【ホンダ ZR-V 発売】シビック+ヴェゼル? 真価はe:HEV 4WDで発揮される

ホンダ ZR-V
ホンダ ZR-V全 15 枚

コロナや半導体のサプライチェーン問題から発売が延期されていたホンダの新型SUV、『ZR-V』の販売が正式に始まった。ここでは、そのパワートレインに着目した新型の魅力やポイントを考えてみる。

ZR-Vには、1.5リットルエンジンを搭載したガソリン車モデルと、2.0リットルエンジンを搭載したe:HEVモデルがある。ともにFFが基本だが、ハイブリッドであるe:HEVには4WDモデルも設定された。記事タイトルで「シビック+ヴェゼル」としたのは、前記2つのエンジンはともに『シビック』にも採用されたものと同じで、SUVモデルに欠かせない4WDモデルのパワートレインは『ヴェゼル』で採用された機械式(電子制御)だからだ。

◆シビックのパワートレインを流用したSUV

エンジン出力は131kW(178PS)とシビックよりも若干パワーを落とされているが、トルクは240Nmと変わらない。SUVボディのZR-Vは、シビック(e:HEV)より約200kg重くなっているが、トルクが変わらないので街中でパワー不足を感じることはないだろう。

ガソリン車が1.5リットルターボエンジンで、e:HEVが2.0リットルという点も同じだ。この点で、ZR-Vはシビックのパワートレインを流用したSUVモデルという考え方が可能だ。e:HEVのスペックは、発電および高速走行時に直結されるエンジンの出力が104kWh(141PS)/6000rpm、182Nm/4500rpmと高回転の特性を振っている。走行用モーターは135kWh(184PS)/5000~6000rpm、315Nm/0~2000rpmとかなりトルクフルだ。なお、モーター走行するe:HEVのほうが排気量が大きいエンジンを積んでいるのは、発電効率と振動・静粛性のため。マツダが『MX-30 RE』に搭載したロータリーエンジンのように、発電専用に設計すれば小型ながら効率と静粛性に優れたエンジンも実現可能だが、一般的には小さいエンジンはうるさく、振動面でも不利になる。

◆4WDはプロペラシャフトで後輪を駆動

ヴェゼルと共通する要素は、SUVであり4WDの設定があること。ZR-Vの4WD方式はヴェゼルと同じプロペラシャフトで後輪を駆動する方式が採用された。ハイブリッドやEVを4WD化する場合、多くはフロントアクスルとは別にリアにもモーターを搭載する。フロントだけにすると、FFや電動化でせっかくなくせたプロペラシャフトを復活させる必要が生じ、モーターならではのミリ秒単位の駆動配分制御が難しくなるからだ。

いっぽう、後輪にも駆動用モーターを搭載するということは、それだけ重量増を招く。SUVとして荷室や後席を犠牲にすることにもなる。100kW前後の大出力のモーターでリアアクスルを構成するのは、車両総重量と荷室スペースでのマイナス要素だ。リアの駆動はスタック時や雪道など限られた条件での補助的な役割と割り切るなら、リアを小型モーターとする選択もある。だが、ホンダはそれよりダイレクトな駆動を伝えられる機械式のリア駆動を選んだ。

リアルタイムAWD構造イメージリアルタイムAWD構造イメージ

◆機械式リア駆動によるメリット

全速度域にわたる4WDの安定性が期待できる他、ウェットやスノーのような低ミュー路面、悪路などで真価が発揮されるはずだ。低ミューで発生するFF特有のアンダーステアは、リアタイヤの駆動によって打ち消すことが可能だ。発進から登坂、コーナリング、これらの組み合わせのシチュエーションにおいて、出力に幅のあるモーターのほうが有利だ。もちろん前後2モーターのほうが、前後輪で個別最適となる繊細な制御が可能になる。しかし、プロペラシャフトによるダイレクトかつリニアなリアの駆動は、機械式で作り込んだ既存4WDの制御が利用しやすい。また、ドライバーのフィーリングも従来車に近いものになる。

2モーターAWD、アクティブサスのテスラに発生するような、コーナリング中に感じる違和感はないだろう。違和感というのは、「2トンの車がコーナリングでこんな挙動をするはずがない」という感覚だ(慣れるとテスラの挙動が普通になってくるのだが)。

悪路では、たとえば2輪が空転するようなシチュエーションでもZR-Vの4WD方式はトルクが抜けることがない。センターデフ、リアデフは電子制御によって前後のトルク配分を制御できるが、前後の片輪がスリップすると、左右のトルク配分の制御が必要になる。通常、この場合はデフロックやLSDという機構を用いるが、ZR-Vは4輪個別のブレーキ制御によって、対角の車輪が浮いている(またはローラーに乗っている)状態でも動くことができる。

余談だが、ZR-V e:HEVモデルには、ステアリングコラムのパドルによって回生ブレーキの効きを制御できる機構が備わっている。シフトアップ感覚にはならないが、シフトダウンによる減速というエンジンブレーキのような感覚が得られる。EVである『ホンダe』も、回生ブレーキの効きをパドルで切り替えることがきる。ここだけ、ワインディングで楽しいホンダe譲りの機能だ。

《中尾真二》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 伝説のACコブラが復活、「GTロードスター」量産開始
  2. トヨタ『ランドクルーザー300』初のハイブリッド登場!実現した「新時代のオフロード性能」とは
  3. ようやくですか! 新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』日本仕様初公開へ…土曜ニュースランキング
  4. 「三菱っぽくないけどカッコいい」ルノーの兄弟車となる『エクリプス クロス』次期型デザインに反響
  5. 【BYD シーライオン7 新型試乗】全幅1925mmの堂々サイズも「心配無用」、快適性はまさに至れり尽くせり…島崎七生人
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  2. 独自工会、EV減速でPHEVに着目、CNモビリティ実現へ10項目計画発表
  3. 三菱が次世代SUVを初公開、『DSTコンセプト』市販版は年内デビューへ
  4. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  5. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
ランキングをもっと見る