【トーヨータイヤ プロクセス・コンフォートIIs 試乗】キレキレのハンドリングはまさに水を得た魚のよう…木下隆之

レーシングドライバー 兼 モータージャーナリストの木下隆之氏
レーシングドライバー 兼 モータージャーナリストの木下隆之氏全 28 枚

トーヨータイヤのフラッグシップタイヤ「PROXES(プロクセス)」の新製品試乗会が2023年3月23日、栃木県のGKNショートテストコースにて開催された。

前回の「プロクセス・スポーツ2」に続き、今回インプレッションするのは2023年3月に発売されたばかりの「プロクセス・コンフォートIIs」。生憎のウェットコンディションの中、どのような走りを見せてくれたのかをレポートする。

トーヨータイヤのフラッグシップブランド「PROXES(プロクセス)」トーヨータイヤのフラッグシップブランド「PROXES(プロクセス)」

◆ニュル24時間耐久レースで鍛え上げられた「プロクセス」は思った以上に快適?

はじめに「プロクセス」はトーヨータイヤがリリースする最高級フラッグシップブランドである。ニュルブルクリンクでの活躍が証明するように、過激なサーキットで鍛え上げ、勝利するほどの高性能グリップを備える。戦うタイヤといったイメージが浸透している。

トーヨータイヤ『プロクセス・コンフォートIIs』トーヨータイヤ『プロクセス・コンフォートIIs』

ただしプロクセスは上質なフラッグシップといった顔を持つ。スポーツカーに装着して目の覚めるようなラップタイムを叩き出しつつも、一方で乗り心地に優れた上級モデルに履かせても期待に応えてくれる。

それが今回デビューした「プロクセス・コンフォートIIs」が証明した。従来モデルである「プロクセス・コンフォートIs」からの進化版となる。

とにかくウエット性能の進化幅は驚くばかりである。試乗日は運悪く朝からシトシトと雨が降り続いていたことで、ウエット路面での体験となったが、それだけにウエット性能の秀逸さは感動的だった。

トーヨータイヤ『プロクセス・コンフォートIIs』トーヨータイヤ『プロクセス・コンフォートIIs』

「プロクセス・コンフォートIIs」は主に、快適性に狙いが定められていることがわかる。 非対称ブロックピッチ配列は、トレッド面のデザインを均一にせずにピッチをランダムにさせることで、ノイズの周波数を分散させる効果がある。結果としての耳な届くノイズが減り、静粛性が高まる。

ウエット路面で静粛性を確認することは困難だったが、実は先日ドライ路面での試乗をしている。そこで静粛性の高さを確認してもいるのだ。

レーシングドライバー 兼 モータージャーナリストの木下隆之氏レーシングドライバー 兼 モータージャーナリストの木下隆之氏

そしてさらに、低燃費コンパウンドを採用しているという。これも限られた試乗時間で確認することはできなかったが、SDGsが叫ばれているご時世では重要な要素だろう。タイヤのキャラクターを鑑みても、静粛性や低燃費といった環境性能を追求したように推測される。

◆走って驚いた安定感、プロクセスらしい“走る楽しさ”も健在

トーヨータイヤ『プロクセス・コンフォートIIs』トーヨータイヤ『プロクセス・コンフォートIIs』

だが実際にステアリングを握り、高速周回し、ハイスピードからフルブレーキングにトライし、そしてタイトなコーナーが連続するハンドリング路を攻めてみると、類まれなる操縦安定性の高さを感じたのだ。

たしかに乗り心地はいいが、コンフォートという名から想像するような、ダルな乗り心地ではまったくない。「プロクセス・コンフォートIIs」のコンフォートの部分ではなく“プロクセス”の要素が強調されているように感じた。

トーヨータイヤ『プロクセス・コンフォートIIs』トーヨータイヤ『プロクセス・コンフォートIIs』

言い換えるとタイトコーナーを攻めれば、高いウエットグリップ力を発揮する。しかも絶対的なグリップ力ではなく、ハンドリングがキレキレなのだ。旧製品がゆったりと感じられるほど、「プロクセス・コンフォートIIs」に履き替えた瞬間、つまり最初のコーナーに挑もうとステアリングを切り込んだ瞬間にグイグイとノーズがエイペックスを刺そうとしたのだ。

◆抜群のウェット性能に快適性を両立、相反するキレキレのハンドリングに驚く

トーヨータイヤ『プロクセス・コンフォートIIs』トーヨータイヤ『プロクセス・コンフォートIIs』

カムリの駆動方式はFFであり、穏やかな走りが信条である。車両のキャラクターを鑑みると、軽快なハントリングをことさら求めてはいない。どちらかといえば、大人しいミドルセダンである。だがひとたび「プロクセス・コンフォートIIs」に履き替えると、そんなコンフォートセダンが軽快なハンドリングマシンに変貌するのだ。これはもう狐につままれたような感覚に陥った。

トーヨータイヤ『プロクセス・コンフォートIIs』トーヨータイヤ『プロクセス・コンフォートIIs』

さらには制動グリップにも驚かされた。説明にもウエット制動に関することはなかったが、高速からのフルブレーキングでは制動距離の短縮を確認しているし、体感的な制動Gもあきらかに高い。

プロクセスはコンフォートの名を得ても、ハンドリングは捨てられないのだ。それがフラッグシップブランドたる所以なのかもしれない。

レーシングドライバー 兼 モータージャーナリストの木下隆之氏レーシングドライバー 兼 モータージャーナリストの木下隆之氏

木下隆之|レーシングドライバー 兼 モータージャーナリスト
学生時代からモータースポーツをはじめ、出版社・編集部勤務を経て独立。クルマ好きの感動、思いを読者に伝えようとする。短編小説『ジェイズな奴ら』も上梓。日本・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。「心躍るモデルに高得点を与えるつもり」。海外レース経験も豊富で、ライフワークとしているニュルブルクリンク24時間レースにおいては、日本人最高位(総合5位)と最多出場記録を更新中。

《木下隆之》

木下隆之

学生時代からモータースポーツをはじめ、出版社・編集部勤務を経て独立。クルマ好きの感動、思いを読者に伝えようとする。短編小説『ジェイズな奴ら』も上梓。日本・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。「心躍るモデルに高得点を与えるつもり」。海外レース経験も豊富で、ライフワークとしているニュルブルクリンク24時間レースにおいては、日本人最高位(総合5位)と最多出場記録を更新中。

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