地域に受け入れられる自動運転バス-BOLDLY 市場創生部 星野達哉氏[インタビュー]

地域に受け入れられる自動運転バス-BOLDLY 市場創生部 星野達哉氏[インタビュー]
地域に受け入れられる自動運転バス-BOLDLY 市場創生部 星野達哉氏[インタビュー]全 5 枚

来たる4月21日、オンラインセミナー「自動運転L4実装に向けたビジネスと法的対応~BOLDLY・ティアフォー~」が開催される。

セミナーに登壇するBOLDLY (ボードリー)は、東京都の羽田イノベーションシティや茨城県境町など、自動運転バス(レベル2)の豊富な運行実績を持つモビリティサービス事業者だ。

同社市場創生部 渉外課 課長の星野達哉氏が「自動運転レベル4実用化に向けた現在の取り組みと展望」について講演する。この講演の見どころについて聞いた。

セミナーの詳細はこちらから

■自動運転レベル2のバスで実績を積んできた

---:自動運転レベル4の実現に向けた取り組みをご紹介ください。

星野:はい。ボードリーでは、東京の羽田イノベーションシティにおいて2020年の9月から国内で初めてレベル2の定常運行を開始していますが、こちらでレベル4での運行を目指したいと考えています。

今現在、自動運転(レベル2)での運行比率が90%以上に至っており、手動運転を行うのは、朝車庫からバスを出す時と昼休憩で車庫を出入りさせるときだけになっています。

地域に受け入れられる自動運転バス-BOLDLY 市場創生部 星野達哉氏[インタビュー]地域に受け入れられる自動運転バス-BOLDLY 市場創生部 星野達哉氏[インタビュー]

羽田の場合、私有地ではあるのですが、来場者や搬入車等があるため、みなし公道に該当します。ただ一般の公道とは違い、一方通行であることや車の通りも少ないので、自動運転の車両としては比較的走らせやすい環境であることもあり、まずはここでレベル4自動運行を実現させていきたいということです。

緊急車両の通行があった際にはそれを把握して自動運転で安全に停止する仕組みを新たに整えるなど、関係者と調整しながら、レベル4での運行に向けた準備を進めています。

■地域に受け入れられるためにしていること

---:羽田以外にも、自動運転レベル2で運行しているバスがありますね。

星野:はい。茨城県境町でレベル2で運行を行なっております。2020年の11月から、こちらは自治体で初めて定常運行を行なっております。これまでに1万5000人以上の方にご乗車いただいてる状況です。

境町はいわゆる街中、一般の道路を走っております。道の駅であったり、郵便局、スーパー、銀行等に行くために、住民の方に使っていただいたり、観光客の方に乗っていただいているという状況になっています。

---:交通の状況が羽田とはかなり違いますね。

星野:そうですね。では境町の場合はどういうふうに自動運転比率を高めているかというと、システムでは限界がある部分を、住民の方にいろいろな協力をいただくという、アナログな工夫によって自動運転比率を高めています。

たとえば、路上駐車があった場合には現在走っている車両は自動回避ができないので、住民の方にビラを配って、路上駐車をやめていただくよう町からもお願いしていただいて、路上駐車を減らす工夫をしています。

また境町の場合は最高速度を20km/hで走らせているのですが、後ろに一般車両が詰まるような状況も起きます。ですので、バス停を2分から3分おきに設置し、路肩のスペースを確保して、後ろの車に追い越していただくようにしています。

敷地を持っている方から、無償でバスの停車スペースを提供していただいたバス停もあり、後ろの車が抜きやすくなるようになっています。

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地元警察の方に聞くと、最初の半年ぐらいは「こんなに遅いものを走らせて大丈夫なのか?」という住民の方からの声もあったらしいです。ただその後、現在約2年半運行しておりますが、ここ2年ぐらいは一切そういった話はないということです。住民の方にもこの自動運転バスの必要性等を理解いただいて、町の中で受け入れられているという状況が作られています。

---:境町の御社のプロジェクトは、地域社会からも歓迎されている印象がありますが、なぜそういった受け入れられ方をしているのか、教えてください。

星野:サービスを始める前から、住民の方々に自動運転バス事業を始めることについてお話をしました。あとは乗車体験会も数多く行いました。高齢者の方に乗っていただいたり、幼稚園、小学校のお子さんに乗車体験会を実施するなど、まずは自動運転バスに慣れ親しんでいただく機会を作りました。

---:そういったノウハウも御社にはありそうですね。

星野:デジタルを扱っている会社でありながら、アナログの対応をしっかり行うということが大切なことだと思っております。弊社の代表も常に「アナログができない者にデジタルはできない」ということを社員に話しています。

自動運転を走らせる前に、まずはルート周辺の関係者の方にご挨拶をさせていただいたり、「自動運転バスはこういったことができます」という話とともに、逆にできないこともしっかり説明をして、この自動運転バスを少しずつ受け入れていただくということをコツコツとやってきました。

---:境町のナビヤ・アルマは青と黄色に塗装されていますが、これは境町用の車両の色なんでしょうか。

星野:この車両は元々真っ白なのですが、境町で運行している3台のうち2台は地元境町出身のアーティストの内海さんという方にデザインをお願いしております。残り1台については住民の方からデザインを公募をして、採用されたものを走らせております。

---:なるほど。そういった地域を巻き込んだ工夫が、今の受容性につながっているということでしょうか。

星野:レベル4を手続きする時に、技術的な安全面も大切なのですが、地域の社会受容性も重視されます。そもそも自動運転バスが町の方に受け入れられているのかということです。地域住民の方々に理解され、必要とされる事業体制が重要になると思っております。

■レベル4によって人材の間口がひろがる

---:レベル4での運行ですが、当初はオペレーターが同乗する形になるのでしょうか。

星野:添乗員が同乗する形を想定しています。まず緊急時に運転を引き継ぐということがあります。もう一つ大事な役割としては、運転以外にもまだまだ添乗員の役割があります。

レベル4を取得していきなり無人の自動運転車両を走らせても、お客様としては、どうやって乗っていいかわからない、ということもあるでしょうし、観光としての要素もありますので、添乗員が乗車案内をして、車両の仕組みを説明したり、自動運転バスに乗りにきていただいた方に案内をするというところも重要な役割になっております。

あとは羽田も境町も、車椅子の方にもご乗車いただいておりますので、そういったご乗車の案内をするというのも添乗員の重要な役割になっています。

---:なるほど。そうすると、利用者側からしてみると、自動運転レベル2とあまり違いを意識せずに使えそうですね。

星野:レベル4運行のメリットとしてよく語られるのが、車両が無人で走るため人件費が下がるということです。しかしこれは、弊社の感覚としてはまだまだ先の話なのではないかと思っております。

ではどのようなメリットがあるのか。公共交通を支える方の人材の間口が広がるというのが直近のメリットだと思っております。たとえば境町の場合には、地元の高齢者ボランティアの方々に乗車の案内係、観光案内係など添乗員としての役割を担っていただいたり、接客が得意な主婦の方に空き時間を使って協力していただいたりということが考えられると思います。

星野氏が登壇するオンラインセミナー「自動運転L4実装に向けたビジネスと法的対応~BOLDLY・ティアフォー~」は4月21日開催。詳細・お申込はこちらから

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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