東京のスマートシティ、大都市で続くチャレンジ【MaaSがもたらす都市変革】

2017年の丸の内仲通り自動運転バス
2017年の丸の内仲通り自動運転バス全 6 枚

日本の首都であり、全人口の1割以上になる約1400万人が暮らす東京都。日本を代表する都市として、多くの人が真っ先に名前を挙げることだろう。当然ながらデジタル分野においても、東京はこの国で進んだ都市のひとつと言える。多くの情報通信企業が本拠地を置き、住民のデジタルサービスへの理解度も高い。しかしスマートシティとなると、東京が圧倒的に他の都市を引き離しているというわけではないのも事実だ。

東京におけるスマートシティ関連事業

内閣府・総務省・経済産業省・国土交通省が連携した令和4年度スマートシティ関連事業によると、この連載でも紹介した福島県会津若松市や茨城県つくば市、群馬県前橋市などが名を連ねている51事業のうち、東京都の項目はわずか3事業だった。閣府と内閣官房が推進するデジタル田園都市国家構想では、令和5年度第一回採択結果で1377団体が採択されているうち、東京都は1団体にすぎない。

理由のひとつは、これらの政策が地方創生と言う意味を含めているからだ。とりわけデジタル田園都市国家構想は、地方創生のウェブサイトの中で紹介されているうえに、デジタル実装タイプ・地方創生拠点整備タイプ・地方創生推進タイプの3タイプが用意されたうち、令和5年度当初予算で公布されるのは地方創生に関係する2つのタイプのみであることが影響しているだろう。

唯一東京都から採択されたのは大田区で、地方創生推進タイプの先駆型・横展開型に属しており、「~利益率の高い仕事を取り込む新たな仕組みの構築~デジタル受発注プラットフォームの構築・拡大による、中小製造業のデジタル化促進・稼ぐ力の強化」という内容である。

ちなみに令和4年度補正予算では、デジタル実装タイプが地方創生拠点整備タイプとともに採択されていた。こちらでは994団体のうち、東京都がデジタル実装タイプで26団体あったものの、モビリティ分野は駐車場利用状況管理や駐輪施設入出庫対応のシステム関連があったのみで、他の地域では見られるMaaS分野ではなかった。多くのIT企業が集結する東京は、民間企業が先進的な挑戦をしてくれるので、自治体が主導する必要性が薄いということかもしれない。

これに対してスマートシティ構想では、東京都の令和4年度関連事業は千代田区、港区、大田区が選定されており、大手町・丸の内・有楽町(通称「大丸有」)地区、竹芝地区、羽田空港跡地第1ゾーンが舞台となっていた。

事業概要は、千代田区は自動配送ロボットの走行や新たな乗降自由形モビリティの歩行者混在環境での走行実証および都市OSを通じたデータ連携等の継続的な検証、港区は防災サービスの高度化を目指し自治体とエリマネが連携したリアルタイム・エリア単位の防災・気象情報の統合および来街者への双方向の防災情報の発信・収集、大田区は異業種ロボットの導入に向けた技術面・運用面の課題解決を図ることを目的としたロボットのステータス管理、業務管理、インシデント対応システムの検討及び対応体制の構築等としている。

自動運転やアプリ連携、自動配送などの実証実験

モビリティに関連した事業は千代田区の大丸有地区のみであるが、ここで挙げた3地区はいずれも再開発が行われた場所で、新たなモビリティの実証実験などに適しており、筆者も実際に3つの地域で実証実験の現場に立ち会った経験がある。大丸有地区で実証実験の舞台となることが多いのは、3つの地区を縦断する丸の内仲通りだ。ビジネス街を貫く道でありながら、路面は石畳で、歩道が広く確保され、沿道にはオフィスだけでなくレストランやブティックなども並んでいて、皇居や銀座に近いこともあり、観光スポットにもなっている。


《森口将之》

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