はい。アメリカでは新たな支援策として、リサイクル・リユースに対しても補助していくという方針が出されているところです。ただ、欧州や中国に比べると取り組みがまだ始まったばかりの印象です。

一方で中国においては、リサイクル・リユースを取り扱える企業をホワイトリスト制度として、政府が認可した企業がリストに掲載されます。リサイクル・リユースをするのであれば、このリストから依頼しなさい、という制度があります。

しかし、リサイクル・リユースをホワイトリストの企業に依頼するケースは多くないことが問題化しています。実際には町工場など、インターネットで気軽にバッテリーを買い取ってくれるところに売ってしまっているようです。

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---:ホワイトリストに載っていない野良の電池屋さんが、電池を買い取っているということですか?

沖本:そうです。そして自分たちで材料を取り出して、それをまた販売するということですね。野良の業者のほうが高い値段で買ってくれるので、そこに販売してしまうと。高い値段で買い取って、かつリサイクルの工程自体は手作業など、それほど洗練されていないやり方で安いコストで行い、その取り出した材料をさらに高値で販売してしまうことは、ホワイトリスト制度を蔑ろにしてしまう問題と不公正な取引につながる恐れもあります。

---:なるほど。

沖本:あとは、バッテリーを買ってきてエンジンの車と一緒に町工場に持って行くと、それをEVにコンバージョンする、といったことが結構カジュアルに行われるケースがあります。

これも問題が起きていて、バイクなのですがEV化したものが事故を起こしてしまい、同乗していたお子さんが、バッテリーが爆発して亡くなってしまったといったこともあるので、例えば電池をリユースする際のルールをきちんと決め、守っていく仕組みが必要です。リサイクル・リユースをめぐっては、課題がまだまだあります。

---:中国は実際にリサイクルが地下市場で始まっているといったような動きですね。

沖本:そうですね。大企業の動きとしては、Huayouは、最近中国でも名前がよく出るようになっているのですが、LGESと合弁会社をつくり、VWとも提携していますね。またCATLはリサイクルに関するニュースが多いですね。

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---:LFPはリサイクルするとマイナスになると聞きます。

沖本:そうですね。三元系をリサイクルすると利益が出るのですが、中国市場に関してはLFPのほうが人気があるので、そこをリユースでどのようにして使っていけばいいのかという課題があります。ここは最適解がまだ出ていないと理解していますが、例えば、それほどコストをかけなくてもリユースできるような工夫を設計の段階で盛り込むような仕組みづくりが進んでいますね。

沖本氏が登壇するセミナーは3月24日開催。セミナーの詳細やお申込みはこちらから。

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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