ロールスロイスのV12クーペ『レイス』、生産終了へ…限定12台の最終モデルは完売

1930年代に当時の世界最高速度記録575.335km/hを樹立した「サンダーボルト」に着想

複雑な表面仕上げ「グラディエントペイント」

ヘッドライナーにこれまでで最多の2117個の光ファイバー

ブラック・バッジ・レイス・ブラック・アロー・コレクション」
ブラック・バッジ・レイス・ブラック・アロー・コレクション」全 10 枚

ロールスロイス・モーター・カーズは3月20日、V12エンジンを積む最後のクーペ「ブラック・バッジ・レイス・ブラック・アロー・コレクション」を欧州で発表した。オールエレクトリックの未来を見据えて、最後のV12クーペは12台が製作されるが、すでに完売している。

◆1930年代に当時の世界最高速度記録575.335km/hを樹立した「サンダーボルト」に着想

同車は、ロールスロイス史上最もパワフルな『レイス』の最終モデルでもある。2013年に発表されたレイスは、英国グッドウッドで設計・製造されたモデルの中でも、特に重要で影響力のあったモデル、と自負する。レイスは、先代の『ファントム』や『ゴースト』よりもパフォーマンス重視のモデルで、ロールスロイスに対する認識を根本的に変え、新たな若い顧客層を初めてブランドに取り込んだという。このレイスが生産を終える。

ブラック・バッジ・レイス・ブラック・アロー・コレクションは、1930年代に当時の世界最高速度記録を樹立した「サンダーボルト」にインスピレーションを得ている。1938年、ジョージ・エイストン大尉は、ロールスロイスV12「R」シリーズの航空エンジンを2基搭載した7トン、8輪の巨大なマシン「サンダーボルト」により、575.335km/hという最高速度の世界記録を樹立した。その後の記録は、すべて異なるタイプと構成のエンジンによって樹立され、サンダーボルトは史上最速のV12エンジン搭載車として、永遠に語り継がれることになった。

サンダーボルトの記録挑戦は、米国ユタ州のボンネビル・ソルト・フラッツで行われた。白い地面が眩しく輝き、砂漠の太陽が照りつける環境下では、車両のポリッシュ仕上げのアルミ製ボディが反射し、いつ計時装置を通過したのか、正確に判断するのはほとんど不可能だった。そこで、エイストンは車の側面に大きな黒い矢印(ブラックアロー)を描き、その中央に黄色の円を描くことで、高速走行中でも確認できるようにした。これが、ブラック・バッジ・レイス・ブラック・アロー・コレクションという名前の由来だ。

◆複雑な表面仕上げ「グラディエントペイント」

ロールスロイス「ブラック・バッジ・レイス・ブラック・アロー・コレクション」ロールスロイス「ブラック・バッジ・レイス・ブラック・アロー・コレクション」

ブラック・バッジ・レイス・ブラック・アロー・コレクションには、ロールスロイスならではの複雑な表面仕上げ、「グラディエントペイント」を導入する。セレブレーションシルバーとブラックダイヤモンドの2つのトーンをフルカラーでグラデーションした。この2つのカラーの移ろいを引き立たせるために、ブラックダイヤモンドの層の上に、ガラスを注入したクリスタル塗装を施しており、フロントからリアまで印象的なモーションブラー効果を生み出している。この技法により、外殻に覆われたようなボンネビル・ソルト・フラッツの地面に着想を得た、繊細な触感がコーチワークに備わり、さらにハイグロスラッカーが塗布された。ガラスのような仕上がりを実現するために、12時間以上かけて研磨されている。

このグラディエントペイントとコントラストをなすのは、バンパーインサートとビスポークホイールピンストライプのブライトイエローだ。これは、サンダーボルトの黒い矢印の中の黄色い円を連想させるという。また、ロールスロイス初の試みとして、ブラック・アローのラジエーターグリルの背後、エンジンの前にあるVストラットもブライトイエローで仕上げられた。これが、ブラックバッジのダーククロームグリルサラウンドの背後にあるV12エンジンに視線を誘導する。

ブライトイエローは、カーボン製のフードマスコット「スピリット・オブ・エクスタシー」のベースにも採用されており、ここには同色のリングディテールが組み込まれ、コレクション名が彫刻されている。

◆ヘッドライナーにこれまでで最多の2117個の光ファイバー

サンダーボルトにインスピレーションを得たデザインコンセプトとして、イルミネーション付きのサンダーボルトスピードフォームをフロントシート間に装備している。インテリアには新たに「クラブレザー」を導入した。シートのレザーには、ブライトイエローが採用された。シート上部では、ヘッドレスト外側に矢印のモチーフの刺繍が施されている。

天井のビスポーク・スターライト・ヘッドライナーには、これまでで最多の2117個の光ファイバーを散りばめた。星はすべて手作業で配置され、さえぎるもののない広大な土地から眺めた天の川と、エイストンの最後の不滅の記録が樹立された1938年9月16日にユタ州の上空に現れた星座が正確に描かれている。

インテリアのドアパネルには、それぞれ320ピースのパーツで構成される寄木細工を組み込む。オープンポア仕上げのブラックウッドは、ボンネビル・ソルト・フラッツのひび割れた不規則な地面を模して、レーザー加工による320ピース以上の多方向の寄木細工からなる複雑なデザインとした。この特別な装備は、左右のリアシートを仕切るリアの「ウォーターフォール」パネルにも及んでいる。

《森脇稔》

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