【日産 フェアレディZ 新型試乗】まるで日本製のアメ車? そこはかとなくアメリカを感じる…中村孝仁

日産 フェアレディZ(AT車)
日産 フェアレディZ(AT車)全 44 枚

個人的な話で恐縮だが、日産『フェアレディZ』のデザインに関しては、初代のS30にとどめを刺すと思っている。

【画像】日産 フェアレディZのMT車とAT車

それ以降のモデルも、それなりに魅力はあった。そして一旦は開発が止まった後、カルロス・ゴーンの肝入りで復活したZは、売れるという大前提の元、そのデザインもサンディエゴのニッサン・デザイン・カリフォルニアに投げられ、形の上ではロングノーズ、ショートデッキスタイルとされてはいるものの、どう見てもロングノーズの面影はなく、一方で固まり感のある力強いデザインに変貌していた。その伝統はZ34にも受け継がれ、同じカリフォルニアのランディ・ロドリゲスがエクステリアを担当している。

しかし、日産自身もZのスタイリングに関しては、初代S30にとどめを刺すと思っていたのか、2022年に誕生した現行RZ34では、そのデザインの中心を日本に戻し、グローバルデザイン担当上級副社長のアルフォンソ・アルバイサの元、S30Zに回帰するデザインテイストが導入された。

日産 フェアレディZ日産 フェアレディZ

フロントに開いたグリルはS30を想起させるし、インテリアのダッシュ上に並ぶ3連メーターなどは、何よりもそれを雄弁に物語る。そして個人的にもっともこのデザインを評価したいのは、Z33からZ34に至る固まり感はともかくとして、猫背感がこのRZ34ではすっかりなくなり、鋭いシャープなルーフラインが構成された点である。

また、Z34の時代はヘッドライトなどの灯火類をデザインするのが流行り、ヘッドライトカバーがあれやこれや、複雑な形状にしたものが流行った。勿論Zも例外ではなく、複雑怪奇な形状のヘッドライトカバーとされていたが、このトレンドはあっという間に過ぎ去り、RZ34では前後共にシンプルなライトデザインに戻されたのも好感が持てる。同じようなことをやった好例がポルシェだ。

◆基本設計はZ33にまで遡るが

日産 フェアレディZ(MT車)日産 フェアレディZ(MT車)

コードネームがZ35とされなかったことからも、フルチェンジではないことがわかると思う。このクルマには2年前にも試乗したが、その時感じたことは、乗り味に関して「シャシーは基本先代からのキャリーオーバーだが、足周りにはかなり手が加えられている…と言ったところである。

確かに先代に乗った時はもっと荒々しくてゴツゴツした印象であったのだが、今回はそれがだいぶマイルドになった印象も受けた。」としていた。ところが、今回はさらにそれがマイルドになった印象が強い。一方で極めて強固なボディは、うねりのあるような路面でワンダリングを発生させ、ステアリングは取られやすい。

基本設計は恐らくZ33にまで遡るはずだから、当たり前といえば当たり前かもしれないが、例えばアイドリングストップ、あるいはブレーキのオートホールドモードといった装備はなく、スポーツカーらしいと言えばそれは正しいだろうが、プリミティブな印象も否定できない。

◆マニュアル車とAT車の違いは

日産 フェアレディZ(MT車)日産 フェアレディZ(MT車)

今回はマニュアル車とAT車の双方を連続して借りてみた。

2年前はマニュアル車しか乗っていないが、少なくともマニュアルに関して言えば、冷間時で特にギクシャク感が強く発生していて、この傾向は十分に熱が入ってもあまり変わらなかった。また各ギアの入り口が微妙にずれていて、スムーズなシフトチェンジを妨げる点も、個人的にはネガな部分と受け止めてしまう。何よりもシフトレバー背後にカップホルダーが装備されていて、レバーを手前に操作するときなどは、もしそこにペットボトルなどが入っていると、確実に妨げになる。

一方でATの場合もレイアウトは同様だが、シフト操作が無いので問題が無く、アメリカなどはもしかするとマニュアルよりもATが好まれるということなのかもしれない。

走行モードはマニュアル、AT車ともに装備され、マニュアルの場合はSモード、ATの場合はDモードと書かれたスイッチがセンターコンソール先端部に付く。どちらもノーマルかスポーツを選べるようになっているのだが、日本の一般道でそれが活躍するような場面にはまず遭遇しない。

◆まるで日本製アメリカ車である

日産 フェアレディZ日産 フェアレディZ

パフォーマンスは最高出力が405psと、400psを超える。280psに自主規制していた時代からは隔世の感があるが、性能的にも当然隔世の感があって、少しだけ右足に力を込めるだけで、まさに異次元の世界に連れて行ってくれるほどのパワーを発揮する。この感覚と、マイルドになったとはいえ、依然として荒々しさの消えない乗り味は、まさにアメリカンテイスト。加速した時に感じたのは『コルベットC4』のZR1に試乗した時と同じような感触を持ったことである。

やはり、Zはどこまでも果てしなく続くような直線路を持つ、広いアメリカをクルージングするためのモデルで、細く狭いワインディングを、マニュアルミッションを駆使してドライビングを愉しむといった印象のモデルではない。そこにはそこはかとないアメリカを感じる。まるで日本製アメリカ車である。

日産 フェアレディZ(MT車)日産 フェアレディZ(MT車)

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)
AJAJ会員・自動車技術会会員・東京都医師会「高齢社会における運転技能および運転環境検討委員会」委員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来48年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

レスポンス公式TikTok

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 日産『GT-R』次期型はいつ登場? ハイブリッドスポーツとして最速2027年発表か
  2. 「日本バイクオブザイヤー2025」大賞はヤマハ『XSR125』、人気投票で決定
  3. フィアット、『500ハイブリッド』欧州発表…6速MTのマイルドハイブリッドに
  4. 【日産 フェアレディZ 新型試乗】まるで日本製のアメ車? そこはかとなくアメリカを感じる…中村孝仁
  5. ホンダの小型セダン『アメイズ』新型、成人乗員保護で最高評価の5つ星…印バーラトNCAP
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 「AIディファインド」の衝撃、日本の自動車産業は新たな波に飲み込まれるのか…アクセンチュア シニア・マネジャー 藤本雄一郎氏[インタビュー]
  2. EV充電インフラ-停滞する世界と“異常値”を示す日本…富士経済 山田賢司氏[インタビュー]
  3. ステランティスの水素事業撤退、シンビオに深刻な影響…フォルヴィアとミシュランが懸念表明
  4. SUBARUの次世代アイサイト、画像認識技術と最新AI技術融合へ…開発にHPEサーバー導入
  5. 「ハンズオフ」は本当に必要なのか? 高速での手離し運転を実現したホンダ『アコード』を試乗して感じた「意識の変化」
ランキングをもっと見る