北海道函館市の大泉潤市長は4月27日に開かれた定例会見で、北海道新幹線の函館延伸について記者の質問に答えた。
大泉潤氏は俳優・大泉洋氏の実兄で、4月23日に投開票された市長選挙で、3期務めた現職の工藤寿樹氏を破り当選。選挙公約として北海道新幹線函館延伸の調査を掲げていた。
新市長に就任した大泉潤氏。市長就任後初めての会見では調査の開始時期を問われたが、大泉市長は「6月の政策予算に調査費を盛り込みたいとイメージしている」と述べるに留め、現時点で担当部局である企画部へ話をしていないとして、具体的な言及を避けている。
2016年3月に新青森~新函館北斗間が開業した北海道新幹線は、札幌までを最短距離で結ぶためとして、北斗市内にある旧渡島大野駅に新幹線駅を設置し、新函館北斗駅が開業。現在は北海道新幹線の終点となっている。
北海道新幹線の現在の終点・新函館北斗駅。七飯町内や函館市内へのアクセスには、交流電化された函館~新函館北斗間を733系通勤型電車1000番台によるアクセス列車「はこだてライナー」が運行されているが、新幹線のルートとは逆方向となるため乗換えを余儀なくされている。
この乗換えについては、かねてから函館~新函館北斗間を標準軌化して北海道新幹線を直通運行させる要望が函館市民から寄せられていたが、函館市からは財政的な負担を理由に難色が示されており、工藤市政時に具体的な進展は見られなかった。
その間、北海道新幹線の並行在来線である函館本線・函館~長万部間の存廃問題がクローズアップされ、函館市は函館~新函館北斗間の存続を訴えているが、大泉市長の新幹線乗入れに対する積極姿勢はその表れとも言えるだろう。
大泉新市長が打ち出した公約はこれまでの市の態度を一変させるものだが、ミニ新幹線規格とすればそれほど荒唐無稽なことではないとも言われている。
実際、函館本線は函館~七飯間が複線となっており、七飯~大沼間は新函館北斗駅がある仁山回りと藤代線回りに分かれているので、複線区間を秋田新幹線が通る奥羽本線大曲~秋田間のように狭軌と標準軌の単線並列、または3線軌条に変えれば新幹線の函館延伸は容易との見方がある。
ミニ新幹線化であれば整備費は80億円前後で収まるとも言われており、今後は第3セクター化を視野に入れた費用便益比などの慎重な検証が必要になるだろう。
仮にミニ新幹線化へ動き出したとして、山形新幹線のE8系や秋田新幹線のE6系のような在来線規格の新幹線車両が必要で、JR東日本またはJR北海道への理解が欠かせなくなる。
H5系(奥)とE6系(手前)の併結編成。函館延伸で東北新幹線直通を視野に入れればこのスタイルとなるが、盛岡~新函館北斗間ではホーム有効長の問題が発生する。また、新函館北斗駅での函館方面と札幌方面への分割を考慮すると、編成長に応じて盛岡~新函館北斗間でホームを延伸する必要が生じるが、この点はJR東日本への影響を避けられないだけに、東北新幹線への直通よりも、函館~新青森間や函館~札幌間の区間運行を視野に入れるのが現実的であるとも言われている。