プロセッサーの「クロスオーバー機能」は、なぜ必要?…キーワードから読み解くカーオーディオ

「クロスオーバー」の設定画面の一例(クラリオン・フルデジタルサウンド)。
「クロスオーバー」の設定画面の一例(クラリオン・フルデジタルサウンド)。全 3 枚

カーオーディオに興味を持っていろいろと調べてみると、専門用語を多々目にする。そしてそれらの存在が初心者を困惑させることとなる…。当連載はその払拭を目指して展開している。今回は、「プロセッサー」に搭載されている機能の1つ、「クロスオーバー」について解説する。

◆「クロスオーバー」とは、音楽信号の“帯域分割”を行う機能!

「プロセッサー」とは、サウンドチューニングを行うための機能が搭載されたメカだ。そしてこれに搭載されている機能とは、主には3つある。「イコライザー」「タイムアライメント」「クロスオーバー」、これらだ。で、これまでは「イコライザー」と「タイムアライメント」について説明してきた。それに引き続いて今回は、「クロスオーバー」とは何なのかを解説していく。

結論から入ろう。これは「音楽信号の帯域分割を行う機能」だ。ちなみに、高音から低音までを1つのスピーカーユニットにて再生する場合には、当機能は不要だ。しかしフロントスピーカーとサブウーファーとで音楽を再生する場合や、フロントスピーカーがツイーターとミッドウーファーとで構成されるケースにおいては、何らかの「クロスオーバー」が使用されることとなる。

ところで市販のセパレート2ウェイスピーカーの多くには、「パッシブクロスオーバーネットワーク」なるパーツが付属している。これもまさしく音楽信号の帯域分割を行う装置だ。

ならば「プロセッサー」に「クロスオーバー機能」を搭載する必要はないのでは、と思う向きもあるかもしれないが…。

「クロスオーバー」の設定画面の一例(三菱電機・ダイヤトーンサウンドナビ)。「クロスオーバー」の設定画面の一例(三菱電機・ダイヤトーンサウンドナビ)。

◆「プロセッサー」の「クロスオーバー」は「アクティプクロスオーバー」とも呼ばれている!?

なお“パッシブ”という言葉には「受動的な」とか「受け身の」という意味があるが、「パッシブクロスオーバーネットワーク」の“パッシブ”は、「パワーアンプ」の“後段”で信号の帯域分割を行う装置、という意味を持つ。対して「プロセッサー」に搭載されている「クロスオーバー」は「パワーアンプ」の“前段”に置かれるものなので、“パッシブ”の対義語である“アクティブ”を付けて「アクティブクロスオーバー」と呼ばれることもある。

で、「パッシブクロスオーバーネットワーク」がスピーカーに付属されているにもかかわらず、「プロセッサー」の「クロスオーバー」が使われるのはなぜなのかと言うと…。

その理由は主には3つある。まず1つ目は、「帯域分割を厳密に設定したいから」だ。

その心は以下のとおりだ。カー用のスピーカーは車種によって、さらには取り付け方によって置かれる状況が変化する。結果、スピーカーメーカーが設計した「パッシブクロスオーバーネットワーク」にて行われる帯域分割のさせ方が、ベストな設定ではなくなる場合が案外多い。なので「クロスオーバー」は、都度ベストな値を模索したい。しかし「パッシブクロスオーバーネットワーク」の設定値は、基本的に後からは変更できない。対して「プロセッサー」の「クロスオーバー」なら、ベストを探せる。

「クロスオーバー」の設定画面の一例(フォーカル・FSP-8)。「クロスオーバー」の設定画面の一例(フォーカル・FSP-8)。

◆「プロセッサー」の「クロスオーバー」を使えば、「マルチアンプ接続」を実行可能に♪

「プロセッサー」の「クロスオーバー」が使われる2つ目の理由は、「マルチアンプ接続を行いたいから」だ。「マルチアンプ接続」とは、1つのスピーカーユニットに対して「パワーアンプ」の1chずつをあてがう接続方法のことを指す。で、これを行うには「パワーアンプ」の前段にて信号の帯域分割を行っておく必要がある。その上で、各スピーカー用の信号が個別に「パワーアンプ」にて増幅されることとなる。

そして「プロセッサー」の「クロスオーバー」が使われる3つ目の理由は、「タイムアライメントを詳細に運用したいから」だ。「タイムアライメント」を活用すると、近くにあるスピーカーほど発音タイミングを遅延させられるので、すべてのスピーカーから放たれる音の到達時間を揃えられる。で、それをするには、あらかじめ信号を帯域分割しておかなければならない。そうしないとツイーター用の信号とミッドウーファー用の信号に、個別に「タイムアライメント」を効かせられない。

なお、「パワーアンプ」の前段にて信号の帯域分割を行うことにはデメリットもある。それは、システムが大型化してしまうことだ。「パッシブクロスオーバーネットワーク」にて2ウェイスピーカーを鳴らす場合には、「パワーアンプ」のch数は「2」があればOKだが、前段にて帯域分割を行うのであれば必要なch数は「4」へと増える。なので実行のハードルは上がってしまう。しかし得られるメリットは大きい。音的には大いにアドバンテージを発揮する。

今回は以上だ。次回は「クロスオーバー」機能を使うときに出くわすこととなる専門用語を取り上げる。お楽しみに。

《太田祥三》

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