ホンダのミニバン『オデッセイ』は、2022年9月に日本国内での販売を終了した。それが! ホンダはこの4月7日、オデッセイの復帰を予告したのだ。モデル存続を記念して、1994年の初代から復活までの歴史を振り返ろう。
◆初代
ホンダは、ワンボックスカーの広い空間とセダンの快適さや走行性能を合わせ持ち、6~7人乗りでありながら乗用車感覚で運転できる、新しいコンセプトの新型車オデッセイを発表、1994年10月21日に発売した。
オデッセイは、多人数で快適に移動できるための新しい空間づくりに、ホンダが培ってきた高性能セダンづくりの技術を活かし、ワンボックスカーのスペースユーティリティと、セダンの爽快な走りや快適な乗り心地・安全性能などの機能を両立させた。当時の一般的なミニバンより全高が低く、リアドアがスライドドアではなく、セダンのような前ヒンジのスイングドアだった。リアドアのスイングドアは歴代に受け継がれることになる。
エンジンは直4 2.2L SOHC 16バルブ+PMG-FI を搭載、トランスミッションはATで、駆動レイアウトはFFと4WDを選べる。国内販売計画台数は3000台/月。メーカー希望小売価格は、当時は地域別に設定されており東京地区で179万5000~269万5000円とされた。価格はその当時の税率での消費税込み、以下も同様。同時期の『アコード』が185万1940~257万3970円だった。
90年代前半の日本市場はミニバンブームで、もともとミニバンをラインナップしていなかったホンダは、その流行に乗り遅れていた。短期間で市場投入できるミニバンとして、生産ラインの大きな改修を必要としないよう当時のアコードをベースにし、ミニバンとしては全高の低いオデッセイが誕生した、という話がある。この苦し紛れの新型車が大ヒット、1995年9月に累計登録台数10万台を達成、96年6月に20万台(この間平均1万1000台/月)、97年9月に30万台を達成した。

1997年10月2日には、より余裕ある走りを実現する新開発V6 3.0L VTECエンジンの搭載や、高級セダンレベルの静粛性や快適性を実現した「オデッセイ・プレステージ」を追加して発売した。1999年3月には累計登録台数が40万台となり、初代は国内販売が42万台を超えるベストセラーとなった。
初代登場から1年半後の1996年05月10日には、1.5BOXライトミニバンの『ステップワゴン』初代が発売されている。さらに1999年6月3日には、北米仕様オデッセイを『ラグレイト』に改名して日本市場に導入している。日本仕様オデッセイより大型・上級のミニバンで、リアドアにスライドドアを装備していたが、日本では1世代限りの販売となった。
◆2代目
オデッセイ最初のフルモデルチェンジは初代登場から5年後、直4エンジン搭載車を1999年12月3日に、V6エンジン搭載車を2000年1月21日にそれぞれ発売した。
2代目は、上級セダンに匹敵する高性能な走りを具現化しつつ、さらなる快適性と使い勝手の向上を目標に開発された。特にインテリアではスペアタイヤの床下収納への変更や、3列目シートもシートピローを取り外すことなく一体での床下収納を可能にするなど、使い勝手の向上を図っている。
エンジンは2種類、トランスミッションも2種類で、直4 2.3L VTEC LEVエンジンとダイレクト制御4AT、V6 3.0L VTEC LEVエンジンとダイレクト制御5ATがそれぞれ組み合わせされる。駆動レイアウトは両方にFFと4WDが設定された。国内販売計画台数は6000台/月で、これは初代の当初計画の2倍だ。メーカー希望小売価格は東京地区で218万8750~344万5350円。
オデッセイは1994年10月の初代発売から2000年6月末までの69か月で、累計登録台数50万台を達成した。月平均では7200台/月となる。2000年3月には月販1万5392台を記録、累計50万台を達成時の最高記録となっている。オデッセイは、高い走行性能と快適な居住空間とを両立したミニバンとして高い評価を得た。
新しいタイプのピープルムーバーとして登場したオデッセイだったが、2000年7月頃から「ミニバン」、2001年11月頃から「上級ミニバン」の呼称を公式媒体で使い始めている。2001年11月22日に、走行性能を高めた新タイプ「アブソルート」(2.3LまたはV6 3.0L)を追加、発売した。


◆3代目
3代目オデッセイは2003年10月24日発売。「ミニバン・イノベーション」をコンセプトに「速い(低重心化による乗り心地とハンドリング)」、「美しい(低全高ならではの流麗なフォルム)」、「広い(低床化による前モデルを上回る室内高)」を高次元で融合する、次世代ミニバンの新たなベンチマークとして開発された。
直4 2.4L DOHC i-VTECエンジン、新開発CVT+7スピードモード(一部仕様に設定)による高い走行性能と、新開発の低床プラットフォームにより、立体駐車場にも入庫可能な1550mmという低全高スタイルとしながら、3列シート7名乗車のゆとりの室内空間をもち、多人数乗用車としての新価値を創出した。
オデッセイ標準タイプは2.4L DOHC i-VTEC(118kW/160PS)を搭載、CVT+7スピードモードを介してのFF、または5AT+Sマチックを介しての4WDとの組み合わせ。オデッセイアブソルート搭載の2.4L DOHC i-VTECエンジンは出力が異なる2仕様があり、147kW/200PSエンジンは5AT+Sマチックを介してのFF、140kW/190PSエンジンは5AT+Sマチックを介しての4WDという設定だ。国内販売計画は5000台/月、メーカー希望小売価格は全国統一価格となり、231万~296万1000円。発売後、約2週間の受注台数は約1万5000台、約1か月の受注台数は約2万5000台となった。
2004年6月10日にはラグレイトと入れ替わるような形で、ホンダミニバンのフラッグシップとして、新たに8人乗りの『エリシオン』を発売した。エリシオンは2013年10月まで販売された。

◆4代目
4代目オデッセイは、乗る人の心をときめかせる「感性クオリティ」をコンセプトに、「人とクルマの一体感」「全席の爽快感」「独自の存在感」を高次元で融合することを図った。見て、乗って、走って、あらゆるシーンで、人のこころに響く気持ちよさをめざして開発された。
4代目は、低床・低重心パッケージにより、低全高スタイルでミニバンを超越した走行性能を実現しながら、ゆとりの室内空間を持つとともに、マルチビューカメラシステムなどの先進・安全装備を搭載し、2008年10月17日に発売された。
エンジンは直4 2.4L DOHC i-VTECを搭載、FFはCVT、4WDは5ATとの組み合わせになる。ただしアブソルートのFFは5ATとの組み合わせだ。販売計画台数は4000台/月、全国メーカー希望小売価格は259万~361万円。発売後約1か月での累計受注台数は月間計画を上回る7500台と、順調な立ち上がりとなった。

◆5代目
5代目オデッセイは、座席3列すべてが広く快適で、上質な室内空間と走行性能を今までにない高い次元で両立した上級ミニバンをめざして開発され、2013年11月1日に発売された。
5代目は、多人数乗用車の新しい価値を創造してきた歴代の設計思想を継承しながら、プラットフォームとパワートレインを刷新し、居住性、走り、燃費性能、デザイン、使い勝手、安全性能のすべてを進化させたという。
リアにスライドドアを採用したことが5代目の大きな特徴。天井高を上げるだけでなく、床面高を下げる「超低床プラットフォーム」を構築し、従来モデルをしのぐ広い室内空間を得た。歴代で定評のあった爽快で安定した走行性能を確保したとするが、一般的なミニバンのフォーマットに近づいた。オデッセイがフルモデルチェンジする頃にエリシオンの販売が終了しているので、関係があるのかもしれない。
5代目オデッセイ標準型のエンジンは直4 2.4L DOHC i-VTECを搭載、トランスミッションはCVTで、駆動レイアウトはFFと4WDを選べる。オデッセイ・アブソルートは直4 2.4L 直噴 DOHC i-VTECエンジンを搭載し、トランスミッションはCVT[7スピードモード付]+パドルシフトで、駆動レイアウトは同じくFFと4WDを選べる。販売計画台数は4000台/月、全国メーカー希望小売価格は249万~373万円。

2016年2月5日には、優れた燃費性能と上質な走りを両立させ、求めやすい価格設定を意識したハイブリッドモデルを追加して、発売した。しかしこの頃からオデッセイの市場での存在感は小さくなっていく。
2017年11月17日発売の一部改良では販売計画台数が1500台/月に設定され、その次の2020年11月6日の、現時点で最後となっている商品改良では販売計画台数は明らかにされていない。コロナ禍の2020年度の販売台数実績が1万1941台で、2019年度比93%と健闘したといえるものの、月平均では1000台に届かず、最盛期の10分の1だ。そして狭山工場の完成車ライン閉鎖に伴い生産終了となることが、2021年6月に明らかになった。2022年9月、販売を終了している。
販売実績は落ち込んでいたとはいえビッグネームの引退は惜しまれた。ところが若干の“休止期間”ののち、ホンダは2023年4月7日、日本市場での販売再開を発表した。従来型からの改良新型となる。秋に予約受注を開始し、冬に発売の予定だ。