プロセッサーの「タイムアライメント」がカーオーディオを変えた!?…キーワードから読み解くカーオーディオ

「タイムアライメント」の設定画面の一例(フォーカル・FSP-8)。
「タイムアライメント」の設定画面の一例(フォーカル・FSP-8)。全 3 枚

カーオーディオ機器の情報を得ようとして調べてみると、専門用語をたびたび目にする。当連載では、それらの意味を解説しながら、カーオーディオならではの面白さや奥深さを紐解こうと試みている。現在は、「プロセッサー」に関連した用語に焦点を当てている。

◆「タイムアライメント」とは、各スピーカーの音の“到達タイミング”を揃える機能!

「プロセッサー」とは、サウンドチューニング機能が搭載されたメカだ。で、今回はそれに搭載されているチューニング機能のうちの1つ、「タイムアライメント」について解説していく。

なお、“アライメント”という英単語には以下のような意味がある。「整列、一列に並ぶ/並べること、調節、調整、協力、団結」等だ。で、「タイムアライメント」とはまさしく、「時間を調整する機能」だ。

では何の時間を調整するのかというと、「各スピーカーが発する音の到達時間」だ。車内ではドライバーは、左右のどちらかに片寄った場所に身を置いている。しかもほとんどの場合、ツイーターとミッドウーファーは別々の場所に装着されている。なので、各スピーカーから発せられた音の到達タイミングが揃わない。しかし「タイムアライメント」を使えば、それを揃えられるのだ。

さて、このような機能が必要となる理由をさらに詳しく説明していこう。なおそれを理解するにはまず、「ステレオ」とは何かを知る必要がある。

「ステレオ」とは、音楽を左右のchに分けて録音し、それを左右に置いた1本ずつのスピーカーで鳴らすことで音楽を立体的に再現しようとするものだ。人間には耳が2つあり、ゆえに音がする方向が分かり、またコンサート会場ではステージ上の各楽器の位置を感じ取れる。「ステレオ」はいわば、その仕組みを逆手に取っているというわけだ。

「タイムアライメント」の設定画面の一例(三菱電機・ダイヤトーンサウンドナビ)。「タイムアライメント」の設定画面の一例(三菱電機・ダイヤトーンサウンドナビ)。

◆「ステレオ」の仕組みを成立させるには、1つの重要なポイントがある!?

ただし「ステレオ」の仕組みを成立させるには、1点守るべき重要なポイントがある。それは、「左右のスピーカー」から等距離の場所に身を置くこと」だ。そうしないと左右の音をバランス良く聴けず、ステレオの効果が発揮されにくくなる。しかし車内では、左右のスピーカーから等距離の場所に身を置けず、しかもツイーターとミッドウーファーもバラバラの場所に付いている。

でも、「タイムアライメント」を使えば、以下のような操作を行える。当機能はつまり、スピーカーの発音タイミングを遅らせられる機能だ。なので近くにあるスピーカーほど発音タイミングを遅らせる、という調整を行える。結果、各スピーカーの音がリスナーの耳に同時に届く。かくしてリスナーは、すべてのスピーカーから等距離の場所にいるかのような状況下で音楽を楽しめる。

ちなみに当機能をカーオーディオの世界に広めたのは、「カロッツェリア」だ。同社から1993年に発売された『カロッツェリアX』に搭載されたことをきっかけに当機能は普及した。そしてこの登場から10年も経たないうちに、カーオーディオにおいてなくてはならない機能として定着するに至った。

「タイムアライメント」の設定画面の一例(クラリオン・フルデジタルサウンド)。「タイムアライメント」の設定画面の一例(クラリオン・フルデジタルサウンド)。

◆簡易的なタイプでも、使う価値は大! 積極的な使用が吉と出る!

ところで「タイムアライメント」には、詳細に設定できるタイプと簡易的なタイプとがある。違いは以下のとおりだ。詳細に設定できるタイプでは、スピーカーがセパレート2ウェイである場合には、ツイーターとミッドウーファーを個別に制御できる。対して簡易的なタイプでは、ツイーターとミッドウーファーの個別制御を行えない。ツイーターとミッドウーファーが別々の場所に装着されていたとしても、それらを“1つのスピーカー”として扱わざるを得ないのだ。

なおそうであるのは実は、「タイムアライメント」の性能が簡素だからではない。音楽信号をツイーター用の高音とミッドウーファー用の中低音とに分割する機能が備わっていないからだ。信号を分割できなければ、個別運用のしようがない。

とはいえ簡易的なタイプであっても、当機能が備わっていない場合と比べてかなり有利だ。なので、もしも愛用のメインユニットに簡易的なタイプであろうとも「タイムアライメント」が備わっていたら、積極的に活用しよう。確実に状況を改善できる。

ちなみに「タイムアライメント」のことを「タイムディレイ」と呼ぶメーカーもある。またアルパインでは伝統的に当機能を「タイムコレクション」と呼んでいる。これらは呼び方が異なっているだけで、機能としては同一だ。

今回は以上だ。次回以降も「プロセッサー」に関連したワードの解説を続行する。お楽しみに。

《太田祥三》

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